仕合わせ











小さな小船に身を納め、晴天の空と輝く海面だけが広がる視界
潮風を全身に浴びながら目を閉じれば清々しい気分になる

海に行かねぇか?と笑う長曽我部の誘いに乗ったのは正解だったと思った

戦以外で初めて見る海はあまりにも雄大で、
自分がいかに矮小な存在であったかを思い知らされるようだった

心も体も洗い流され、新しい何かに生まれ変わったような、
そんなさっぱりとした気分だった

わざわざ機巧作りや政務の合間を縫ってまで、
ここに連れ出してくれた長曽我部に心から感謝を覚えた

長曽我部が笑っているとそれだけで安心する
ただただ心が満たされていくような気がする

温かくて、心地良くて、眠くなるような、
これが幸せということだろうかと考えた

「おい、大丈夫か?」

「ああ、問題無い」

「ずっと黙ってっから、気分でも悪ぃのかと思ってよ」

違うならいいんだ、と笑う長曽我部はこの風景によく似合っていた

日の光と海面からの照り返しでキラキラと輝き、
その中で穏やかに微笑む長曽我部はとても美しかった

「…長曽我部、連れ出してくれたこと感謝する」

「おう、気に入ったか?」

「ああ、ここはとても雄大で、美しい」

そう言えば嬉しそうにくしゃくしゃと顔を歪め、
強引に引き寄せられ腕の中に閉じ込められた

「っ!」

いきなりの行動に小船が揺れ、長曽我部にしがみ付く
文句の一つでも言ってやろうかと顔を上げれば額に落とされた口付け

「三成にそう言ってもらえて嬉しいぜ」

本当に嬉しそうに笑うものだから、怒りはしぼみため息が漏れた

「…危ないだろう」

「もし落ちても三成だけは助けるさ」

「そういう問題ではない」

「いいじゃねぇかよ
好きな奴が自分の好きなもんを気に入ってくれるなんて、これ以上嬉しいこたぁねぇ
だから、許せよ」

唇に落とされた柔らかな口付け

「ん……」

長曽我部の足の間に入った体勢のまま、何度も触れるだけの口付けが降ってくる
目を閉じ、その柔らかな口付けの感覚だけを味わえば、
くらくらと目眩がしそうな程に幸福に満たされる

長曽我部の胸元の着流しを掴み、まだ離れないで欲しいと思った

「三成…」

「んっ…」

呼ぶ声に薄っすらと瞳を開けば熱を持った視線が絡み合う

後頭部に回された長曽我部の大きな手
途切れることの無い口付け
少しずつ上がっていく体温

「っ…、元親…」

開いた唇の隙間から差し込まれた熱い舌
ぐちゃぐちゃと口内を這い回る舌に自分の舌を絡ませ、
丁寧に歯の裏を、上顎を舐め取られる快感に息が上がる

「んっ、ふっ…」

口の端から零れた唾液が顎を伝う
止まることの無い口付けに、息も切れ切れに夢中で舌を動かした

「っ…!」

いきなり着流しの胸元から差し入れられた手に身を震わせたが、
それに応えるように長曽我部の着流しを脱がせるために手を掛ける

唇が離れる僅かな合間さえも煩わしいと思いながら、
もどかしい手付きで早急にお互いの着流しを脱がせ合った

「三成…」

「っ、ぁっ…」

首筋に噛り付く長曽我部に掠れた吐息が漏れた

触れる唇が、舌が、肌の上を滑る度にくすぐったさと快感が背筋を駆け上がる

「んんっ!」

首筋をなぞり、耳を舐められ思わず高い声が上がる
耳の中まで入り込んだ舌の、ぐちゅぐちゅという水音が木霊する

今までに味わったことの無いような快楽に涙が滲んだ

耳元で漏れる長曽我部の吐息に声が震えた

すでに立ち上がりきった雄からは先走りが溢れ、
触れ合う長曽我部の腹部をぬるぬると汚している
同時に、長曽我部の雄も私の腹部を同じように濡らしている

「元親っ…」

目の前に無防備に晒された長曽我部の首筋を舐め、急かすように名前を呼んだ

頭を支えられ、船底に押し倒される

それを合図にするかのように長曽我部の手が体をなぞり、
胸を、腹を、ゆっくりと辿り、固く閉じた穴へと伸ばされる

太い指がじらすように何度か穴の周りに円を描き、
その度にじわじわと興奮が高まっていく

耳たぶを甘噛みされびくりと体が震える
ねっとりと耳を舐める舌の動きに敏感になる

もどかしい快感に堪え切れず、長曽我部にしがみ付きだらしなく汁を零し続ける雄を擦り付けた

「んっ、元親、ぁっ…」

「っ三成、すげぇエロい顔してんぞ?」

楽しそうに、嬉しそうに笑う長曽我部に羞恥が募る
それでも、我慢は出来なかった

「元親っ、もうっ…」

「ああ、いいぜぇ」

長曽我部の瞳と空の色は同じだな、
と熱に浮かされた頭でぼんやりと考えながら、近づいて来る唇に瞳を閉じた

「んぁ゛っ…!」

「っ…」

閉じた穴に先走りを擦り付け、強引に長曽我部の雄が穴をこじ開ける
ぎちぎちと締め付ける穴をえぐるようにして熱く硬い雄が押し入ってくる

「あっ、ぁあ゛っ!!」

「…っ、慣らさねぇと、やっぱキツいな」

負担をかけないようにしているのか、
ゆっくりと慣らすように動く長曽我部に与えられるもどかしい快感
そのせいで余計に体は熱を持ち、耐え切れなくなってしまう

「…元親っ、いいからっ、…じらすな」

長曽我部の胴に腕を回し、ぴったりと体を重ね合わせる
限界に近い体は自制など効かず、無意識にいやらしく腰をすり寄せている
頭の隅ではしたないと思いながらも腰の疼きは止まらない

「……元親ぁ」

縋るように名前を呼べば強く強く抱きしめられる

「…悪ぃな、加減は出来なさそうだ」

「っ!」

言い終わらぬ間に激しく律動を開始する長曽我部に、
快感のあまりしがみ付いた背に爪を立てた

「ぅあっ、んっ、ああ゛んっ!」

激しすぎる快感に達することも出来ずに咽び泣く

「あぁっ、もと、ちかっ!」

高く、甘く、響く嬌声
それを堪えるように目の前に晒された長曽我部の白い首筋に噛り付く

「っ…、三成っ…」

ぎちぎちと咥え込んだ長曽我部の雄が大きくなるのが分かる

長曽我部ももう限界が近いことを知り、
更に興奮が高まり、穴は余計に雄を締め付ける

「ふぁ゛っ、んんっ!」

「三成っ、好きだ…っ…」

「ぁっ、元親っ、好きっ、好きだ、元親ぁっ!」

「…っ!」

「ぅあっ、んっ、ああああぁぁっっ!!」

ぶるりと身を震わせ、私の中に熱い性を放つ長曽我部の腰に足を絡め、
甲高い声を上げながら長曽我部の腹に熱く滾った性をぶちまけた




目を開けば夕焼けに染まる空が見えた

「…長曽我部?」

横たえていた体を起き上がらせれば硬い船底で横になっていたせいか体が痛んだ

「おう、起きたか!
もうすぐ岸に着くからな」

「すまない、代わる」

「あ?大丈夫だから座ってろって
随分流されてたみてぇで、今までかかっちまった」

沖まで行ってたから仕方ねぇか、と豪快に笑う長曽我部に笑みが零れる

「…好きだ、長曽我部」

「…おう」

長曽我部の赤く染まる頬に愛しさが募る

偶然に、必然的に、出会えたことが喜ばしい

決して幸福なことではなかったが、
それがなければこうしてここに居ることすら出来なかったのだ

今はただ、照れたように頭を掻く長曽我部の隣に居られて良かったと、心からそう思える

それが、とても嬉しいと思える

どうか私が死ぬのは長曽我部の側であれと、
夕焼け空に浮かんだ一番星に一人こっそり願いを掛けた






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