虹の向こう
呼ばれるだけでも奇跡だ
生きている
動いている
声が聞こえる
触ることが出来る
その全てが嬉しくて、嬉しくて、涙が溢れるかと思った
「ザンザス」
静かに目線だけをこちらに向けられる
ずっと待ち焦がれた瞬間
「…ザンザス」
「何だ、カス」
「いや、何でもねぇ…」
つまらなそうに逸らされた視線
八年だ
そんな姿を見ることも
声を聞くことも
もう叶わないんじゃないかとさえ思う日が幾度と無くあった
一人きりで、恐怖に震える夜を幾度と無く越えた
氷の中で眠るザンザスを見るのが怖かった
もう永遠に目覚めることは無いような気がして、目を逸らした
それでも離れることは出来なくて、何度もザンザスの元へと向かった
扉を開けることが出来ずに、ただ俯くばかりでも
そうやって、八年だ
長かった
怖かった
諦めそうになった
泣いてしまいたかった
「ザンザス、気分はどうだぁ?」
「最低に決まってんだろ、ドカス」
息をしている
怒っている
目を覚ましている
「…あぁ、そうだな」
神様なんて信じていないけれど、祈った
何かに、必死で祈った
目を覚ますように
また、言葉を交わせるように
また、動く姿を見られるように
生きていてくれるように
「ザンザス」
赤い瞳に燃える憤怒の炎
圧倒的な威圧感
「…何だ」
「俺は、一生テメェに着いて行くぞぉ」
「フン、当たり前だ。ドカスが」
何度も夢見た姿
何度も願った姿
「あぁ」
夢でもなんでもいい
また声を聞けた
動く姿を見られた
それだけで、生きていける
夢だとしても、お前が本当に目を覚ます日まで待っていられる
よかった
本当に、よかった
信じてもいない神様にだって感謝出来る
それぐらい長かったんだ
今はただ、生きていてくれることが
目を開き、動き、言葉を発することが
泣いてしまいそうな位
叫び出したい位
胸を締め付けるんだ
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