塩水
宵闇の羽の方はとっても強くて、
涼やかな風と共にいつもいつも私を助けてくださいます
風に揺れる赤毛の髪が、光に輝く白い肌が、夢のように美しかった
あの方を追うようになったのは、きっとそれが始まりです
「孫一姉さま!」
「姫か、どうした?」
「私、宵闇の羽の方に会ってきます!」
「北条の忍か…
止めはしない、姫の好きにするが良いさ」
「はい!
今度こそ、照れずに抱き締めてもらえるように頑張ります☆」
「……そうなるといいな」
「うふふ!
では、鶴姫はバヒュンと行って来ます!」
呆れ顔の孫一姉さまにニッコリ笑って部屋を出ると、空がとても青く見えました
孫一姉さまはとてもお優しいです
私が傷付くようなことは絶対におっしゃいません
*=*=*=*=*=*=*=*=*=*
「宵闇の羽の方ー!
降りてきてくださーい!」
栄光門の上に立つ宵闇の羽の方にどんなに声をかけても降りてきては下さいません
お仕事中ですもの、当たり前ですよね
でもでも、少しだけ、降りてきてくださってもいいと思うんです
「お菓子をお持ちしたんですー!
一緒に召し上がりませんかぁー!!」
「………」
今、こっちを見ましたよ!
ちらっと私を見てくださいましたよ!
「宵闇の羽の方ー!」
嬉しくって跳び上がっちゃいました
手を振ってもやっぱり振り返してはくださいませんね
「あ」
宵闇の羽の方が消えちゃいました
きっとお呼ばれしたんですね
本当は私、ちゃんと分かってるんです
宵闇の羽の方は私を好きじゃない
きっとこれから先も、望みなんて無いのでしょう
孫一姉さまもそれを分かっていらっしゃるのでしょうね
それでも、一度だけでも触れてみたいんです
一度だけでも、お顔を見てみたいんです
ああ、喉が苦しい
目が熱くて痛いんです
「………涙って、海と同じ味なんですね」
私、そんなことも知りませんでした
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