君想い
乱れる女の肢体を眺め、その胸に手をやれば男には無い柔らかさ
流れる緑の黒髪は艶々と美しく、その肌は日の光を浴びたことが無いように白い
腕も足も胴体も、折れてしまうんじゃないかと思う程に細い
「あぁっ、政宗様っ…」
高い声で嬌声を上げ、悩ましげに眉をしかめ、
縋るような視線を送ってくる女を無感情に見つめ返した
子を作る為だけの行為
愛も情も無い、ただの作業
初めのうちはその柔らかさに惹かれたが、溺れることは無かった
「ん、あっ、はあっ!」
女の汗ばんだ肌は熱く、薄っすらと赤らんでいる
潤んだ瞳に映る自分の顔は、やけに冷酷に見えた
女に触る度に切なさが胸を締め付ける
全てが馬鹿らしく思えた
笑わない女ばかりを抱くようになった
目付きの鋭い女ばかりを側に置くようになった
女が世辞を言い、媚びる事を嫌った
いつからか女を抱く度に虚しさが込み上げた
銀の髪では無いことに、笑いながら話かけられることに、
嬉しそうに名を呼ばれることに、違うと叫び出したくなった
俺が欲しているのは柔らかな肌じゃない
長い黒髪でも、黒い瞳でも、嬉しそうな表情でも、なんでもない
俺の名前さえも知らず興味無さ気にすぐに外される視線
美しい銀の髪に筋肉の付いた白い肌
鋭い金緑色の瞳に本心しかない言葉
俺を省みることなど無い、たった一人の男
俺が欲しているのは石田三成ただ一人だ
「あっ、ま、政宗様ぁっ!」
「…っ!」
仰け反り、きつく雄を締め付ける女の中に性を放ち快感に震えた
雄を抜き出しそのまま布団に横たわれば、
甘えるように胸元に擦り寄って来た女を苛立たしく思った
「…用は済んだ、出てけ」
「ひっ…」
苛立ちのままに睨みつけてやれば、
顔を青く染めながらいそいそと身支度を整え、女は足早に部屋から出て行った
「…Shit!」
遠ざかる女の足音を聞きながら悪態を吐く
ただの八つ当たりでしかないと分かりながらも、苛立ちが収まることは無い
絶対に、この手に入ることは無い男
俺を見ることなど無い男
それが悔しくて、腹立たしくて、悲しくて、一人きりで拳を握り締める
ぎりぎりと歯を食いしばり、天井の木目を睨み付けた
冷たく目尻を伝う涙の意味が、俺には分からなかった
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