脇毛
官兵衛の腕枕が好きだ
逞しい筋肉の付いた腕に抱き寄せられると至福を感じる
「官兵衛、もっと近くに寄れ」
「何だ、今日はやけに素直だな」
上機嫌に笑いながら官兵衛がにじり寄る
この武骨な男が持つとは思えぬ程にさらりと触れる髪も、太い指先もすべすべと繊細で笑ってしまった
「お前さんは笑うと色っぽいな。まるで女の様だ。
その白い肌も、華奢な体も、柔らかな髪も、艶やかに薫り立ち小生を惑わせる」
瞳に情欲の色を滲ませて、壊れ物でも扱うかの指先でゆっくりと肌に触れる
「険しい顔もいいが、小生はやはり乱れた顔の方がそそるな」
額に口付けを落とし、優しく頬を撫で、強く抱き締められる
欲望にまみれた瞳で見つめられるとこちらの熱まで上がる気がした
「官兵衛」
ずっと気になっていることがあった
「何だ?三成」
柔らかく笑う官兵衛の顔をまじまじと見ながら、かねてよりの疑問をぶつける
「何故貴様の脇はこんなにも滑やかなのだ?」
時が止まったかの様だった
笑みの消えた顔で一切動かなくなった官兵衛を抱き締め頭を刷り寄せると、ぎこちない手付きで頭を撫でられる
「何か処理でもしているのか?」
私が言葉を発する度に官兵衛の眉は下がり、わなわなと口元が震えた
「いや、こうも何の跡形も無ければ生まれつきか?」
「うぅ、うるさいっ!生まれつきで何が悪い!」
抱き寄せる腕はそのままに涙混じりで官兵衛が叫ぶ
「ああそうさ、小生だって気にしているんだ。
いつかは、と思いながらもうこんな歳だ。
…小生はいつだってこんなもんさ」
苦い顔で肩を落としぼやく姿はどこか小動物を思わせる
「そうか」
長年の疑問が解け、晴れやかな気分で官兵衛の頬に口付けをした
鳩が豆鉄砲でも食らった様な顔で目を見開く官兵衛に首を傾げる
「し、小生が嫌になったんじゃないのか?」
「いつ私がそんなことを言った」
「こ、こんな、脇がツルツルな小生でもいいのか?」
必死に捲し立てる官兵衛がやけに愛しく思え、広い胸板に頭を預けたまま目を閉じる
「脇に毛が有ろうと無かろうと、私は貴様なら何でもいい」
「…み、三成っ」
折れそうな位に強く抱き締められ息が詰まる
だが、情けない顔で心底安堵する官兵衛を見ているとこのままでいいかと思えるのだ
「官兵衛、貴様の腕の中は心地よいな」
たまにはこんな日があるのも悪くない
私の一言に一喜一憂する官兵衛が愛しい
まだまだ夜は長いのだ
もうしばらくこうして抱き合っていたいと思った
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