スパーク











形部との口付けはいつも布越しだ
手も、胴も、足も、包帯に覆われている

肌を見せることを嫌うのを知っている
それでも、私にくらいは隠すなと思う
病位いくらでも移せばいい
全て晒して欲しいと思う

私の為を思って伏せられる真実を、
私の為にと隠される事柄を、
形部のすることならばと全て許した

本当に私の為にと思ってくれていることを知っているから

私は形部を信頼している
心も体も任せられる程に側に居る

形部にとって私がそうではないことが悲しい
全てを晒してもらえないことが苦しい

私の為にと言われることが、切ない

「やれ三成、いかがした?」

気遣う言葉も、心配そうな瞳も、
肩に置かれた手も、近い距離も、
寂しくなるばかりだ

「形部に、触れたい」

驚いたように目を見開く形部の返事など聞かず、
肩に置かれた手を掴む

何度触れても、慣れることの無く強張る体

今までどんな仕打ちを受けてきたのか
どんな苦しみを抱いてきたのか私は知らない

「三成、そう戯れるな」

引きつった笑い声を上げながら、
硬くなったままの体に眉をしかめる

私が形部を傷つけることなどありえない
形部もそれを知っている筈だ

それでも、私を受け入れてくれることの無い反応
焦ったように、困ったように歪められた笑顔

「私は形部が好きだ」

「ああ、ああ、分かっておる
だから早に手を離しやれ」

逃げるように緩く引かれる手をきつく握り締める

「好きだ」

喉がきゅうと鳴って、涙が出そうだった
だが、決して泣くまいと眉間に力を込めた

「私はっ、形部が…」

「そう何度も言わずとも分かったと言っておろ?」

ぎこちない手つきだが確かな抱擁

「ぬしが触れると、自制がきかぬ
やれ困った、コマッタ」

力の抜かれた体
穏やかな声
それだけで先程までの苦しさも、悲しさも、
寂しさも、切なさも、
一瞬で溶けていく

「…自制など、いらない」

「ぬしはわれの激情を知らぬゆえそうしていられるのよ」

口元の包帯を僅かにずらし、噛み付くように口付けられた

初めて触れた形部の唇は少しかさついていた

絡み付いてくる舌に自らの舌を絡め貪る
混ざる吐息に、回された腕

瞼の裏にちかちかと星が瞬いた

その光がもっと欲しくなり、
形部にしがみ付き口付けを深くした






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