臆病











戦から帰った三成はひどく甘えたになる
人恋しいのか片時も側を離れず、触れたがる

「ぬしの髪はほんに綺麗よな
ほれ、光を返して綺羅綺羅しよるわ」

後ろから回された腕を、子供をあやすように叩いてやる
肩口に預けられた頭は微動だにしない

「三成よ、そのように押し付けられては肩が痛む」

「…すまん」

緩慢な動作で顔を上げた三成によいよいと笑ってやる
こうしていると三成は本当に子供のようだ

「刑部、刑部………」

どこか困ったような声音で、それでも何を伝えるわけでもなく
そのまま黙り混んでしまった三成の手を握ってやる

「やれ三成、いかがした?」

「刑部、私は……」

言葉が終わらないまま体ごと向き直り、三成の薄い唇に口付ける
触れるだけのそれは、三成の舌が口内に差し入れられ深いものへと変わっていく

「刑部……」

熱っぽい息を吐き、澄んだ瞳でわれを見つめる

(……ああ、なんと美しい獣か)

「刑部、刑部………」

押し倒され、のし掛かられ、欲望のままに蹂躙される
それでもその手付きはどこまでも優しいのだから手に終えない

「刑部……」

欲を吐き出した三成が安らかな寝息をたてるのを見つめる



言葉にされることを怖れて逃げているだけだ
いずれ逃げ切れなくなる日が来るのだろう

『刑部、私は………』

恐れているのか、はたまた楽しみなのか

われはその言葉の続きをただひたすらに待っている






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