御 嫁 様
「やれ三成の膝は心地良いなァ」
肉付きが良いとは決して言えない
骨っぽいごつごつとしたものだが、
ぎこちなく頭を撫でる手が、
低い体温が、
優しく細められた瞳が、
たまらなく心地良い
なぞるように膝を撫でてやれば頬を赤く染め
恥ずかしそうに顔を背ける
体を繋げたことは一度や二度では無いと言うのに
いつまでも初な反応をする三成が可愛くて仕方ない
「女のように肉があるわけでも無いだろう」
拗ねたようにそう言われ、
引きつった笑いを零す
「三成だから良いのよ」
「…物好きめ」
三成の膝から起き上がり
陶器のような頬を撫でてやれば
潤んだ瞳をこちらへ向け、
ゆっくりと目を閉じる
慣れたものよなァと思いながら
艶々とした薄い唇を吸う
鼻から漏れる甘い吐息は
いつまでも変わることは無く劣情を煽る
「んっ…はぁ…」
下唇を食み、ちろちろと舐めれば
ぎゅっと眉を寄せ頬の赤みが増す
微かに開かれた隙間に舌を差し入れ
口内を舐め回せば懸命に舌を絡ませてくる
まだまだ拙いが、相手が三成だと思えば
それだけで満足だった
存分に口内を味わい口を離してやれば、
荒い息を整えながら三成が見上げてくる
「…形部」
「どうした?」
背を叩いてやりながら顔を覗き込めば
先程よりも頬を赤らめて俯いてしまう
「その、いつに、するんだ?」
「…はて」
三成の言葉に首を傾げる
いつ、とは一体何であったか
どこかに行く約束をした訳でも無いし
心当たりは一つも無い
「三成、いつとは何のことか
われには検討もつかぬのだが…」
「恥ずかしがらなくていい
私の方はもう準備は整っている」
「…はて?」
嬉しそうに頬を緩め、
耳まで赤くしている三成に首を傾げる
三成の準備は整っているとは
一体どういうことであろうか
「…それは、われにも準備が必要な事柄か?」
「大丈夫だ、形部の分も私が用意した
だから、その、分かってはいるんだが、
私としては言葉にして貰えると、嬉しい」
何かを期待している綺羅綺羅とした瞳に見据えられ
柄にも無くうろたえる
三成が何を望んでいるかさっぱり分からなかった
「…言葉」
「ああ、形部が言ってくれたなら、
明日にでも式を挙げればいい」
「…式とな」
まさかとは思うが、
もしや婚姻の儀のことを言っているのだろうか?
男同士で結婚出来る訳は無い
それ位は三成も分かっているだろうが、
われからの求婚の言葉が聞きたいという、
三成の可愛らしい願いならば叶えてやりたい
「…三成よ、われと共になるのは辛いことよ」
こんな茶番も愉しかろと思い、
真面目な顔で三成の肩に手を置いた
「ぬしにはその覚悟が確かに出来ておるか?」
「当然だ!
体を繋げたその瞬間から私の心は決まっている!」
姿勢を正し、真剣な顔の三成に
ニヤリと笑ってやる
「ならば生涯、われの側で笑いやれ」
「…形部っ!」
感極まったのか涙を流しながら抱きついてきた三成を
抱きしめ返し優しく髪を梳いてやる
「われに嫁ぐとはぬしも物好きよなァ」
「本望だっ」
ぐすぐすと鼻をすする三成は本に愛らしい
その頬をさらりと撫で唇を奪う
縋るようにしがみつく姿に心が温かくなる
触れるだけの口付けを終えると
三成は勢い良く立ち上がり指をさしてきた
「式は明日だ!
寝坊は許さない!」
「ヒヒッ、あい分かり申した」
われの返事に満足したのか
嬉しそうに口角を上げ去っていく後ろ姿を見送った
白無垢を着た三成が迎えに来るまであと一晩
「形部!
秀吉様も半兵衛様もお待ちだ!
早急に用意を整えろ!」
「…ああ、ぬしは冗談など言えぬ男だったな」
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