紛 れ も 無 く
滑 稽 な
仰向けに倒れた体はやけに重く、
指先を動かすことさえ億劫だ
「っ、…みつ、なり」
「ああ、元親、元親」
自分の腹から聞こえるぐちゅぐちゅという水音
むせ返るような血の匂い
鮮血に濡れた真っ白な三成
「ぐっ、ぁ…!」
三成の冷たい指先が臓物に触れる感覚
体は凍えるほどに寒いと感じるのに、
傷口から漏れ出す自分の中身はひどく温かかった
「元親、私を裏切るな
ああ元親、ずっとずっと、側に居てくれ」
縋るような瞳で、寂しげに顔を歪ませ、
三成が俺の胸に刃をつき立てる
「あ゛っ!あ゛あ゛あ゛っ!!」
抜かれる刀と共に吹き上がる鮮血
「元親、元親…」
傷口をぐりぐりとえぐるように差し入れられた舌
何度も何度も、深く入り込んでくる舌に痛みの感覚すら分からなくなる
視界は歪み、冷たい汗をかいていた
「私を、置いていくな…
私を、手放すな、元親…」
三成の掠れた声
目に映るのは泣き出す前の子供のような表情
今まで、側で笑っていたのに
感謝していると、笑ったのに
はにかむように頬を染め、幸せそうに笑ったのに
「はっ…ぁ゛っ…」
「元親、私は…」
頬に添えられた冷たい手のひら
もう視界は眩んで三成の顔さえ見えやしない
「私は、元親が好きだ…」
ああ、何て哀れな奴だ
こんな愛し方しか知らないなんて
ただ笑って、好きだと言って抱きしめれば、
それで伝わることだというのに
それすらも知らないなんて
どこまでも不器用で、真っ直ぐに捻じ曲がった愛
何て馬鹿だ
お前も俺も、
ただ笑って、好きだと言えば、
この先もきっと笑い合って生きていけた筈なのに
俺がお前を手放すなんてある筈が無いのに
臆病風に吹かれて、何も言えなかった
これからも側に居て欲しいと、
何よりも一番に愛していると、
お前にそう伝えたかったのに
痙攣を繰り返すばかりの手はもう自力で動かすことすら出来ず
喉はヒュウヒュウと細い息を吐くことしか出来ない
せめて最後に三成の顔を見ようと目をこらしても、
真っ暗な視界には何も映ることは無かった
((愛してる……))
愛
の
結
末
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