誰かの悲劇
は
誰かの喜劇
最近三成がおかしい
じっとこちらを睨んでいたかと思えば
ワシが見れば顔を背ける
二人きりになるともじもじと
何か言いたそうな顔をする
一体なんだと思ったが、
聞いて怒鳴られるのはいつものことなので
最近は何も言わなくなった
軍議の途中から、
三成の手が太腿を撫で回しているのを
どうしたらいいのか分からず放置した
(ワシが何をしたんだ)
ちらりと横目で伺えば
頬は上気し、嬉しそうに目をぎらつかせている
何がしたいのかさっぱり分からなかった
それからは、軍議の度に体のどこかしらを
触られるようになった
嫌われているわけではないようなので
困りつつもされるがままになっている
その事について訊ねてみても
鼻息を荒くしてなんでもない!と立ち去ってしまう
三成が何をしたいのか分からず
ほとほと困り果ててしまった
三成と親しい形部にそのことを話せば
おかしそうに引きつった笑い声を上げるばかりで
何の解決にもならなかった
何度目かもう数えるのを止めた
その慣れた手つきが今日はどこか違った
いつもなら太腿を撫で回すだけのそれが
あろうことか下帯の中まで入ってきたのだ
「っ!?」
驚きに声を上げなかった自分を褒めてやりたかった
焦って三成を見れば、
そ知らぬ顔で前を見つめていた
手を払いのけてどうしたと聞かれても
うまく答えられる気がしないので
ぎこちない動作で自分も前を向いた
もう竹中殿が何を言っているのか
さっぱり理解できなかった
「っふ…」
恐る恐ると言うように三成の手が雄を握る
その冷たさとに思わず小さく声が漏れた
しまったと思ったが回りには聞こえていないようで
特に何も無く軍議は進んでいく
だが、隣に座る三成にはしっかり聞こえていたようで
その白い喉が生唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた
興が乗ってきたのか何なのか
三成の手はやわやわと雄を扱き出す
そのもどかしい快感に拳を硬く握り締め
必死で声を押し殺す
先走りが漏れて雄の先がぬるぬると
滑りが良くなる
思わず声が上がりそうになり
唇を噛み締めて理性を保つ
「…んっ」
三成の細い指が尿道を
引っ掻いたことで堪えきれない声が漏れた
「家康君、どうかしたのかい?」
怪訝そうにこちらを見つめる竹中殿の視線が痛い
「いや、何でも無いので、続けてください」
答えるときだけは止まってくれた手の動きに
安堵しながらそう答える
「そうかい?では続けるよ」
外された視線に息を吐くも、
またやわやわと動き出す手に涙が出そうになった
(一体何がしたいんだ三成…)
今までに無く長く感じた軍議もようやく終わり
皆がそれぞれに席を立っていくのを
横目で見ながらどうしたものかと考える
軍議が終わる前に三成の手は離れてくれたが
立ち上がったままの雄をどうにかしないと
立ち去ることさえ出来やしない
「家康、行くぞ」
竹中殿と何かを話していた三成が
そう言って腕を取ってきた
有無を言わさぬほどの強い力に驚きながらも
立ち上がれない事情がある
「いや、待ってくれ!あの…」
「大丈夫だ、誰も見ては居ない」
確かに今ここに残っているのは
ワシと三成、竹中殿と形部だけだ
竹中殿と形部はなにやら話し込んでいるようだし
今ならば確かに気付かれずに出て行ける
「あ、あぁ」
腕を掴まれたまま三成の自室へと連れられる
道中に何であんなことをしたんだと言っても
答える気が無いらしく、
ただ黙々と歩みを進めてここまで来てしまった
ぴったりと襖を閉め、
三成が熱を持った目でこちらを見つめた
「み、三成?」
あまりの真剣さに気圧されながら、
まじまじと見つめ返す
「…我慢出来ない」
そう言ったかと思えば
目にも留まらぬ速さで三成に押し倒される
「みっ、三成!?何をっ?」
強引に着流しをあばかれ、
下帯まで取払われる
先程までの行為の余韻から雄はまだ立ち上がったままだ
そこに自分の下帯を取払った三成が跨り
雄が温かさに包まれる感触
「んあっ!あぁあああぁ!」
ぬちゅぬちゅと聞こえてくる水音
甘い声を上げる三成
ぐにぐにと締め付けられる感覚
「なっ、みつ、何っ!?」
自分の雄が三成を貫いているのを悟り
激しく狼狽する
「あっあぁっ!いえやすぅ!」
自分に跨り淫らに腰を振る三成
手とは比べ物にならない快感
淫靡な顔をする三成
高まる興奮
もうどうにでもなれと腰を打ちつけた
「ああっ!あんっ!!」
一層高くなる喘ぎに欲情する
「うあっ!家康っ!家康ぅっ!!」
ぱんぱんと肉がぶつかる音と
ぐちゅぐちゅと混ざり合う音
正体を無くし乱れる三成に
何度も何度も腰を打ち付ける
「いえ、やすっ!も、イくっ!!」
「…っ、ワシもだ」
「んっ、んんっ!」
ふるりと体を震わせ、三成の欲が腹にかかる
それを見てから自分も三成の中に欲を放った
何事もなかったかのように
てきぱきと身支度を整え、部屋を出る三成を
何を言えばいいのか分からずに
ただぼんやりと見つめていた
「私はっ、貴様が好きだっ!!」
襖が閉まる直前にそんな言葉が聞こえ、
ぼんやりとしたまま見つめていれば襖が閉められる
好き
私は、貴様が、好きだ
なんて不器用な男だ
体を触る前に言うべき言葉じゃないか
そんなことを思ったが、言うべき相手はもう立ち去った後だ
ため息を吐き、ごろりと寝転がる
乱れた三成の愛らしさといったら無い
あんな三成を見たのは初めてだ
追いかけようかとも思ったが、
逃げられたら追いつけないのでここで待つことにした
ここは三成の部屋なのだからその内戻ってくるだろう
戻ってきたらワシも好きだと言ってやろう
そしてきちんと抱いてやりたいと思った
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