「…きたない」

「そんなことはないさ」

「……嘘だ、きたない」

三成の体を濡らした布で拭いてやる
傷に沁みるのか時々肩を震わせる

真っ白な肌に残る醜い傷跡

青、紫、赤
みな入り混じってどの色かも分からない

「…家康は綺麗だ」

「……お前の方が美しいよ」

「………嘘だ」

ため息を吐き、ごろりと横になると体が痛んだのか僅かに眉をしかめた

半兵衛殿が亡くなってから三成が夜伽に呼ばれるようになった
白い肌、銀の髪
たったそれだけだ
共通点などとも言えないそれらに、秀吉殿は重ねて見る

そうして何もかもが違う三成に憤るのだ

「…大丈夫か?」

「ああ」

それでも、三成は喜んでそれを受け入れる

身代わりだと分かりきっているのに、
”お役に立てる”と、陰りの無い笑顔を見せる

あんまりだと思った

手酷く抱かれ、殴られ、赤黒い痣を作り、
それでも幸せだと笑う三成はあまりにも不幸ではないか

いつからか、消えることの無い痣を三成が厭うようになった

”半兵衛様はもっと白い肌をしていらっしゃった”
そう呟いて悲しそうに俯いていた

あくまでも代わりとして存在しているのだと、
それなのに代わりにもなりきれないと嘆いていた

「……私は汚い」

真新しい痣の残る腕を見ながら三成が呟く

キラキラと光を返す銀の髪も、
目を逸らしたくなる程の傷も、
その下の眩しいばかりの白い肌も、
どれだけワシが美しいと言っても三成には届かない

「………きたない」

ああ、今日も半兵衛殿とは違う色にされた肌を嘆いて泣くのか
声も無く涙を零すのか

「…三成、お前は美しいよ」

その心も、体も、何一つ汚れてなんていないさ
どこまでも無垢に主を思っているじゃないか

半兵衛殿と違うと嘆いたって、それは当たり前じゃないか
お前は半兵衛殿ではなく、石田三成なのだから

お前はとても、とても美しいよ、三成

だから、そんな風に泣かないでくれよ

お前はこの世の何よりも美しいんだ

「……………嘘吐きめ」

今日もまた、ワシにはどうしたって三成の涙を止められない






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