愛ゆえに暴走
三成の全てが好きだ
愛していると言っても過言ではない
いや、もうむしろ全力で愛してる
サラサラの髪に鼻を押し付けて目一杯匂いを嗅ぎたい
ツヤツヤの肌を余すところ無く嘗め回したい
どれだけ冷たい視線を投げられようと
心がへし折れそうな暴言を吐かれようと
それが三成からのものならば何だって受け入れられる
つまり何が言いたいかと言えば、
心の底から、全身全霊を持って、
愛している!
ワシは三成を愛している!
それはもう可愛くて可愛くて仕方が無い
三成が欲しがるなら腕の一本や二本あげたっていい
三成を追いかけられなくなるから足はあげられないが
いや、三成が見れなくなるのも困るから目もあげられないが
いや、やはり目なら一つならあげてもいいか
もう片方残っていれば三成が見れる
まぁそれぐらい、愛している
「三成!饅頭を買ってきたんだ、一緒に食べないか?」
「…今日の必要な食事はもう摂った。消えろ」
「じゃあ茶だけでもいいから飲まないか?」
「いらん。消えろと言ったのが聞こえなかったか」
「そんな悲しいこと言うなよ三成。ワシは何かお前を怒らせるようなことをしたのか?」
「…何かしたのか、だと?」
「ワシには心当たりが無いんだ、気に障ったことがあったのなら教えて欲しい」
「貴様は、昨日何をした?忘れたとは言わせない」
「昨日?昨日は、三成の顔を見に行ったらお前が居なくて、
書きかけの書簡とお前が触っていたであろう筆を見つけたから堪え切れずに筆を嘗め回したな。
そこを用事があってお前の部屋に来た形部に見られ、咎められたから筆を持って逃げた。
それがどうかしたのか?
あ、そういえば筆を返していなかったな。すまない。後で持ってくるよ」
「貴様っ、筆を持っていっただけで無かったのか!?
…っ、だから形部はあやふやな言い方をしていたのかっ」
「三成、そんなに強く拳を握ると爪が食い込んでしまうぞ?」
「黙れっ!私に寄るな!触るな!声を掛けるな!私を、見るなああぁっ!」
「同じ軍に居るのだから無理な話じゃないか」
「煩い!…まさか、最近私の褌が無くなったのも貴様の仕業か?」
「あぁ!毎晩一緒に寝ているぞ!」
「……あああああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁ!!」
「ど、どうした三成!」
「返せっ!返せぇっ!
今すぐここに私から盗ったもの全てを持って来い!
貴様ごと全てを灰燼に帰してやるっ!」
「そんな勿体無いことをしては駄目だぞ三成
それに、ワシはお前と夫婦になるまで死ぬわけにはいかないんだ!」
「あ゛あ゛あ゛あああああああぁぁあぁぁぁあ゛ぁっ!!」
「そんなに叫んで、さっきからどうしたんだ?」
「黙れ家康!死んで詫びろ!
私が持っているのは秀吉様が施してくださった俸禄で買い揃えた品だぞ!
万死に値する!
そもそも男同士は夫婦になどなれん!
腐れ死ね!
死んで地獄の底に落ちろ!
そうして二度と現世に戻ってくるなああああああ!」
「そこに愛があれば夫婦にだってなれるさ!」
「都合の良いことしか聞こえないそんな耳は腐れ落ちろ!
むしろそんな耳を持つ貴様の頭がすでに腐りきっている!
今すぐそこに土下座しろ!
私の刀が貴様に触れることすらも耐え難いが仕方が無い!
私が直々に残滅してやるうううう!」
「勝手に物を持ち出したのは悪かったと思ってるよ
でも三成、お前頼んだってくれないだろう?
それに、褌なら代わりにワシのを入れておいたろう?」
「貴様の命と引き換えにしたって渡す物など皆無だっ!
人のタンスにガビガビの褌など入れるな、気色の悪い!
あんな物とうに捨て去った!
そもそもそれが謝る態度かああぁ!」
「そ、そんな…
ワシは毎日お前が今日はワシの褌を身に付けているのかと楽しみに思いながら過ごしていたのに…」
「誰が貴様の欲の付いた褌など身に付けるかっ!
常識と理性を標準装備しろ!
二度と私の視界に入るな!
声を掛けるな!
私物を盗るなっ!」
「あっ、三成!
どこへ行くんだ!一緒に茶を飲もう!」
「星の彼方に消え去れ変態!
声を掛けるなと言ったばかりだろうが!
私の私物を盗ることの何が楽しい!?」
「三成の物ならなんだって欲しいさ!
ワシは三成が好きだからな!」
「死ねえええええぇぇぇっ!
いえやぁすううううううぅぅぅっ!」
「うわっ!どうしたんだ三成!
いきなり切りかかってくるなんて酷いじゃないか!」
「酷いのは貴様の腐った脳髄だあああああぁぁぁぁっ!
今後一切そんな気味の悪い言葉をほざくなと何度言ったら分かるのだっ!」
「仕方ないじゃないか、ワシは三成が好きなんだ」
「………うあ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああぁぁぁぁぁ!!」
「あっ、三成!」
バタバタと走り去る三成の後姿を見送った
三成と仲良くなりたいだけなのに、いつも上手くいかない
こっそりとため息を吐いて首をひねる
今頃はきっと形部の元へと向かったのだろうと検討をつける
いつも仲直りの方法を教えてくれる恩人だ
この饅頭は形部にやればいいかと思い丁寧に抱えなおす
三成が怒りをおさめた頃にでも出直すか、と考えた
「ぎょ、ぎょぎょぎょ、形部うううううぅぅぅぅ!」
「…やれ三成、また徳川と何かあったのか?」
「筆も褌も家康の仕業だった!
あああああああぁぁぁぁ!
私は、私はああああぁぁぁっ」
「まぁ落ち着きやれ」
「落ち着いてなどいられるかっ!
あの男は何を考えているんだっ!
私物を盗ったり、嫌がらせをしたり、挙句の果てに好きだだと!?
私には理解できないっ!」
「…あれもぬしと仲良うしたいだけよ、そう邪険にしやるな」
「許しておける所業の範囲を超えている!」
「…あぁ、筆は兎も角褌もとはなァ
それはわれも知らなんだわ」
「…なぜだ。私は、家康と仲良くなりたいのに」
「そう伝えれば容易いことよ」
「…家康は私が嫌いだからあんなことをするのではないのか?」
「それは有り得ぬ」
「…本当か?」
「まことよ、まこと」
「……」
「徳川と仲良くしたいのなら、まぁあ奴が謝ってきたら許してやるとよい」
「…分かった」
「ぬしは素直なよい子だの、ヒヒッ」
「…形部を信用しているだけだ」
「早に徳川にも素直になれればよいのだがの」
「…努力する」
「われも出来る限り力になろ、ヒヒッ、ヒヒヒッ」
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