アニキと











「そりゃあ何だ?」

「アニキ、花なんて興味あるんですかい?」

「たまにゃあいいじゃねぇか」

「これは木立かみつれっていうんです」

「へぇ」

「三成さんにあげてみたらどうです?喜んでくれると思いますよ」

「な、何で石田が出てくんだよ!」

「あれ?俺ぁてっきりアニキは三成さんが好きなのかと…」

「ばば、馬鹿言うんじゃねぇ!あいつぁ男だぞ!」

「好きになったらそんなの関係無いと思いますけどねぇ」

「確かにあいつは細ぇし、髪だってさらさらだし、
首筋だって色っぽいし、笑うととてつもなく可愛いがよ」

「…聞いちゃいねぇなぁ」

「こないだ新しい機巧を見せた時なんか目ぇキラキラさせてすごいなとか言ってよぉ、
お前はどんだけ可愛いってんだよ、なぁ!」

「…アニキ」

「執務室に花が飾ってあってな、綺麗だなって話しかけたら喜んでくれてよかったってほっとした顔してよぉ、
それがまた、たまんねぇぜ!俺に喜んで欲しかったなんて、花なんて飾って、
そんなもんお前が笑ってりゃあいつでも喜んでんだこっちはよぉ!」

「…アニキー」

「何だ!」

「アニキが三成さんのことが大好きなのは分かったんで、落ち着いてください」

「ばばばば、馬鹿野郎っ!誰も、す、す、好きだなんて言ってねぇだろうがよ!」

「はいはい、そうですねぇ」

「第一あいつが花を好きかも知らねえし…」

「好きだと思いますよ。たまに眺めてますし」

「…てめぇ、何でそんなこと知ってやがる。まさか、てめぇ石田のこと」

「好きっすよ。アニキの思う好きとは違いますけど」

「や、やっぱりか…。ちくしょう、俺はどうすれば…。
まさか他にも石田を狙ってるヤツがいるんじゃ…」

「…アニキ」

「あいつら皆して三成さんなんて呼んでやがるし、やけに仲よさげにしてることもあるし…」

「…アニキー」

「そうだよな、あんなに綺麗な石田をほっとく訳がねぇ…。
あのはにかんで笑う顔なんか見ちまったらいちころだ…」

「…アーニーキー」

「くそっ、俺は野郎共と争わなきゃなんねぇってのか…」

「もう、アニキってば!」

「……。すまねぇな、俺はどうしたって石田を諦めることは出来ねぇ。
…お前らの骨はちゃんと拾ってやるからよぉ」

「ちょ、ちょっとアニキ!誤解!誤解ですって!」

「…誤解だぁ?」

「そうです!だからおっかない顔で不吉なこと言って無いでその釣竿離してください!」

「…で、何が誤解なんだ?」

「そんな睨まないでくださいよ。確かに俺らは皆三成さんを慕ってます。
アニキのダチだし、曲がったことが嫌いっつー気持ちいい性格してるし」

「…誤解な割にはよく見てんじゃねぇか」

「待ってください!まだ終わってませんから!」

「…ちっ」

「怖いから舌打ちしないでください!
…俺らが三成さんに話し掛けるのって、アニキがいるときだけなんですよ」

「ああ?どういうことだ、そりゃ?」

「最近の三成さん、雰囲気が柔らかくなったじゃないですか。
話し掛けやすくなったっていうか」

「よく笑うようになったしな」

「でも、アニキがいない時はつまらなそうにしてるんすよ。寂しそうっつーか。
話し掛けるなって空気出してますもん。
それに、知ってます?俺らと話しして三成さんが笑うのってアニキの話しをするときだけなんです」

「…そうなのか?」

「そうなんっス。アニキが誰にも言わずに釣りに行っていなくなっちまった時なんか
悲しそうな顔して、ピリピリしてて誰も近寄れなかったんですよ!」

「…それって」

「俺らは皆、アニキの側にいる三成さんが好きなんですよ。
アニキの側で嬉しそうに笑ってる三成さんが」

「…いやいや、まさか。…でもよ」

「だから俺、アニキと三成さんは好き合ってんだなぁって思ってたんすけど」

「だよなぁ!」

「うわっ!急に大声上げないでくださいよ、びっくりしたぁ」

「てめぇの話しを聞く限り、石田は俺に惚れてると見て間違いねぇ!」

「そうっすね」

「そして俺は石田が好きだぁ!」

「散々否定してたのは自分じゃないですか。そんなこと皆知ってましたよ」

「こりゃあ俺が男気を見せる時に他ならねぇ!そうだろ!」

「…アニキ」

「そうに決まってる!
はっ、もしや石田は俺をたてる為に今まで何も言わなかったのか!?
…っなんて出来たやつなんだ!」

「…アニキー」

「よぉし!俺と石田は明日まで寝所から出て来ねぇと思え!」

「…アーニーキー!」

「何だぁ!俺ぁこれから石田のとこに行かなくちゃならねぇ!

今の俺を誰も止められやしねぇぜ!」

「三成さんとこ行くなら、この花持ってってください。

アニキと三成さんにぴったりっスから」

「おう!まかせろ!…よぉし!待ってろよ石田三成!
今夜と言わずに毎晩だって、寝かせやしねぇぜ!」

「その花の花言葉、心に秘めた愛って言って…って、もう行っちまった。
………うまくいくといいですね、アニキ、三成さん」






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