墓地の整理・改修は、人生の中でも大切な一大事業である。その方法を誤ったために、かえって不幸を招いてしまったという例がたくさんある。墓地の整理・改修をお考えの方は、是非専門家の指導を仰ぐ事をお勧めする。
 1. 墓所の整理は自分の代にしか出来ない幸運
墓所が満杯 いくら広い墓地があるとしても、何代、何十代後には墓で一杯になるものである。まだあと一基や二基は墓が建つという場合では、自分の代は困らないから後のものに任せよう‥‥‥先祖の墓にむやみに手を付けると祟りがある‥‥‥そう信じ、いずれは墓所が満杯になると分かっていても、なかなか手を付けられないのが墓の世界ではないだろうか。

容ある物は遅かれ速かれ、いずれは消滅する。しかし、墓は容だけのものではなく、そこには先祖の霊魂が宿っている。容は旧くとも、それぞれの霊魂が宿っている以上、古い物は捨て、新しいものを造りさえすれば良い等ということは在り得ない。
 ◆ 墓に手を付ければタタリがある‥‥‥等と言う人がいる
 
ところが、墓で一杯になった墓所はルールを守って整理しさえすれば何等問題はなく、それどころか新しく造る墓には生命力のある力強いものを求め、これを以って新たな家運が展開すると考えれば、 何百年に一度という墓所の整理事業に自らが係わり合える事を、何にも替え難い幸福と捉えるべきであろう。

しかし、何百年もの歴史の積み重なった墓所を改修するという事は、新に墓所を造るよりも困難である事は間違いない。誤った方法で改修した場合、先祖に満足して頂けない方法で改修した場合には、好ましくない現象が興るのも過去の事例に数多くある。それが、墓に手をつけるのは良くない等と言われる所以なのかもしれない。
 
ところで、墓所を整理する場合に考えられるのは、新しく造るものはどの様なものにするかという事と、現在あるものをどのように処理するかという事であろう。旧いものを先に処理し、その上で新しいものを立てる場合。或いは新に墓所を求め、何年か後に旧い墓所を整理する場合とでは、その方法も異なる。
 2. 現在の墓所を整理して改めて使用する場合
この場合、古い墓石を先ず処理しなければならないが、その前にするべき事がある。新しく墓を建立しようとする場合、その墓は家系の因縁を見極めて設計されなければならない。

家系図の作成で述べたように、
単に新しい○○家の墓を造るのではなく、過去の検討をする事によって家系の流れを把握し、家系のヒズミとなっている原因を解消する事によって、先祖の幸福と子孫の幸福が得られる墓作りとしなければならない

過去の検討というのは面倒でもあり、困難も伴なうが、この作業なくして先祖・子孫の将来は考えられないといえる。建物で言えば「基礎」、家系にとっては「根」に相当するので、将来を見据えて頑張ってほしい。

ここで、もう一度家系図の作成を振り返ってみよう。
 
(一)家系に伝わる言い伝えや記録、或いは記憶にあるものを全て書き出す
 
内縁関係や外に子がいないか、水子や幼子の話を聞いていないか、死亡の原因は何だったか、また母方の実家は誰が相続しているか等、出来るだけ詳しく書き出す。
 
(二)菩提寺にある過去帖を見せて頂き、そこに示されているものを全て書き写す
 
過去帖
過去帖
過去帖には、戒名・法名や死亡年月日、施主名、記事(続柄など)が残されている。
記事には○○妻・○○事などのように、施主との続柄や当人を表しているものがあり、これによって親子関係・夫婦関係などが判るので大変重要である。

歿年月日は古い年号をそのまま書き写す。逆算すれば今年が何回忌に当たるのかが判る。
  
(三)位牌に刻まれている内容を全て書き写す
 
戒名、歿年月日、俗名、行年、続柄などが刻まれている。場合によっては出自や戦死した場所、経歴なども刻まれている。一字一句全て書き写す。
 
(四)墓に刻まれている文字を全て書き写す
 
戒名・歿年月日・俗名・行年・施主名など、時には出身地や続柄、実家の事、戦死した場所、経歴などが刻まれている場合がある。

戸籍謄本には生年不詳と書かれていても、行年から生まれた年が判るので、漏れの無いよう書き写さねばならない。

また、過去帖や位牌にあって墓の無いものや、墓はあるが位牌や過去帖に載っていないもの等もある。時間がかかるが、全て出処をはっきりさせなければならない。

家系によっては使用人・奉公人・知人・恩人などを葬っている場合がある。殆どの場合判別するが、それらも正確に調査しなければならない。

年代の古い墓などでは刻まれている文字が判り辛いものもあるが、文字の一部でも構わないので、判る事は全て書き写す事が大切である。今日の謄本で判明するご先祖には限りがある。旧い人の場合、戒名や没年から夫婦関係を割り出す場合もあるので、少しでも多くの情報が必要となる。
 
(五)全ての墓の写真と墓所の記録を残す
 
墓の写真は、前後左右から撮ったもの、墓所全体を撮ったものを残す。この時、刻まれている文字も全て写真に残す。

これとは別に、墓所の見取り図を描き、墓所にあるもの全てを図に示す。それぞれに番号を付け、写真や記録にも同じ番号を記して記録に残す。この作業が後に役立つ事があるので、必ず整理する前にはしなくてはならない。
 
(六)先祖の戸籍謄本・除籍謄本を遡って取れる限り取り寄せる
 
戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍謄本は、全てのデータの基礎となる。これを基に調査した事項を書き足していくので、大変重要なものである。

これらの資料と聞き取り調査を基に、出来るだけ正確で漏れの無い家系図を作成する。

家系図には
戒名・法名をはじめ、俗名、生年月日、没年月日、入籍年月日、続柄、離婚・復籍・分家年月日・隠居年月日・相続年月日・婚姻年月日・行年・死亡の原因などを記入する。その上に鉛筆で本年度の回忌を記入すれば法事等の目安にもなる。
 
家系図 家系図が出来上がると、それを基に建立する墓の数や順序・位置が決定する。これによって合祀供養塔へ表示する先祖の戒名の順逆や、順縁・逆縁の区別も明らかになり、 祀り抜けや客仏といった不幸も無くなる。 碁盤の目のように、縦の関係、横の関係を明らかにする事が最も大切であり重要なことである。

家系の歴史を振り返り、先祖の祀り事を正しく容(形)に現すことは、今までと同じものを再現する(造る)のではなく、整理・改修に伴い、家系の歪をなくし、先祖と子孫の幸福が得られる形を加えることであり、これは整理・改修する者の大切な心構えである。

家系図が出来上がると水子や逆縁に用いる墓の種類、代々墓の数、合祀供養塔に祀る先祖も決定し、これで新しい墓石建立の準備が整ったことになる。

また、合祀供養塔には宝篋印塔・多宝塔・五輪塔などが使われるが、それぞれの家系にあったものを使用すればよいであろう。
 
さて、墓所を他に求める事なく現在の墓所をそのまま使用する場合には、そこに埋葬されている遺体・遺骨をどうするかが問題となる。

旧いものでは土葬になっている場合もあるので、これだけでも大変な作業に思えるが、墓地が道路などに使用されるため整理する場合を除き、墓所を移転しなくても良い場合の整理の方法を紹介しよう。

現在のようなカラト式の墓であれば、中に納められている骨壷を移すだけで済むので簡単であるが、土葬の場合はそうもいかない。

先ず火葬の後、骨壷のまま埋めてある場合には、取り出した後、サラシの袋に入れ直して墳墓或いは所定の墓の地下に埋葬する。

この時、太陽の陽が当たらないように日陰で行うか、傘などで日除けをして行うことが求められる。仏様への最低限のマナーである。

土葬の場合は掘り返して遺骨を移すのではなく、そこの土(霊土)を少しサラシに詰め、墳墓或いは所定の墓の地下に埋葬する。
 
この場合、一度掘り返して火葬にし、再び埋葬するよう指示をする寺もあるが、既に安らかに眠られている仏様を掘り起こして火で焼くことは、例え亡骸だからといっても為すべきことではない。肉体や遺骨・遺品などには先祖の霊が宿っている事を知るべきである。

過去にこのような寺の指示に従って火葬にし、埋葬し直した人の中で、その直後火に囲まれて焼け死んだ施主がいた。心配した事が起こってしまったという実例である。再びさらけ出される事を、仏様は決して望んではいないのである。

また、土葬の場合、新しく建てる墓の位置と埋められている位置とが異なる事に違和感を持つ人もいるが、土葬の場合は元々一致していない事の方が多く、敢えてこだわる必要はないと思われる。また、改修した墓所の上を歩くのが気になるという人もいるだろう。気持ちは分るが、それもこだわる必要はない。それよりも、墓所というのはそのくらい神聖な場所であるという事を知って欲しい。

しかし、それには地下で眠っている仏様への、事前のご報告とご了解があっての話である。

ルールに則り改修をし、快く新しい新居へお移り願うことが最も重要なことである。

そのためには
閉眼・開眼法要も大切だが、なによりも家系一族総意の供養が大切である。この手順を誤ると、改修中の事故や改修後の異変を呼ぶ事となる。
 ◆ 墓地を整理・改修するに当たって、家族による写経をお勧めする
 
お経は何でも良いが、普段慣れ親しんでいるお経が良いと思われる。写経用紙に書くのも良いし、指の大きさくらいの小石に一字ずつ書くのも供養になる。小さな子供が書く場合は、あまり長いのは避け、六字名号や七字のお題目を書くのも一つの方法であろう。

この方法は、戦死や海難事故、山での遭難事故などによって遺体が戻らない場合によく使われる手段であるが、家族一人一人の心のこもった写経は、他のどのようなものよりも供養になるとされている。一字一字に心が篭っているからこそ、仏様も安心し、喜んで頂けるのである。

遺骨の無い場合は遺骨に代わるものとして、また子孫の供養の証として、サラシ袋の周りに一緒に埋葬するのが一般的である。
 ◆ 古い墓石の整理
さて、最後になったが古い墓石の整理について述べよう。古い墓は何代にも亘って護り続けられてきたものであるから、一朝一夕に処理出来るものではない。お性根抜きをしたから大丈夫だと言って墓を壊したり、地中に埋めるよう指示したお坊さんが、次々と変死したという事例は一件や二件ではない。

古い墓の処理は、一定のルールにのっとり、行や供養を行った後に手を付けるべきである。

そして古い墓石を捨てるのではなく、新にステージ(無縁慰霊塔)を設け、そこに安置する方法が最も良い方法であろうと思われる。もちろん他にも方法はあるが、ここではステージを造る事の説明をしよう。

既に旧い墓石の記録は正確に記録されているが、万一数え間違いや見逃したものがあれば、その記録をきちんと残すようにする。

次に竿石の大きさを大・中・小くらいの大きさに大まかに分ける。

それぞれの幅・奥行き・高さを測ってその合計を算出する。中には自然石のものや特別大きなものもあるが、それらも全て幅・奥行き・高さを測る。
 
ステージ ステージの前方、中ほど、後方と前が低く、後ろが高くなるように、また左右が低く、中央が高くなるようにそれぞれの墓石の配置図を描く。このとき、竿石と竿石がくっつかないように配置しなければならない。少なくとも竿石を洗えるだけの手の幅くらいは余裕を持たせる。前後の距離も人が中に入れるくらいの余裕があれば一層良い。

古い墓石の台石をステージ造りに使用する。竿石の本数にもよるが、将来増える事を考えステージは大きめに造るほうがよい。
 
ステージに竿石を並べる場合に気をつけなければならない事は、安定が良いからといって竿石をセメントで固定してはならないという事である。また、欠けや傷がある場合はセメントで補修してから並べる。この場合のセメントの使用は、同じ石という材質で出来ている事から、補修に限り使用することが出来る。

ステージは一方正面から拝める形が最も良いとされている。

四方正面式の雛壇を造り、高く積み上げられているのを見る事があるが、見るからに不安定な様式は子孫に少なからず悪い影響を与えるものである。また、地震などによって崩れてしまったという例も多くあり、本来の目的と離れてしまうように思える。

ここで更に注意する事がある。例えどんな事があっても、一度手がけた事は途中で止めないという強い信念が必要である。

先祖ごとの先送りや中途での断念は、発願者にとって良い事は考えられず、悪い影響しか残さないという事である。それだけに出来上がった時の功徳は大きなものがある。

以上は墓地整理に当たっての基本的な要領だが、それぞれの家系の現状によって方法は様々であるので、専門家とよく相談の上、取り掛かるようにしてほしい。
墓地を整理すると旧い墓石が残る。これをただの石と思って野山・畑に捨てたり、埋めたりする事は絶対避けなければならない。先日も若いお坊さんが、「小さく砕いて地面に埋めておきなさい」と言われたのを耳にしたが、まだこんな事を言ってるお坊さんがいるのかと驚いたものである。古ければ古いほど、何代にもわたって手を合わせ、拝んできた墓石である。どんなに力のあるお坊さんでも、墓石に宿る魂を抜くことは出来ないし、ご先祖のご了解を得ることは不可能である。だからこそ、墓地の整理をする前には充分なお勤め、行を行いなさいと言うのである。手順を惜しんではならない。また、古い墓石のうち竿石は必ず水で洗わなければならない。あなたの前にある古い墓石は、先祖の体そのものである。今までずっと見守り続けて下さったのである。心から感謝し、愛情を持って洗ってさしあげるのが礼儀というものであろう。きれいになった竿石は形よく、ゆったりと慰霊塔に並べ、掃除のしやすいようにしなければならない。また、先祖の命日や彼岸・お盆にはお参りに行くことも大切である。新しい墓が出来ると古い墓は邪魔者扱いされがちであるが、これはとんでもないことである。古い墓にも新しい墓にも同じように愛情を注ぐことが大切である。
 3. 新に墓所を求め、何年か後に旧い墓所を整理する場合
墓所を新しく設ける場合には、新しい方をまず完成し、その後古い墓所の整理に当たるのが最も良い方法である。一見順逆が逆さまに感じるが、古い墓所の整理は非常に難しく、時間をかけて慎重に行う必要があるからである。

元の墓所を整理して新に使用する場合は、是非もなく古い墓の整理を先に行わなければならないが、本来は古い墓所の整理には時間をかけ、家系の流れを見極めながら慎重に行うものである。したがって、墓所が一杯になった場合は、新に墓所を設けることが最も良い方法である。

さて、新しい墓所に墓を建立する場合は、家系図を基に五輪塔、代々墓、地蔵尊などを建立するが、その場合は旧い墓石の下の土(霊土)を少しサラシに入れ、新に造るそれぞれの吉相墓の下に埋葬し直すと良い。この時一緒に納める写経などは前述の通りである。

しかし、旧い墓石をそのままにしておく訳にはいかない。新しく吉相墓を建立した場合は、少なくとも三年が経過した後、
家庭の状況を診て次の整理に入る。この時古い墓石の下から遺骨が出た場合は、五輪塔の下に埋葬し直す必要がある。

新に吉相墓を建立して三年が経過し、その間家庭内に大きな事故や病気などが無かった場合に限り、旧い墓石の整理に取り掛かることが出来る。古い墓石の整理の方法は前述と同様に行なうが、古い墓石の中に、歿後50年が経過しない先祖の墓がある場合、又は親・祖父母の墓についてはそのまま残す。施主から見て記憶に残っている仏様の墓は、手を付けるわけにはいかないからである。これらは、時期が来るまでそのままにしておく。

墓地の整理・改修の機会に恵まれるという事は、有難い事でもあり、大変な事でもある。専門家とよく相談の上、最後まで初心を貫くことを希望する。
墓地の整理・改修は、人生の中でも大切な一大事業である。その方法を誤ったために、かえって不幸を招いてしまったという例がたくさんある。墓地の整理・改修をお考えの方は、是非専門家の指導を仰ぐ事をお勧めする。ここで言う専門家とは、失礼ながら石屋さんでもなく、ましてお寺様でもない。墓に関しては、墓相学に精通した人の指導に勝るものはない。
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