「ない」の受肉 ボトルキープ

参加して下さった皆さま×菅沼きく枝×タカユキオバナ

「ない」の受肉 ボトルキープ

一月のボトル

一月のボトル

二月のボトル

二月のボトル

三月のボトル

三月のボトル

四月のボトル

四月のボトル

五月のボトル

五月のボトル

六月のボトル

六月のボトル

七月のボトル

七月のボトル

八月のボトル

八月のボトル

九月のボトル                         

九月のボトル

十月のボトル

十月のボトル

十一月のボトル

十一月のボトル

十二月のボトル

十二月のボトル

「ない」の受肉 ボトルキープ

参加して下さった皆さま×菅沼きく枝×タカユキオバナ

  生活空間で表現する喜びは、そこに根付いている文化や環境をふまえて働きかける面白さにあると思います。世界を形作ってきた自然と人々の営みが醸し出している何気ない仕草がとても愛しくて、好みをかさねたくなるのです。

 『「ない」の受肉 ボトルキープ』は、そのタイトルが示すとおり、月に一本ずつ酒の種類を替え、年間、計十二本のボトルをJAZZ  ORNETTE(栃木県足利市)にキープすることから展開しました。

 レコードジャケットを持った菅沼きく枝オーナーの手をモチーフにラベルを作り、ボトルに貼り替えました。レコードジャケットは菅沼のコレクションの中から菅沼自らが選んだ12アルバムです。

 他のボトルと共に、棚に置かれているこのボトルに気がつくことで、中の酒が一杯、無料でふるまわれます。酒の飲めない方にはソフトドリンクで代替えされるようになっていました。

 ギャラリー空間とは異なり、あえて見てくださいと言わない日常では、気がつくことが重要なのです。

 しばらくして、関わるきっかけになったボトルのラベルと同じデザインのハガキが客に渡されます。

 差出人のところに住所氏名を書き込み、店内に設置してあるポストに投函するよう菅沼から促されるのですが、このハガキには既に宛先が記されています。宛名はタカユキオバナがつけた架空の名前で、住所は末尾の番地だけ虚構にしてあります。

 後日、実際の郵便ポストに投函すると宛先人不明で差出人の所に戻ってきます。「何だ。居ないんだ。そんなことか」と思っているとしばらくして、その居ないはずの方からお便りが届きます。その内容は、石や木の実や鳥の羽など様々ですが、これらは居ない方になりすまして宛先付近におもむき、そこで見つけた物たちです。

 この物たちと持参した6㎝の正方形のと交換しました。鏡の中央には3㎜位の孔が空いています。こうすることで鏡に映る虚像の中央に実が出現し、この表現を象徴するように示唆しています。

 この場所を指し示すために、交換場所付近の地図をあらかじめプリントしておき「こちらにおこしのせつはおたちよりください」の朱印を押しておきました。関係のきっかけになったラベルがデザインされているハガキと共に、荷札を付け、消印が宛先付近の郵便局になるように、現地の郵便局で郵送手続きをしました。

 命がわくわくどきどきするような何か面白いことをしたくて「ない」ものになりすましたり、模擬他界を設定したりして過ごします。

 

                         平成二十六年 九月 タカユキオバナ

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