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ここでは人工蛹室の作り方や注意点を説明していきますが、その前に、そもそも、どうして人工蛹室が必要になるのかを解説致しましょう。 -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- カブトムシは成虫になる前に、蛹の期間を過ごします。 (このように幼虫から蛹を経て成虫になる虫を「完全変態」の昆虫といいます。一方、蛹を経ずに脱皮を繰り返すなどして大きくなっていく、バッタなどの虫を「不完全変態」の昆虫といいます。) 蛹になる前に、幼虫は自分の体液を使って、「ある特別な部屋」を作ります。 これを「蛹室(ようしつ)」といい、幼虫はこの部屋の中で脱皮を行い、蛹になってゆくのです。 蛹室の周囲は、土を押し固めて作られた壁になっており、種類によってその厚さはまちまちですが、おおよそ1,2センチくらいです。 蛹室の内側は非常に滑らかで、つるんとしています。 あの幼虫が、どうやってこれほど綺麗な部屋を作るのか、ちょっと不思議に感じるくらい、それは美しい構造になっています。 飼育下であっても、カブトムシの幼虫は、十分に成熟した後、必ず蛹室を作って蛹になってゆきます。 さて、もし、この蛹室をうっかり飼育者が壊してしまったら? ベテランの方ならば、蛹室作成時に起こる独特な飼育ケースの変化を、マットの表面を目にしただけで感得できます。 しかし、初心者の方は、マットの交換をするつもりで、蛹室を作っていることに気がつかず、つい壊してしまったなどということがままありがちです。 この場合でも、もしも蛹室を作ったばかりだったなら、幼虫はきっと自分でまた作り直すことができるでしょう。 (但し、もう一回、体液を放出せねばならず、少し小さめの成虫になってしまいます。) しかしながら、もうすぐ蛹になるという頃合だと、幼虫は「前蛹(ぜんよう)」という状態になっています。 この状態の幼虫は、体全体に皺がより、少し縮んだようになっていて、屈伸運動くらいしかできません。 もう以前のように、自由には動けない体になっているのです。 とても自分で蛹室を作り直すことなんて不可能です。 このときに必要になってくるのが、人工蛹室です。 また、ヘラクレスなどの大型のカブトムシの場合、容器が狭いと十分な蛹室のスペースが取れず、蛹化する際に角が曲がってしまうなどの事故が起こることがあります。 意外なことに、大きな容器を使っていても、わざわざ隅の方に蛹室をこさえてしまい、蛹室の前後が壁でさえぎられ、蛹化不全を起こすケースも多いのです。 このような場合にも活躍するのが人工蛹室なのです。 当店では、大型のカブトムシであっても、あえてプラケースの小を使い、まずは蛹室を作らせ、前蛹になった頃に取り出し、人工蛹室に移すようにしています。 国産のカブトムシは、せいぜい15センチ程度の深さがあれば事足りますし、縦長の蛹室であるため、床面積をあまり必要としません。 これに対して、ヘラクレスなどの大型カブトムシの♂は、蛹化する際に相当に広いスペースを必要とします。 彼らに満足できるだけのスペースを与えてやることは、狭いブリードルームでは、とても難しいことなのです。 そこで、あまり場所をとらず、その上、縦に積み重ねることのできる人工蛹室が、大変、重宝致します。 こういった利点を持つ人工蛹室ですが、では、人工蛹室にすれば蛹化不全は全く無いのかというと、今のところ、残念ながらその保証はありません。 勿論、結果は、人工蛹室の出来・不出来にも大きく左右されます。 しかし、それだけではなく、どうも固体による差も発生するようなのです。 即ち、同じ人工蛹室を使っても、まっすぐに角が伸びて蛹化する固体もいれば、なぜか曲がってしまう固体もおり、100%、全て綺麗に仕上がるというわけにはいかないのであります。 しかし、幼虫が作った天然蛹室の隅がケースの壁で切れていて、このままでは間違いなく蛹化不全になることが分かっている場合には、これはもう人工蛹室を使うべきであります。 ちなみに♀は、非常に狭い容器であっても、綺麗に羽化してきます。 このため、蛹室を壊してしまった場合を除き、人工蛹室は必要ない場合が殆どです。 主に♂、それも大型カブトムシの場合に、人工蛹室は大活躍の場を与えられるツールといえます。 では、次に、具体的に人工蛹室の作り方とその注意点などを解説して参りましょう。
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