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人工蛹室

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ここでは人工蛹室の作り方や注意点を説明していきますが、その前に、そもそも、どうして人工蛹室が必要になるのかを解説致しましょう。


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カブトムシは成虫になる前に、蛹の期間を過ごします。
(このように幼虫から蛹を経て成虫になる虫を「完全変態」の昆虫といいます。一方、蛹を経ずに脱皮を繰り返すなどして大きくなっていく、バッタなどの虫を「不完全変態」の昆虫といいます。)


蛹になる前に、幼虫は自分の体液を使って、「ある特別な部屋」を作ります。
これを「蛹室(ようしつ)」といい、幼虫はこの部屋の中で脱皮を行い、蛹になってゆくのです。


蛹室の周囲は、土を押し固めて作られた壁になっており、種類によってその厚さはまちまちですが、おおよそ1,2センチくらいです。
蛹室の内側は非常に滑らかで、つるんとしています。
あの幼虫が、どうやってこれほど綺麗な部屋を作るのか、ちょっと不思議に感じるくらい、それは美しい構造になっています。


飼育下であっても、カブトムシの幼虫は、十分に成熟した後、必ず蛹室を作って蛹になってゆきます。


さて、もし、この蛹室をうっかり飼育者が壊してしまったら?


ベテランの方ならば、蛹室作成時に起こる独特な飼育ケースの変化を、マットの表面を目にしただけで感得できます。
しかし、初心者の方は、マットの交換をするつもりで、蛹室を作っていることに気がつかず、つい壊してしまったなどということがままありがちです。


この場合でも、もしも蛹室を作ったばかりだったなら、幼虫はきっと自分でまた作り直すことができるでしょう。
(但し、もう一回、体液を放出せねばならず、少し小さめの成虫になってしまいます。)


しかしながら、もうすぐ蛹になるという頃合だと、幼虫は「前蛹(ぜんよう)」という状態になっています。
この状態の幼虫は、体全体に皺がより、少し縮んだようになっていて、屈伸運動くらいしかできません。
もう以前のように、自由には動けない体になっているのです。
とても自分で蛹室を作り直すことなんて不可能です。


このときに必要になってくるのが、人工蛹室です。


また、ヘラクレスなどの大型のカブトムシの場合、容器が狭いと十分な蛹室のスペースが取れず、蛹化する際に角が曲がってしまうなどの事故が起こることがあります。
意外なことに、大きな容器を使っていても、わざわざ隅の方に蛹室をこさえてしまい、蛹室の前後が壁でさえぎられ、蛹化不全を起こすケースも多いのです。


このような場合にも活躍するのが人工蛹室なのです。


当店では、大型のカブトムシであっても、あえてプラケースの小を使い、まずは蛹室を作らせ、前蛹になった頃に取り出し、人工蛹室に移すようにしています。


国産のカブトムシは、せいぜい15センチ程度の深さがあれば事足りますし、縦長の蛹室であるため、床面積をあまり必要としません。
これに対して、ヘラクレスなどの大型カブトムシの♂は、蛹化する際に相当に広いスペースを必要とします。


彼らに満足できるだけのスペースを与えてやることは、狭いブリードルームでは、とても難しいことなのです。
そこで、あまり場所をとらず、その上、縦に積み重ねることのできる人工蛹室が、大変、重宝致します。


こういった利点を持つ人工蛹室ですが、では、人工蛹室にすれば蛹化不全は全く無いのかというと、今のところ、残念ながらその保証はありません。


勿論、結果は、人工蛹室の出来・不出来にも大きく左右されます。
しかし、それだけではなく、どうも固体による差も発生するようなのです。
即ち、同じ人工蛹室を使っても、まっすぐに角が伸びて蛹化する固体もいれば、なぜか曲がってしまう固体もおり、100%、全て綺麗に仕上がるというわけにはいかないのであります。


しかし、幼虫が作った天然蛹室の隅がケースの壁で切れていて、このままでは間違いなく蛹化不全になることが分かっている場合には、これはもう人工蛹室を使うべきであります。


ちなみに♀は、非常に狭い容器であっても、綺麗に羽化してきます。
このため、蛹室を壊してしまった場合を除き、人工蛹室は必要ない場合が殆どです。
主に♂、それも大型カブトムシの場合に、人工蛹室は大活躍の場を与えられるツールといえます。


では、次に、具体的に人工蛹室の作り方とその注意点などを解説して参りましょう。


用意するもの 人工蛹室は、100円均一やお花屋さんで売っている、生け花用の「オアシス」という素材が好適です。本体と蓋を作りますので、最低2つは用意します。(蓋はオアシスを半分に切って作るので、3つ買ってくれば、2セット作成できます。)
この他、人工蛹室を収めるタッパー、カレー用のスプーン、カッターなどを用意しておきます。
タッパーも100円均一で適当なものが入手可能です。
型紙 本体と蓋の両方を削るのですが、削った穴がぴたっと一致するように、型紙を作っておくと便利です。
型紙のラインに沿って、スプーンの先で軽く線を付けていき、削るべき形をつけておきます。
掘削 丁寧に、ラインに沿ってスプーンで掘ってゆきます。このとき、お尻の方を低く、頭の方が高くなるように、ゆるく傾斜をつけます。
オアシスは大変に軟らかいため、ざくざく掘ると思わぬ失敗を招きます。 ある程度、掘ったら、次にスプーンの縁で、掻き取るように形を整えながら削ってゆくと良いでしょう。
掘削後 この程度、おおよその形に削れたらOKです。
次に指の平をやすりのように使って、削った面を綺麗に整えていきます。あまり力をこめずに、軽くこするようにしてデコボコをとってゆきます。
仕上げ 表面がこの程度、滑らかになるまで、指の平で軽くやすりがけをして仕上げます。
上蓋 幼虫や蛹が落ち着くように、上蓋を作ります。
オアシスをカッターなどで縦に半分に切断します。
あまり神経質にならず、大体半分にカットできれば良しとします。
上蓋仕上げ 綺麗にカットできない場合は、ピタっと蓋ができないため、切った面とは反対の面を本体に合わせる側とします。(=削る面)
型紙を当ててラインを引き、丁寧に削ってゆきます。加工方法は本体と同じ要領です。
加水 本体と蓋の両方とも、削りカスを洗い流すと同時に、十分に加水します。
本体格納 オアシスは水をたっぷりと吸い込みます。 ある程度、水切りした後で、タッパーに格納します。
密封 前蛹や蛹を入れ、蓋をします。このまま振動を与えない場所で管理し、時々、状態をチェックします。
当店でのデータなのですが、お尻となる方を光源の近くにし、頭を光源から遠い方になるように置く方が、蛹化不全が少ないようです。
この反対にしたときは、なぜか、人工蛹室の向きとは反対方向に蛹化して、蛹化不全となる事故が相次ぎました。
使用例 人工蛹室で羽化したヘラクレス。
このまま、完全に固まるまで蓋をして放置します。(少なくとも1週間)
尚、前蛹から入れた場合は、蛹化した際に脱ぎ捨てた幼虫の殻は取り去ります。また、蛹化時に排出された水分が多かった場合は、改めて水切りをしてから蛹を戻します。(これは蛹が十分に固まってからやります。)
赤タイプ オアシスには、赤いタイプのものもあります。こちらは素材が固く、削り難いのですが、その分、頑丈で、大型カブトムシには、こちらのタイプの方がより好適です。また、水分を含み難いドライタイプであるため、加水する際にはよく水気を刷り込んでやる必要があります。
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