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種類別攻略法 |
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Chlorocala africana ssp. mutica (エチオピア)
採れる人は、徹底的にとりまくり、「こんなの簡単だよ。」と嘯かれてしまうキヌホソカナブン。 しかし、その一方で優れたマニアやプロが大苦戦を強いられることも・・・ それは、あるポイントをクリアしているかどうかにかかっているのです! |
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実は当店も、本種のブリードは、毎度、低空飛行でした。
幼虫が採れても一桁台・・・なんとか次世代に繋げる程度の量しか得られず、とても販売に出せるような数が確保できない日々が続きました。
たくさん幼虫が採れている人に聞いて、そっくり同じやり方を真似たつもりでも、やはり産んでくれない。
そうこうするうちに、親虫はぽっくり死んでしまい、手元には小数の次世代が残るのみ・・・
全く幼虫が採れず仕舞いの人もいることを思えば、なんとか少量でも採れているだけマシかと自分を慰めつつ、何が原因なのかずっと悩んでおりました。
以下、その苦悩の過程と成功への道筋を縷々、述べて参りますので、暫しお付き合い下さい。
最初にセットしたときには、アフリカ産のカナブンだということで、標準的なアフリカ仕様で行いました。
真っ黒に完熟したカブトマット。
水分は少し飛ばし気味。
足場になる割り木を敷き詰める。
温度は25℃前後。
この条件でアフリカ産のカナブンは大概がいけるはずなのです。
いかがでしょう? これで正解だとは思いませんか?
ところが・・・結果は前述の通り、悲惨なこと、この上なしだったのです。
何が何でも採ってやる!
採れないとなると、急に意地になります。
まして、たくさん採っている人もいるだけに・・・
が、現実には、実験しようにもあまりに手持ちの幼虫が少なく、がけっぷちに追い詰められた状態で、まさに藁をも掴む心境でした。
そこで、ここは素直に、沢山採れている方にセットの様子を詳しく伺うことにしました。
その結果、どうやらマットは水分調整せず、なんと、そのままの物を使っていることが判明。
アフリカ産だから・・・という先入観が、よもや間違いだったとは。
これは大変に意外なことでした。
それならばと、今度はカブトムシのブリードセットと同等の水分量、即ち「握りしめると形が残る状態」に調整してみました。
結果、少し状況は改善したのですが、1♀から50も60も採れるという猛者には遠く及ばず、せいぜいやっと2桁台といったところ。
こうなると、マットの質を疑う以外には無いのですが、実は、採れている方と同じメーカーのマットをわざわざ購入して使っていましたので、他に原因がどうしても思い浮かばず・・・
自信喪失、木っ端ミジンコ、お手上げ状態です。
しかし、まだタオルを投げるのは早すぎます。
こういうときには、今までの経験上、幾つか手順がございまして、その一つ一つをやっていくうちに、どれかがビンゴ!となるはずなのです。
長くなりますので、その手筈の説明は別の機会に譲り、ここでは省略します。
結果としては、またしても「完敗」でした。
まだ何か絶対的な要素が欠けている。
それは、きっと今までにやっていない何か、或いは無視してきた何かのはず。
それは一体、なんなのか・・・
ああでもない、こうでもないと悩んでいるうちに、ある天啓に出会いました。
まさに窮すれば通ずです。
いろいろなセットに敷き詰めていた割り木を回収して、まとめておいた容器の中に、あるとき、繭を2つ発見しました。その繭がどの種類のものなのか、その時点では、勿論、分からなかったのですが、羽化して出てきたものは、なんとキヌホソカナブンだったのです。
この容器にはマットが全く入っていません。
後にマットに敷き詰めて使うため、割り木を乾燥させておく目的のものだからです。 ということは、このキヌホソは幼虫時代に割り木の中に潜んでいたということになるのです。
もう賢明な皆様には分かりましたね?
このことが指し示している事実はただ一つ。
本種の幼虫は、よく熟したマットよりも、むしろ、割り木のような木質成分が生き残っているものを好むということなのです!
即ち、醗酵状態の若いマットに幼虫は適合するということであり、産卵条件についても同様に考えられるのです。
そこで、早速、醗酵の若い、茶色程度のマットを手に入れてブリーディングしてみました。
結果は・・・大成功です!
それまでの苦労が嘘のように、あっさり、タコトレ状態になったのです。
(幼虫が湧いている様子をご覧下さい。)
黒く完熟したマットを使うことは、全くの見当違いで、その上、更に腐食を進めるべく、腐葉土を導入したのは、間違いの方向を更に酷いものにしていたわけで・・・この手の飼育に、常識と思われることの反対の行為こそが実は正解だったという、甚だショッキングな結末となったのでした。
ちなみに、本種をたくさん採っていた人と同じメーカーのマットを使っていたのに採れなかったという謎ですが・・・
今から思うと、そのメーカーのマットは、生産ロットによる品質のばらつきが非常に大きく、たまたま、その方は醗酵の浅いものを使い、私は完熟したものを手に入れたためではないかと思われます。
以下、本種のブリーディング・ポイントをまとめておきます。
・マットは醗酵の浅いものを使う
・産卵時、マットの水分は大目を好む
・足場になる割り木を敷き詰める(こんな感じです。)
・温度は25度前後で管理する
これをベースに、あなたもぜひ、キヌホソカナブンの累代飼育にチャレンジしてみて下さいね! |
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