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国産カブトムシの飼育方法

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国産カブトムシの飼育はいたって簡単といわれております。実際、簡単で、コツさえ分かれば子供にだって十分に累代可能です。しかし、国産カブトといえども、深く探求すると実に面白く、また、国産カブトを80cmオーバーの巨大なものに育て上げることは、そうそうできるものではありません。
全てのカブト飼育の基本にありがながら、国産カブトには、まだまだ探求の余地が残されているのです。国産カブトムシをきちんと飼育できるだけのノウハウを持つということは、即ち、外国産カブトムシを上手に飼育する為の必要最低条件といっても過言ではないでしょう。
「カブトムシの飼育は国産に始まり、国産に終わる。」
私はあえて、こう提言したいと思います。


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カブトムシの一生  成虫の選び方  成虫の飼育  幼虫の飼育  用語の解説

1.カブトムシの一生

実際には年によって気温などの環境条件が違うため、その月に書いてあることが、少し前後する可能性があります。(ほぼ、下記の通りですが) まずは、カブトムシって、こんなサイクルで生きているんだ、という点をおさえておいてください。

生態ステージ 解説
7月 成虫・卵・幼虫 野外で成虫を採取できる季節です。早く羽化したメスは、産卵を終えて、そろそろ(星)になるものが出てきます。この季節は成虫だけでなく、卵・幼虫が重なって生きています。
8月 成虫・卵・幼虫 引き続き、野外で成虫を採取できる季節です。幼虫はどんどん餌を食べて2令・3令になっていきます。
9月 成虫・卵・幼虫 そろそろ成虫は寿命を迎えるものが増えてきます。幼虫は初令〜3令までが揃います。
10月 (成虫)・(卵)・幼虫 野外では殆どの成虫が★になっています。飼育している成虫も続々と★になっていきます。夏の暑さが一段落し、すごしやすい季節です。幼虫は加速をつけて餌を食べ、みるみる糞に変えて大きくなっていきます。
11月 (成虫)・(卵)・幼虫 野外のみならず飼育している成虫も、ほぼ★になっています。稀に飼育条件が良いと生き延びている成虫もいますが、それもせいぜい、月末くらいまでです。殆どの幼虫が3令になっている頃です。
12月 幼虫 朝晩の寒さが身に沁みる季節です。幼虫の餌食いペースがかなり落ちてきます。
1月 幼虫 冬眠に近い状態になります。殆ど、餌も食べません。
2月 幼虫 冬眠に近い状態のままです。
3月 幼虫 少しずつ、暖かさが戻ってきます。それと同時に、幼虫もじりじりと餌食いを再開し始めますが、秋ほどには食べません。体の大きさも、ここからはあまり変わりません。
4月 幼虫 桜の季節です。餌食いのペースは相変わらずゆっくりです。体が黄ばんできますが、それは成熟の証しです。
5月 幼虫・蛹・成虫 体色が黄色〜薄茶色になります。やがて、蛹室を作り、その中で前蛹、蛹へと変化します。蛹になってから約2週間で羽化し、成虫になります。羽化後、2週間程度、蛹室でじっとして体が完全に固まるのを待っています。条件が整わない場合、幼虫のまま5月を終えるものもいます。
6月 幼虫・蛹・成虫 そろそろ地上に這い出してくる成虫が見られます。飼育下では、夜、部屋を消灯すると、ごそごそと這い出し、狭いケースの中でも飛び立とうとします。

2.成虫の選び方

・頭や足がフラフラしていない元気な個体であること

・(出来るだけ)符節が取れていない固体であること

・♂は、角の形や体とのバランスがいいもの。 これは、好みです。
 野外品の場合、既に♀が妊娠済みの可能性が高いです。
 せっかく選んだ♂の形状を遺伝する子孫が産まれるとは限りません。

・♀は、持ったときに重いもの (産卵すると軽くなっていきます。)


3.成虫の飼育

容器と飼える頭数 長生きさせるには、広いスペースで小数を飼うということは、どんな生き物にも共通することでしょうが、なかなかそうもゆきません。
プラケースの大に1ペアくらいが適当です。複数ペアを飼いたい場合、プラケースの大にまとめて入れると弱い個体が餌にありつけないばかりか、最悪の場合、♂同士の喧嘩の末、★になってしまいます。
後で詳しく述べますが、たくさん産卵させたい場合には、♀1頭のみを入れ、♂は別の容器(鑑賞目的ならば大きな容器が適していますが、通常はプラケースの小で十分です)で飼育しますが、一般的には♂♀一緒で構いません。
尚、水槽で飼育する場合は、60センチ水槽であれば1♂2♀など、多頭飼育も可能になりますが、♀が産卵する際に水槽のつなぎ目となっているゴムを引き剥がし、ボロボロにしてしまいますので、あまりお奨めは出来ません。
産卵用のセット ♂♀一緒に入れておくと、元気な個体はまちがいなく交尾します。交尾後、♀は地下に潜って産卵します。この習性ゆえに、産卵させたい場合には、容器にマットを15センチくらいの高さまで入れておく必要があります。マットの種類には、さほど、うるさくないのですが、よく朽ちた広葉樹をベースにしたものが最適です。もとより針葉樹の朽木は使用してはいけません。ヒノキチオールなど、針葉樹から抽出される成分は殺虫効果があり、これが残存しているものは論外です。
マットは握ったときに形が崩れない程度の湿り気にします。水がじゅわっと染み出るようだと、水分が多過ぎです。ダニの大量発生を招きかねませんので、ご注意下さい。
止まり木を入れてやるとひっくり返ったときの足がかりになりますが、止まり木は水に1日つけたりレンジでチンして、殺虫してから入れるようにします。
本来、活発に活動する夜間にも、♀の姿が見えなくなったら、産卵している可能性が大です。他、産卵中は、容器からギシギシ、音がすることもあります。
日常の世話 餌はゼリーが最適です。いろいろな種類のものが出ていますが、産卵をひかえたペアにはタンパク質入りのものが有効と言われています。餌皿にぴったり入るので美観もなかなかと思います。
スイカやメロンの皮などは水分が多すぎ、お腹を壊すので控えましょう。果物ではバナナがコストパフォーマンスもよく、餌食いも最高ですが、夏場は腐りやすく臭いますので、小さ目に切り分け、こまめに取りかえる必要があります。尚、餌は食べきったら補給し、切らさないように注意します。
ある程度の湿気が必要になります。マットの表面が乾いてきたら、霧吹きで湿らせてやります。夏は一日一回程度、霧吹きが必要になるはずです。
高温には弱いので、できるだけ涼しい環境で飼います。といってもクーラーが入っている部屋に置いておく必要は有りません。風通しが良く、直射日光が当たらない場所、出来れば30℃を超えないところに置きます。
それから、あまり触り過ぎないようにしましょう。無用のストレスを与えすぎると早死にの原因になります。
たくさん産卵
させたい場合
1頭の♀で平均、40個くらいは産卵します。 但し、普通に飼育していると、恐らく10〜20頭くらいの幼虫しか取れないでしょう。 これは♀が産卵中に卵を踏み潰してしまうからだと言われています。 そこで、よりたくさんの幼虫を採りたい場合には、以下のようにします。
まず、交尾を確認した後、♀を産卵に集中させるために♂を取りだし、♀のみにします。その後、産卵しているようであれば、別の容器にマットをセットし、♀を移すか、容器をひっくり返して採卵します。
前者の場合、幾つもの容器を必要とするので場所塞ぎになりますが、より確実に幼虫を取りたい場合には有効です。後者は慣れないと卵を潰してしまう危険性がありますが、場所も余り取らず、孵化を観察できるなどのメリットがあります。採卵の詳しいやり方は後述を参照して下さい。
採卵の方法 大きめの衣装ケースか、新聞紙にプラケースのマットを広げて、丁寧に卵を探してゆきます。卵を見つけたら、直接、触らないでティースプーンなどで拾い出し、予めマットを詰めておいたタッパーなど、蓋のできる容器に入れてゆきます。
卵のセットの仕方はいろいろな方法がありますが、マットの表面に1センチくらいの穴を開け、そこに落とし込んでやり、上からかるくマットをかけて埋めてやるのが一般的なようです。尚、このとき、卵と卵の間隔を3センチくらい、あけてやると、共食い防止に繋がります。
最後に蓋を閉めて乾燥を防ぎますが、空気の流通が閉ざされないよう、小さな穴を開けておきます。(或いは小さな穴を開けたビニールを被せ、輪ゴムで留める方法でもOKです)
表面が乾いてきたら、霧吹きで湿らせてやります。 くれぐれも湿らせ過ぎないように注意します。

4.幼虫の飼育

初令〜3令 親虫が★になったら、マットをケースのふち近くまで足してやります。この頃にはケースの側面や下に幼虫の姿が見える事と思います。採卵した場合は、プリンカップなどの小さい容器にマットを詰めて、1頭ずつ育てるか、プラケースに戻して多頭飼育するかします。多頭飼育する場合、3令幼虫になったら、プラケースの大では多くても1ケース当たり7頭までとします。それ以上に幼虫が居る場合は、ケースを分けてやる必要があります。狭い環境で育てると小さい成虫になったり、共食いの原因になりますのでご注意下さい。
マットの表面が乾いてきたら、霧吹きをしてやるなど、湿り気を保つようにします。もしもマットの中の方まで乾いてしまっているようであれば、一度、マットを全部取り出し、水分調整した上で戻してやります。 ヤカンで水を注いでしまうズボラ方式もありますが、一歩間違うと底に水分がたまりすぎ、マットの腐敗を招き、最悪の場合、幼虫が☆になりますので、あまりお奨めできません。
夏が過ぎ、秋になると殆どが3令になっており、激しくマットを食べ出しますので、あっという間に糞だらけになってしまいます。マットの表面が糞だらけになってきたら、交換する時期です。フルイで糞とマットをより分け、足りない分を新しいマットで足してやります。腐葉土を餌として代用できますが、その場合は殺虫剤が入っていないものを選び、天日に干したりレンジでチンして殺虫の上、使用します。ちなみに腐葉土はあまり栄養がなく、市販のカブトマットを利用するのが一番手っ取り早い方法です。
冬になると餌は殆ど食べなくなりますので、マットの交換は不要になります。 朝晩の気温の差が激しくない、最低気温が10℃くらいの場所に置いてやります。 尤も、相当に冷え込む場所でも、そうそう★にはなりませんが・・・反対に、寒いだろうからといって、暖かい場所(20℃前後)に置いておくと、なかなか蛹になれません。ちゃんと四季を感じて体を変身させているので、少々、寒い思いをさせてやる必要があります。
春になると、また、少しずつ餌を食べ始めます。が、この時期の餌の交換は、ケースの下半分はそのままにし、上半分だけを新しいマットに交換します。これは、蛹室を作る際に、自らの糞が必要になり、それが無いとうまく蛹室を作ることが出来ないためです。
前蛹・蛹 5月に入ったら、蛹の準備になります。この時期は、容器に無用の振動を与えないようにします。蛹化不全(蛹の角が曲がってしまうなど)の原因になります。 生存を確認したいところですが、ひたすら信じて待つことが求められます。 マットの表面が乾いてきたら、時折、霧吹きをします。どうしても生存を確認したい場合には、容器の底を下から覗くと、幼虫の体の一部が少し確認できるはずです。
容器を暗い場所に置いておくと、うまくすると、容器の壁を蛹室の壁に見たててこさえます。 前蛹になれば、もう活発に動けませんので、観察に適した場所に置き、蛹や羽化の様子を楽しむ事が出来ます。
蛹になってから2週間・羽化してから2週間は蛹室から出てきませんので、成虫になって姿をあらわすまで、都合1ヶ月はかかります。
6月に入ると、真夜中に蛹室を破って地上に成虫が姿を現し始めます。それまでは、掘り返さずに我慢しましょう。特に蛹から羽化したばかりの時は、体が固まっておらず、振動を与えると羽化不全(羽根に皺が寄ってしまい、綺麗に閉じないなど)になったり、死亡する危険性がありますので注意が必要です。
成虫になり、餌を食べ始めたら、また、交尾して次の世代を残す準備に入ります。

5.用語の解説

文中、何気なく使ってしまっている言葉の中には、きっと、はじめて飼われる方にとって何の事やら?というものがあることと思います。 できるだけそういったものを拾い集めてみました。 他にも分からない言葉があったら、ご連絡ください。

サイトでも、「★になる」とか「☆にしちゃった」と書いたものを見かけますが、「星になる」或いは「星にしちゃった」というように使います。要するに死んでしまったということを婉曲に表現しているだけです。 尚、熱帯魚を飼育しているときには、こういう場合、「おちる」とか「おとした」と表現する事が多かったです。
2令・3令 カブトムシは幼虫時代に2回、脱皮して大きくなっていきます。 卵から孵ったばかりの幼虫を初令幼虫といい、1回目の脱皮をした状態のものを2令、2回目の脱皮をしたものを3令といいます。(卵から孵ることを孵化といいます) 尚、終令幼虫という表現がありますが、これは成熟して体色が黄色くなった3令幼虫を指していうことが多いようです。
蛹室 蛹になる準備として、幼虫は部屋を作ります。これを蛹室といいます。部屋の中は、唾液と糞で固めたツルツルの壁で覆われています。 国産の場合、この蛹室は縦方向に長い空間になるように作ります。 ♂は角が長い分、♀よりも縦に長い蛹室をこさえます。 尚、外国のカブトムシは、この蛹室が水平に近い角度で長い部屋になっているものがいたり、30度くらいの角度に傾いた部屋を作ったりします。 角が長い種類は水平に近い角度で細長く部屋を作るようです。
前蛹 蛹になる直前になると、幼虫の体色は濃い茶色に変化し、幾分、体も縮んできます。 そして、腹筋運動しかできない体になります。 この状態を前蛹(ぜんよう)といい、もう、自力でマットに潜ることは出来ません。前蛹になると、蛹になるのも間近です。
羽化 蛹の皮を脱いで成虫が出てくることを羽化(うか)といいます。
符節 「ふせつ」と読みます。足の構造を見てみると、体に近い部分は太く堅く、その先はワイヤーロープのように細く長くなっており、先端は鉤爪になっています。このワイヤーロープのような細い足の部分を符節といいます。 ショップなどで「B品」として販売する場合は、この符節が一部欠損していることが多いようです。
止まり木 ショップで販売しているクワガタ用の産卵木や公園などに落ちている太目の木の枝でOKです。セットに入れる前に殺虫しておかないと、トビムシやダニが発生する原因になりますので注意が必要です。具体的にはレンジでチンするのが簡便です。
プリンカップ 本名はボンケース、或いは丸カップと呼ばれているもので、スーパーでよく、お惣菜などを入れて売っているプラスティック製のペラペラの容器です。蓋が出来るので保湿性に優れています。最近ではいろいろなサイズのものがショップでも手に入るようになってきました。
 
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