1.生体の入手 |
ワイルドで購入するか、ブリード新成虫を入手するか、はたまた幼虫を手に入れるか。 それぞれに利点があり、欠点があります。 ここでは逐次、述べませんが、各自の力量に応じ、財布と相談してご検討ください。 いずれにせよ、カブトムシの飼育方法で述べたことと同様に、成虫であれば元気な固体を選ぶことが大事です。ハナムグリは旬の時期が短いものが多くて、それを逃すと生きてはいても全く産まないこともあり、累代をテーマに飼育を行う場合、致命的になってしまいます。 値段の高低に関わらず、信頼できるショップから購入されることを強くお勧めします。 |
2.成虫の管理 |
成虫をブリードセットに投入しない際(羽化後の成熟待ちの期間や雌雄別々に管理するときなど)、丸カップにティッシュを敷き、餌のゼリーを入れて管理しています。 このとき、ティッシュは濡らさず、そのままのものを入れます。(200ccのカップならティッシュは1枚) 湿気は、ゼリーのそれと虫のおしっこで十分で、それ以上に霧吹きなどで湿気を与えることは、却って虫の寿命を縮めてしまいます。 ティッシュは汚れてきたら、まめに交換します。(最低でも一日一回) 当店では、この方式で維持するようになってから、プラケースにマットを敷いて管理するやり方に比べ、随分と長生きし、符節の傷みも格段に少なくなりました。 また、死んだ後に標本にする場合にも、この方式で管理すれば、万が一、符節が取れてしまっても、マットに紛れてしまうこともなく便利です。 ちなみに、全く逆の発想で、ティッシュを適度に湿らせたカップに♀を投入し、産卵させてしまうことが出来る種もいます。(ワリックツノハナムグリなど) ブリードスペースを最小限にできるメリットはありますが、卵を回収してマットに埋め込み、孵化に備えることが必要となり、作業効率としては一長一短で、これは裏技の類といえます。 |
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プラスチックの丸にティッシュを敷いて成虫を管理している様子。ゼリーを一つずつ入れています。 |
3.産卵セット |
@マット ハナムグリは基本的にマット産みです。 使用するマットは、アフリカ産の場合、(一部、例外はあるものの)殆どの種は、少し水分を飛ばした状態のものに好んで産卵します。(東南アジア産の場合は、殆どがカブトムシの産卵セットと同じくらいの水分量で産卵します。) この水分量の表現は非常に難しいのですが、握ったときに固まらず、さらさらしていますが、それでいて掌にじっとりと水分が残る程度の湿り気といったところです。 マットの種類はあまり選り好みしないものが多いのですが、黒腐れしたカブトマットをベースにしたものだと、安定した産卵成績が期待でき、当店ではこれを愛用しています。(これも例外はあります。) 具体的には、カブト幼虫が食い残したマットを篩で糞を取り除き、得られた微粒子状態のマットをベースにするのですが、これは、幼虫がマットを食べているうちに、水分が抜けてきて、マット交換をする頃には、ハナムグリの使用に耐える乾燥した状態になっているからです。 尚、水分が抜けすぎているときには、加水するのではなく、新しいマットを混ぜて水分調整しています。(加水すると、菌糸が活発になり、産卵に適さない状態に陥ることがあります。) また、微粒子マットの場合、目が詰まり易く、時間の経過とともに水分が抜けて締まってしまったり、季節によっては一気に菌糸が回り込むことがあるため、当店では産卵セットには、極力、荒めの粒子を混在させることを推奨しています。 昨今では、市販のハナムグリ専用マットが販売されており、それを使うのも簡便な手です。全てのマットをテストしたわけではないので、これがベストという断言はできませんが、自分にとって相性の良いマットを探すことがブリード成功への第一歩です。 この部分は産卵成績に大きく関わるところですので、是非、いろいろと研究してみてください。
マットの詰め方は、ふんわりと入れます。 基本的にばら撒き産卵であるため、カブトのように底を固める必要はありません。(例外:ゴライアスは底を固めたセットの方が成績が良いです。) |
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画像は、カブトマットの微粒子タイプをベースに腐葉土を適量混ぜ込み、湿度を調整したハナムグリ専用マットです。腐葉土を混ぜ込むことで、時間の経過とともに起こるマットの締まりを防ぎ、まろやかな作りにしています。 但し、マットについては、いろいろ試行錯誤して、それぞれの環境にあったものを使うようにしてください。こればかりは、経験上、どうしても、相性というものがあると思っています。 |
A容器とセット方法 容器は生体の大きさと飼育する数に合わせて選択してください。 キヌホソカナブンのような小さいものを1ペアでブリードする場合には、プラケースの小で十分ですが、中型のもの以上はプラケースの中か大を、ゴライアスなど大型のものはジャンボサイズを使うようにします。(小さい固体でも複数ペアを入れる場合には、一つ大きなサイズの容器を選択します。) 但し、これはあくまでも原則です。 小さい容器であっても、中型クラスのハナムグリならば、十二分に産卵・孵化させられることが多々ありますし、その反対に、キモンツノホソカナブンのような小型種でも、小プラケースだとあまり産まず、それなりに産ませるには、プラケースの大を必要とする場合があるからです。 (当店だけかな・・・?) また、極小クラスのハナムグリならば、200ccの丸カップにマットを敷いてゼリーを放り込んでおく簡便なセットでも、産卵・孵化させることが可能です。 温度は23℃〜26℃程度で管理します。 マット表面には足掛かりとなる材を入れます。 これが無いと、どうも交尾しにくいようであまり採れない場合が多いです。 セット後は、蓋との間には新聞紙や広告をはさみます。 これは湿度がうまく逃げて行き、マットの上は乾燥、下に向かって湿り気があるというグラデーションがついてくれるため、好みの湿度で産卵できることと、マットを使うため、どうしてもコバエが発生することがあり、このための対策になるためです。 尚、たとえコバエが発生したセットの蓋を開ける場合であっても、絶対に外では開けないで下さい。 あっという間にハナムグリが飛び立ち、逃げ出してしまうからです。 室内で蓋を開けるようにしますが、コバエの脱走を防止しつつ、これを行うには掃除機が有効です。 具体的には、まず、挟み込んだ紙がはがれないようにそっと蓋を外し、容器の端部分の紙を少し開きながら掃除機で、ガンガン、コバエを吸い取り、その区画のコバエがいなくなってきたら、別の端を持ち上げて吸い取ることを繰り返します。 こうすることで、かなりの量のコバエを駆除できますが、この作業は相当に慣れが必要です。 くれぐれも大事な生体を吸い込まないように気をつけて作業してください。 |
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キヌホソは小さいのですが、複数ペアでのブリードのため、スペース的に広く取れるプラケの大を使っています。 転倒防止の材を敷き詰めています。 |
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紙をはさみこみます。通気性があり、しかも、適度に湿り気を保ってくれます。紙は新聞や広告紙で十分です。 |
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その上から蓋で紙を押さえます。このとき、ケースのふちから少し紙が出るようにします。コバエが発生した際、隙間があると逃げ出してきます。 また、飼育成虫が暴れた際のマットの飛散防止にもなります。 |
Bペアリング
産卵セットには、雌雄を一緒に入れておきます。(小型〜中型種) ハナムグリの♀は、♂が不在になると、途端に種切れを起こすようで、極端に産まなくなったり、無精卵に切り替わることが多いことで知られています。 カブトやクワガタと異なり、ハナムグリがしょっちゅう、交尾しているのは、こういった理由によるものと思われます。 但し、産卵数や孵化率は、どうも♀の当たり外れにかなり左右されるように思います。 これはワイルド・新成虫を問わずです。(旬を過ぎた♀の場合、新成虫でも当然、産卵数は期待できません。) 新成虫の場合、後食を開始したら♂♀一緒にしても大丈夫ですが、交尾すれども産まないということもままあります。 これは恐らく性成熟が未熟だからだと思われます。 トルクアータなどの大型ハナムグリの場合、後食開始後、1,2週間は、少なくとも単独飼育して十分に餌を食べさせ、その後にセットした方が好成績を期待できます。このような大型種は、交尾を確認したら♂だけを取り出して別管理しましょう。定期的に(2〜3週間置き)交尾させる必要がありますが、♂と同居させない方が♀が落ち着いて産卵できるようです。 小型種でも、複数ペアを一つのセットに入れる場合は、♂同士の激しい喧嘩が巻き起こる種もあり、警戒が必要です。(例えばシロヘリは意外と♂同士で争います。) |
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画像はタイワンツノハナムグリのペアです。1セットに1ペアが理想です。♂を複数、入れる場合、種によっては、激しい争いを起こしてしまい、一晩でボロボロになることがあり、注意が必要です。 |
4.割り出し |
成熟した成虫をセットに投入後、2週間〜4週間が経過したら、セットを暴いてみます。 大型種の場合、卵で回収することも可能ですが、中型以下のものについては、幼虫で回収する方が効率が良いように思います。これは卵が大変に小さく、見つけ難いためです。 一つの目安としては、容器内に幼虫の姿が確認できたら、暴いてみると良いでしょう。 また、親虫が死んだ後も、2週間以上はそのままにしておき、孵化した幼虫を取りこぼさないようにします。
4週間以上が経過して、もしも卵や幼虫が確認できない場合には、思い切って違う種類のマットに交換するとか水分量を調整するといった変更を加えてみる必要があります。各人の飼育環境に合わせて、適宜、アレンジすることが重要です。
幼虫の回収は、まず、セット表面に置いた材や成虫を取り除き、マットを全て衣装ケースなどに移して、少しずつマットをほぐしながら探すと効率良く作業できます。
回収した幼虫は、一頭ずつ丸カップなどの容器に入れます。 種によっては複数飼育が可能なものも多々おり、絶対に個別管理が必要というわけではありません。 しかし、中には共食いするものもおり、そういった種については、面倒でも一頭ずつの管理が必要となります。 尚、どの種が共食いするかについては、経験上、幾つかは断言できますが、分からない種については賭けにも類することになりますので、当店では、余裕があるときには、できるだけ個別管理するようにしております。
丸カップには、それまで幼虫が入っていたマットを少し、入れるようにしています。 その上に、予め水分量を調整して作成しておいた新しいマットをやわらかく足してやりますが、別段、新しいマットでなく、水分量が適正であれば、産卵セット用に使用しているマットだけを使っても構いません。 ただ、この場合、見逃した卵が混在していることがあり、後日、カップ内に複数の幼虫がいることもあります。
孵化したてのあまりに小さい幼虫は回収せず、そのまま戻し、もう少し成長するまで待つようにします。 ある程度にまで成長した幼虫は、多少の環境に変化にも対応できますが、孵化して間もない幼虫は、環境の変化に弱いものもおり、あっさり死ぬことがあるからです。 特に、カップという閉鎖空間にマットを移すと、条件によっては、どうしても水分や質的に変化が起こることがあり、小さいうちはこれに耐え切れないことがままあります。
割り出し後、再セットしますが、このとき、マットの水分がかなり飛んでいたり、幼虫に使って量が減っているときには、新しいマットを混ぜて湿度と量を調整します。 |
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ケース側面に幼虫がいるのが分かります。こうなったらセットを暴いて、幼虫を回収しましょう。 |
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衣装ケースにセットの中身をぶちまけて、端から少しずつマットをより分けて幼虫を探してゆきます。 |
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200ccの丸カップに回収した幼虫を1頭ずつ入れました。この後、カップ一杯にマットを入れますが、それまで幼虫が入っていたマットを混ぜてあげると事故が少ないです。 |
5.幼虫の管理 |
中型クラス以下のハナムグリの場合、羽化まで200ccの丸カップで管理できるものが殆どで、大変、省スペースです。 糞でいっぱいになったら、マット交換をします。 大型のハナムグリだと、3令になると、最低でも600ccクラスの容器を必要とします。
種類によっては、ドッグフードなどのサプリメントを与えて育てた方が大きくなるものがいます。 (ゴライアス、メキロリーナ、ケロリーナ、ホシボシツノカナブン、ハリシサスマタカナブン、etc) サプリメントの与え方は、孵化後数日が経過したら、一粒だけマットの表面に置き、カビが出てもそのまま放置します。(カビも食べてしまいます) 以降、2週間に1回程度、与えますが、大きくなるにつれ、食べる速度が増してきますので、無くなり具合を見ながら、与える頻度と量を徐々に増やすようにしていきます。 ドッグフードを与えるとダニが発生するという弊害もありますが、ある程度は仕方がないと思っています。 適度に乾燥が進んだマットで管理し、適量を与えて食べ残しをできるだけ少なくすることで、当店では殆どダニが出ないようにしています。 ちなみにこうしたサプリメントを与えなくても、ちゃんと羽化はします。 しかし、やはり肉食性が強い種にマットのみを与えて育てた固体は、定期的にドッグフードを与えた固体に比べて大きさは一回り以上、小さくなります。(注:最近ではマットの改良が進み、こうしたサプリメント無しでも大きくなる高栄養のものが出始めました。但し、その分、ダニの発生量も非常に多く、一長一短です。)
また、サプリメントとしてはドッグフードだけでなく、ゼリーやアロワナフードなども利用可能ですが、ダニの発生や食い残しの後始末を考えると、固形の乾燥飼料が便利なように思います。
東南アジア産のものはさほどでもないのですが、アフリカ産・オーストラリア産のハナムグリの幼虫は、脱走の名人が多い点にご注意ください。 実に器用にカップの蓋をこじ開けて逃げ出しますが、原因は大抵の場合、次の通りです。 ・カップが糞だらけになっていて食べるものがない ・サプリメントが切れている ・マット交換直後で、新しいマットが気に食わない ・繭を作る前のワンダリング(=徘徊)
脱走防止策としては、3令になったらきっちりと蓋ができる容器で管理することです。 100円均一などで販売しているプラスチック製の円筒状の容器で十分です。 空気穴を蓋に開ける必要があるかどうかはバケツに水を入れて蓋をした状態で振ってみて、水が浸入しているかどうかで判断します。水が入る隙間があれば空気穴は不要です。
幼虫管理に使用するマットは、特に若令時には菌糸の回り込みが致命的になるので注意が必要です。どうしても季節や飼育環境によっては、カップに菌糸が回ってしまうのですが、こうなるとマットがカチンコチンになってしまい、放置すると成長できないか死亡することになります。 この菌糸は意外に強いので、こうなってしまったカップは廃棄し、新しいカップでやり直します。 尚、いろいろなマットを試しましたが、菌糸が全く回らないという製品は一つもありませんでした。これはマットがそれだけ生きているという証拠でもあるので、今では諦めております。 |
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丸カップを使った幼虫管理の様子。このカップは簡便だが、幼虫が大きくなってくると、往々にして蓋を外して脱走されることがあり、注意が必要です。 |
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この容器は100円均一で購入したもので、蓋に穴を開けずに使用でき、当店で愛用しています。トルクアータ程度の大きさのものならば、この容器で最後まで幼虫飼育できます。 |
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脱走防止には、もう一つ、プラケに入れてしまうのも手です。脱走してもこの中での話になりますので。 |
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菌糸が回ってしまったカップ。こうなるとよほどの強健種の3令幼虫でない限り、まず生存は覚束きません。また、このままの状態で繭を作った場合、生存率はかなり落ちてしまいます。 |
6.繭の管理 |
カップの表面を観察すると、マットがさらさらと移動せず、何か凝り固まったような感じになっていたら、繭を形成している可能性が大です。 プラケースで多頭飼育している場合は、ケース側面やマットの上に繭が確認できると思います。 指でそっとマットの中を探ってみると、固い塊に触れることができると思います。 この塊が繭で、ハナムグリは蛹化・羽化のステージを、この土繭の中で過ごします。 繭は、最初、タールのような粘々した黒い物質で作られ、周囲のマットや糞を巻きつけて形成され、時間の経過とともに乾燥し、固い外壁になっていきます。 このため、作りたてほやほやの状態のときには、かなり軟らかく、簡単に壊れてしまうので、繭があるかどうかを確かめるときには、あまり強く探らず、指先で、そーっと触るようにします。 なにしろ、幼虫から蛹、成虫へと劇的な変化を遂げる、最も微妙な時期ですから、飼育者も、このときには普段にも増して、神経を使って管理することが必要になります。実際、この繭の管理で失敗することが、ハナムグリ飼育では最も多いのです。
繭を発見したら、そっと取り出して、カップに適度に湿り気のあるマットを敷き、そこに置いて管理します。 この湿らせ具合は、蓋をした後、カップ表面に水滴がつくようでは、湿らせ過ぎなので、水滴をふき取ったり、場合によっては蓋に穴を開けて水分を逃がして調整します。 勿論、それまで繭が入っていたカップのまま、羽化するまで放置するのでも構いませんが、この場合は、もし、マットに湿り気がありすぎる場合、繭内で腐って死亡することが多く、反対にマットが乾燥しすぎていると、繭の乾燥が進みすぎ、羽化後、脱出できずにそのまま標本になることがあります。 このため、当店では繭の状態を人為的にコントロールする目的で、取り出して管理する手法を推奨しており、このように管理することで、繭の表面が乾燥しすぎず、湿り気で軟らかくなりすぎず・・・といった適正な状態をキープできるのです。
但し、繭形成時に、容器を繭の一部に見立てて作ってしまうものもいます。 この場合は、無理をして取り出す必要はありませんが、後日、窓が塞がることがあり、その場合は取り出して管理します。 もしも窓を塞がれず、そのままになっている場合で、マットの水分が多かったり、菌糸が回りこんでいるようなときは、蓋を開けてマットの水分を飛ばし、乾燥を進めてやるか、繭の周辺のマットをうまく取り出して、水分調整済みのマットを入れてやるなどします。 他、十分に固まった繭ならば、そっとカップ壁面から引き剥がし、その窓を別のカップの壁面に押し当てて周囲を新しいマットで埋めるというテクニックもありますが、力を入れすぎると繭を破壊しますのでご注意ください。 例外的なものとして、ポリフェムスオオツノハナムグリなどは、窓を作ることの方がむしろ多く、本種についてはマットが湿っていても特に問題なく羽化してきます。
繭を形成したら、絶対に低温に晒さないようにします。 できれば、それまで置いてあった場所よりも、更に高い温度が維持できる場所に置くことが望ましく、この時期、低温になると蛹化・羽化に失敗する確率が非常に高まります。
繭を形成してから、平均的に、1ヶ月〜2ヶ月で羽化します。 (ゴウシュウノコバカナブンは最長8ヶ月繭だったこともあり、これは当然ですが、種により異なります。) 羽化したかどうかは、繭を軽く振ることで確認できます。 このとき、絶対に強く振ってはいけません。できれば、ゆっくりと、一回、振るくらいにしてください。 この時期に、無用の衝撃を与えることは、変態のタイミングによっては、蛹化・羽化不全や最悪、死に至るケースがあるためです。 以下、繭内での生体の変態状況と繭を揺すったときに手に感じる触感です。 幼虫〜前蛹 : 振っても動いた感じがありません。 蛹 : ゴロン、ゴロンと動く感じがします 羽化後 : 最初、ゴロンと転がるが、その後、動かない (手足をつっぱるためと思われます。)
羽化したかどうかを確実に知るためには繭に少し穴を開けてみるという手があります。 が、この誘惑に駆られ、折悪しくも羽化直後で体が乾ききっておらず、結果、せっかく羽化したものの、短命に終わってしまったという苦い経験があり、できれば割らずに見守るか、開けてもちょっとだけにしておき、自力脱出を待つことをお奨めします。 尚、兄弟虫が殆ど成虫になってきたのに、未だハッチング(=脱繭)してこない場合、残念ながら繭内で死んでいる可能性があります。 このときは、繭を振ると中が動かないことが多く、割ってみると腐っていたということがありますので、他の固体と比べ、あまりに羽化が遅い場合は、この可能性を疑ってみる必要があります。
自力でハッチングしてきた成虫は、すぐに後食を開始しますので、ゼリーを切らさずたっぷり与えてください。 ハッチングを人の手で行った場合、タイミングによっては後食せず、手足も弱々しい状態のときがあります。 このときは、そっとしておき、活動を開始するようになってからゼリーを与えます。綺麗だからといって、この時期に触りまくると、かなりの確率で短命に終わってしまいます。 また、後食を開始する前の固体は、適度な湿り気を与えたマットに潜らせて活動開始を待ちます。 上記の成虫管理で紹介した方法は、後食を開始した後の固体に対し、行ってください。 |
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複数の繭を一つのカップに集めて管理している様子。 この繭の中身はキヌホソカナブンです。 |
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ウガンデンシスなどの大型種はこのように一つずつ管理しています。 |
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カップ表面に水滴がついている様子。これだと湿度が高すぎるので、この水滴をティッシュでふき取り、蓋を外してよく乾かします。 |
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ミカンスオオツノカナブンの繭を一部、削り取り、羽化後の脱出を手助けしました。本当は自力でも出てこれるのですが、もしも繭があまりにも乾燥しすぎてカチカチになってしまった場合は、自らの力では脱出できず、繭の中でそのまま標本になってしまうことがあるのです。 |
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繭から自力でハッチングしたホルニマンヒラズカナブン。自力で出てきた場合は、すぐに後食します。 |
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容器の壁を蛹室の一部に見立てて繭を形成したポリフェムスオオツノハナムグリ。蛹になっている様子が観察できます。本種はこのように窓を作るものが多いため、容器はペラペラの丸カップよりハードタイプがお奨めです。 |
7.おまけ −徒々なるままに・・・駄弁編− |
ハナムグリの成虫は臭いがきついものが多いようです。 実は私はあまり鼻が利きませんで、新婚旅行で行ったバリでも、果物の王様「ドリアン」を平気でむしゃむしゃ食べてしまい、現地人に呆れられたくらいなのです。 そんな私でも、幾つか種については、鼻先に持ってくると、確かにこりゃ臭う・・・と感じるものがいます。(ポリフェムスなど) また、新成虫が始めて出すおしっこも、なかなか香り高く、うっかり手につけてしまうと、石鹸で洗ってもなかなか臭いが落ちないこともあります。勿論、カメムシのような強烈な刺激臭とは違い、全くもって許容範囲なのですが、ご家庭で飼育される場合、種類によっては臭いがきついものがあるという点は知っておかれた方が無難です。(中には無臭?なものもおりますが、そういうものは例外です。)
よく幼虫同士の共食いを心配される方がいますが、種類によっては親も幼虫を食うことがあります。 あの口でどうやって?と思うのですが、もう何回も見ており、これは間違いなくやっている事実です。これを防ぐには、こまめに幼虫を回収する以外にはないのですが、大概はかなりの量の産卵をする種がこれを行いますので、まぁ、親の栄養補給と思ってもいいのかもしれません。 |