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今月の一言

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 ここ数日、ネットに流れるニュースを眺めていると、連日のように登場する面白い話題がある。空からオタマジャクシや小魚が降ってきたというのだ。石川県での出来事だそうだ。


 いや、実に興味深い。あまりに興をそそられるので、更に調べてみると、こういう現象は今に始まったことじゃなくて、大昔から世界各地で割と発生していることが分かった。
 降ってくるものも様々で、カエル、ワニの子ども、カブトムシの幼虫、ねずみ、小石、マナ(どろりとした食べ物らしい)、肉片、血、干物になったウナギなどが記録に残っているらしい。有名なところでは、フランスでカエルが二日間にわたって降り続けた、なんていう凄まじいものまである。


 鉛色の空。少し肌寒い風が吹いている。朝から降り続く細かい雨。その中に明らかに水滴ではない、小石大のものが混じっている。
 そいつは、ボタンッ、ボタンッと、広げたコウモリに凹みを作っては跳ね返り、石畳へと叩きつけられていく。柄を固く握る拳は、すっかり血の気が失せて白くなっている。衝突を感じるたびに、思わず全身に力が入る。じっとりと汗をかいた脇の下が冷たい。


 地面に目をやると、緑が混じった茶色い連中が、辺り一面で蠢いている。
 ギュルゥ、ギュルゥっと、時に不気味に鳴き交わし、一瞬たりともジッとはしていない。
 一歩、一歩、足を下ろす場所を慎重に見つけなければならない。うっかり踏みつけると、気色の悪い感触が足裏に走るからだ。


 遅々として進まぬ歩みに苛立ち、思わず足元のカエルを蹴ってしまう。だが、一瞬、開いた隙間は、みるみるうちに降ってくるカエルで埋まっていく。
 借りているアパートまであと少し。歯を食いしばって、また一歩を踏み出す。流れおちる汗が目の中にしみこんで痛い。すぐそこに見えているのに、玄関までが遠い。泣きたくなるほど、果てしなく遠い・・・・・・


 なぜ、オレはこんなところにいるんだろう。
 ふと、気をとられた途端に、足元をすくわれ、したたかに腰を打つ。傘があらぬ方向に吹っ飛んでいく。あまりの痛みに思わず悲鳴を漏らした瞬間、折悪しく降ってきた、冷たくヌラリとしたものに唇を奪われてしまう・・・・・・


 ああぁ、なんという光景であろうか。想像するだに悶絶しそうになる。
 私はフランスの方に激しく同情する。


 それにしても、一体、何が原因でこのようなものが空から降ってくるのか?
 竜巻に巻き込まれたものが落ちてくるのだという説が、今回の石川県の例でも囁かれているようだが、それにしちゃ一種類のものだけが降ってくるっていうのは、まるで説明がつかない。大体、過去の例では、竜巻なんぞ発生しそうにない場所でも降っているというのだから、これは誰が見ても論外だろう。


 鳥が原因だと唱える人もいる。サギの仲間でも、いっぺんに100匹近くカエルを食べることがあるとかで、これが何かに脅かされたりして、思わず吐き出したんじゃないかという。
 だけど、それなら圧縮・変形された塊になるはずで、生きて動いている状態で降ってきたり、或いは乾燥が進んだミイラ状態で落ちてくるという説明が全くつかない。


 この他に、プラズマ説や神様の悪戯説、お決まりのUFO説など、いろいろあるようだが、どれもウィークポイントがあって、未だに科学的には説明のつかない現象となっている。


 確かなことは、未だに人間は落ちてきていないということくらいか。いや、人間どころか、少し大型のものは落ちてきた実績がどうやら無いらしい。
 つまり、ある程度までの大きさに限定されているということのようだ。
 となると、やはり地上に存在していた、比較的軽くて小さなものが、何らかの原因で空へ巻き上げられ、時間的経過をおいたり、おかなかったりして落ちてくる、ということなんだろう。
 それも、いとも不思議なことに、単一の種類だけが降ってくるってわけだ。


 今の科学では、きっと説明がつかないだろう。それどころか、多分、この先、何百年たっても同じだろう。こうなると、誰がなんと言おうと、どれも根拠薄弱。似たり寄ったりの信憑性しかない。


 であるならば、この際、私も『魔法使いの弟子が、魔法の試験に失敗して生き物を降らせてしまった』説を唱えるとしよう。
 科学的ではないが、なぜか胸にすとーんと落ちると思うのは私だけであろうか・・・・・・

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