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今月の一言 |
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そういえば子どもの頃から、着るものについてはかなり大雑把だった。
そもそも、生まれてから一度も、今日は何を着ようかな? などと迷ったことがない。
お風呂から上がると、タンスの中の一番上のものを引っ張り出して着る。このシンプルなライフスタイルを、昔から淡々と貫いているのである。
薄汚れていようが、穴が開いていようが、首がダラァンと広がっていようが、関係ない。ひたすら上から順番に着る。多分、くたばるまで、ずっとこれを繰り返すと思う。
どうも私は服装に関して、あんまり執着がない。だから、自分で服を買ったことなんて、五指に余るほどしかない。
いつも、ふと気がつくと、古い服が消えていて、新しいものがタンスに入っている。これは結婚して十数年が経過した今でも同じであるからして、昔、母親がしてくれていたように、どうやら今では妻が靴下からパンツにいたるまで、私の知らないところで面倒をみてくれているのだろう。感謝。多謝。毎度、おおきに。
さて、ことほどさように服装について無関心な私であるのだが、昔々、まだお尻が青々と若かった頃、Tシャツにプリントされている英文が気になって仕方なかったことがある。受験を控え、塾で猛烈に英語を詰め込んでいた時分の話だ。
なんとでたらめで、いい加減なプリントがされていることか。文法もさることながら、書いている内容が呆れるほどに意味がない。街でそんなTシャツを着た人を見かけると、「よく恥ずかしげもなく着ているなぁ。意味、分かってないんじゃないの?」などと、青々としたお尻の頃に特有の生意気さで、軽蔑の眼を向けていた記憶がある。
外国で日本語をプリントをしたTシャツが流行っていると耳にしたのは、ちょうどその頃だった。ご他聞に漏れず、かなりいい加減な日本語であるそうな。
『愛』だの『友情』だのはまだよいと思うのだが、『賀正』やら『柑橘類』になると、なにやら微妙な笑いを誘われる。
『夏の汗』これはもう首を傾げざるを得ない。ひょっとして中国とごっちゃになった? 夏王朝のハーン? 時代的にはむちゃくちゃだけど。などと深読みしたくなる。
しかし、私ら日本人とて、これを笑える立場じゃない。そういう自分も、また然り。
かつて私は意味も分からず、"ATOMIC BOMB"なんてプリントされたシャツを着ていたことがある。周りからはさぞや危険な奴と思われたことだろう。
また、英語が花文字で綺麗にプリントされた、ちょっと気に入りのTシャツを持っていた。
よく見ると、"California"
これって、こちらの言葉に置き換えたら、『埼玉県』とか『千葉県』って書いてあるのと同じなんじゃなかろうか?
なんてことがあって、服のプリントについては気になっていたのである。
もっとも、だからといってそういう服を忌避したわけでもなく、相変わらず上から順番に着ていたのではあるが。
それから数十年。いつの間にやらそんなことにはすっかり無頓着になっている自分がいる。今ではなんと書いてあろうが、全く気にならなくなっている。いや、気にならないというと嘘になるが、めっきり英語力が衰えたせいもあり、英文が単なる飾りとしか目に入らなくなっているのだ。
大体、Tシャツのプリントなんて、もともとあまり意味なんてないのだ。着ることができりゃ、いいじゃないか。というくらい、アバウトになっている。
どうせネイティブじゃない人間が、よその国の言葉をプリントしたシャツを着ているんだ。気にするほどのこたぁない。
むしろ、今、気になるのはデザイナーの名前やメーカー名が入ったシャツである。
なんで、自分がそやつらの宣伝をしてやらにゃならんのか?
だが、それも心の中の密やかな声に過ぎない。
現実の私は、あいも変わらず、上から順番に着ていくのみなのである。
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