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今月の一言

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公民館に集められてガス屋から工事の説明を受けたのは、もう二年近くも前になるだろうか。
採算が取れるだけの世帯数の申し込みがあれば都市ガスの敷設工事を行うということだった。まぁ、普通は導入の方向で進むでしょう、という楽観的な雰囲気で話が終わり、期待に胸を膨らませていたのだが、その後、待てど暮らせど音沙汰がない。


いったい、どうなっちまってるんだ? もらった名刺に電話を入れると、なんと、この地域は思ったよりも申し込みが少なくて工事を入れる予定はないということだった。


自慢じゃないが、10年ちょい前に家を建てたときから、うちは今流行のIHクッキングヒーターである。 それをわざわざガスに変更したいと言っているのである。しかも、こちらは説明会からこっち、いつガス工事が入るかとずっと期待して待っていたのである!
といったお話をきわめて丁重な物腰で行ったところ、それならば裏手の道路近くまでガス管が入る予定なのでなんとかします!という嬉しい返答を頂いた。


それから数ヶ月。
またしてもナシのつぶてである。
どうにも不安になって、ガス屋に確認したところ、少し遅れているが、大丈夫、絶対工事を入れますから、安心してください!という力強い回答だった。


ここまで言い切ってくれたのである。
こちらは、もうすっかり大船に乗ったつもりでいたのは言うまでもない。


さらに数ヶ月が経過し、桜の花が散った頃。
ついに、近在のあちこちでガスの敷設工事が始まり、それに伴ってそこらじゅうで道路が封鎖されるようになった。迷惑したのは宅急便の運ちゃんであるが、それはさておき、いよいよ待望のガスである。


と思ったのだが、どうもうちの近所には工事が入りそうにない。
なにやら嫌な予感に襲われて確認してみたら、これがすっかり忘れられていた模様である。その上、電話の向こうの慌てぶりから判断するだに、大丈夫どころか、なんともしようがない状態になっているらしい。
ううむ・・・・・・いくらなんでも大船すぎる。これじゃ豪華客船タイタニックではないか。


どのみち、私ももう四十の坂を超えている。
こういうときに怒鳴り散らしたところで、どうにもならぬということぐらい、よぉく承知している。そこであくまでも穏やかな口調を堅持し、今までの経緯を一通り説明申し上げた。


結果、その日のうちに、すっかり恐縮した体の担当者が飛んできて、即座に工事を手配して頂ける運びとなった。


とまぁ、すったもんだの末にようやく導入された都市ガスなのである。
大層、有難いのである。
だが、それは、ここまで漕ぎ着けるのが大変だったからではない。


料理の味がまるで違うのだ。
同じ程度の火力なら、断然、ガスの方がおいしいのである。
電気で料理してもガスで料理しても、味は変わらないなんていうのは大嘘である。分かる人には分かると思うが、これは普通の炭と備長炭で焼いたバーベキューの味ぐらいの違いがある。


これまで述べてきてお分かりと思うが、私は別段、ガス屋並びに都市ガスサイドに対し、なんら好意的感想を抱いてはいない。従ってここでおべんちゃらを述べる必要性も全くない。そもそもガスの宣伝をしてあげたところで、私には一銭の得にもならない。
だからこそ、あえて本当のことを書くのである。


IHは鍋底ばかりが熱くなるが、全体に火は回らない。鍋の上部は手で触っても冷たいままである。
これでも料理は出来るには出来る。だが、味はまるで違う。
分子を揺り動かして加熱する場合と、本物の火を使って加熱する場合では、こうも違うのか!と思うほどの差が生まれるのである。


確かに単純にお湯を沸かすのはIHの方が早い。
だが、例えばうどんをゆでるときである。打ち立てのうどんを鍋に放り込むと、いったんお湯の温度はぐっと下がる。IHを使っているときは、15分たっても再沸騰しなかった。これに対し、ガスだとほんの5、6分で見事に沸騰が戻ってくるのである。


この違い。これが料理の世界では大きいのである。


また、IHはそこらの電化製品と比べても、お話にならぬくらいの電磁波を出している。
電磁波が身体にどういう影響を与えるのか、そいつはまだ科学的な証明にはいたってないかもしれぬ。
だが、どう考えても、いや、この場合、まるで何も考えずに、人間の本能ってやつで推し量っても、大量の電磁波を浴び続けて、身体が無事であるかどうか、不安を覚えないっていう方が私には鈍感としか思えない。
このあたりは、もう理屈じゃなく、知らず食品添加物を口にすると、舌が火傷しちゃう、リトマス試験紙のような私の身体感覚の話である。


オール電化などという謳い文句で世の中が染まりつつあるようだが、時代の流れに沿うことばかりが、必ずしも正しいってわけじゃない。
特にそれが企業の利益に基づいて作られた流れであることを考えた場合は尚更だ。
奇をてらって言うのではない。
自分の身体、舌をベースに出した結論として私は宣言する。
ガスに戻って、大正解である。

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