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今月の一言

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私が居住している『さいたま市』は、大宮市、浦和市、与野市の三市が合併してできた。今から6年ほど前の話だ。2005年には岩槻市が加わって、今ではずいぶんと広範な区域が市内ということになった。なんでも日本で十番目に人口が多い都市なのだという。賑やかな話である。
ただ、岩槻にお住まいの方には失礼だが、正直、あちら方面まで同じ市だと言われても、実感としてピンとこない。多分、先方も同じだろうと思う。それくらい、地理的にも生活感覚的にも遠い距離の地域までが、一つの市となったのである。


四つの市が一つになることで、市民生活はどう変化したのかというと、どうもあまり手放しで良かったと喜べることは多くはなかったように思える。議員さんたちにとっては、きっと給料がアップしたのだろうけれども・・・・・・
我々一般市民は、税金が下がったわけじゃないし、反対に元・与野市民などはグンと上がったように聞いている。税収は大幅に増えているはずなのだが、なぜか市民への還元が薄いような気がするのは、気のせいだろうか?


どうもこの合併には、いまひとつ、パッとしたところが感じられないでいたのだが、実は一つだけ、見逃すことのできないほどの大きな成果がある。
いや、本当を言うと、ただこの一点だけでも、合併して大正解だったのではなかろうかと思わせてくれる、巨大な恩恵があるのだ。


それは、さいたま市にある全部の図書館の本をデータベース化し、ネットから自由に検索・予約ができるようにしたということである!
どの図書館の本でも借りることが可能だし、しかも、それを指定した任意の図書館で受け取ることができるのだ。これは画期的なことである!
考えてみて欲しい。四つの市が所有していた図書館の蔵書が借り放題なのだ。いったい、どれほどの蔵書の量になることか。本の虫にとって、これはもう単なるハッピーを通り越して、危険なほどの麻薬中毒状態である。


その上、ありがたいことに、借りられる媒体は本ばかりではない。CDなどのメディアも対象なのだ。私はクラシックが好きなのだが(たまたま好きなだけで、別にカッコつけているわけではない)、図書館でCDが借りられるメリットは計り知れないものがある。
聴きたいと望んでいながら、既に廃盤になっていて、現在では入手困難なものが、案外、図書館には何気ない顔で置いてあったりするのだ。とくに、古くからある外目も内装もボロボロの図書館(失敬!)には、こうした古いCDがぐっすり眠っていたりして、まさに宝の山状態なのである。
また、興味はあるが、実際に聴き込んでみてから買うかどうかの判断をしたいときがある。うっかり外すと痛いのだ。財布もそうだが、既に棚がいっぱいなので、置き場所が相当にキツイ。そういったときにも、このシステムは実に役に立つのである。


確かに最近では、CDショップでも視聴ができるところが増えた。だが、どうもああいう環境では、落ち着いて聴くことができないのだ。ヘッドホンを頭に巻いて、とっかえひっかえCDを聴いている中年男の図というのは、どうもおマヌケな気がしていただけない。私のダンディズムに著しく反するのである。
素早く決めて、早々に立ち去らねばならぬ。
焦る心が、ジャッジメントに微細な甘さの侵入を許すことになり、最上の選択のはずが、帰宅後、プレイヤーにかけてみると、コンナハズデハ、ナカッタという、なんともはやな仕儀になったりするのである。


だが、こうした悲劇も、図書館で借りることができれば永遠にオサラバできる。
ブラボー! 検索システム!
誰だが知らないが、この蔵書データベースの導入を進めてくれた人には、勲章でもあげたい気分である。私の熱いキスを添えて。(多分、いらないであろうが)


図書館の優れたシステムの恩恵のおかげで、我が家では毎週のように図書館に詣でるイベントがすっかり定着した。どうもリアルな本屋に足を運ぶ回数は、非常に減ったのだが、ネットに並ぶ本の世界には、入り浸りの生活である。
そうして、気に入った本があると、すぐさま予約。ポチっとマウス操作一つで、翌週くらいには手元にその本があるヨロコビは、まことにクセになりそな快感である。


このように膨大な量の本に親しむようになると、当然のことながら、読書の幅もうんと広がってくる。その結果、最近、息子が私のお気に入りの領域に割り込んでくるようになった。
昔から私はファンタジーが好きなのだが、どうやら息子も同じ分野に目覚めたようなのである。


こうなると、親子で取り合いである。
お互いにいい刺激ともいえるが、気を抜くと、読みたかった本を先に読まれてしまい、あっ、それ、面白かったよ、なんていわれると、天邪鬼な私は途端に読む気がなくなったりするのである。
オトナゲないようであるが、こと本に関しては、私は完璧に子供なのである。


先日、『ハウルの動く城』の原作者で、イギリスのファンタジー界の女王と呼ばれるダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの最新の邦訳が入ってきたのだが、私は密かにこれを予約しておいた。
借りた後で、息子に見せて、ほぉら、ほら♪と自慢してやろうと企んでいたのだ。
あっ、いいなぁ!と悔しがる顔が目に浮かぶようではないか。


一週間後、本が到着したとの連絡が届いた。
新刊だけあって、装丁も美しく、ページから香しいインクの匂いが立ち昇るようである。人気作家の本だが、こういうものは複数の図書館で購入するから、予約数が多くても、結構、早く回ってくるのである。
ホクホクしながら借り受けた私は、さっそく、その場で息子に見せてやった。
すると、息子はニコニコ笑いながら、すかさず、
「僕も!」
カバンから取り出したのは、同じ本だったのである。


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来年も皆様にとってよい年でありますように。

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