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今月の一言 |
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日本には、おいしい発酵食品があります。
味噌、醤油、納豆、お酒、etc・・・
だけど、私が子供の頃から、なによりも大好きだったもの、それは甘酒です。
あの独特な風味。麹のやさしい香り。口に含んだときの甘ぁい感触。
思い出すだけでたまりません。
寒さで凍えながら、玄関の扉を開けた途端に、ぷぅんと甘酒の臭いが空中に漂っていようものなら、もう、それだけで私の体は、幸せではじけそうになってしまいます。これほど芯から温まって、心まで豊かにしてくれるものが他にあるでしょうか。
甘酒があれば、あとは何もいらない。
かほどに私は甘酒には目がないのであります。
どんなにたくさん作っても、何杯も何杯もおかわりして、あっという間に平らげてしまうのです。
先日、とある通販で妻が甘酒を購入してくれました。
酒かすから作るようなものではなく、米からちゃんと作ってあるものなのだそうです。高級品ということなのか、量は大変少ないのですが、そのくせ、値段はそれなりにします。
どうやら砂糖などの糖分は一切含まれておらず、これだけでも十分に甘いのだとか。そんなことが本当にあるのでしょうか?
半ば疑いつつ、賞味してみたのですが・・・
美味い!
これがまた、実にすっきりとした甘さで、さわやかなのであります。
子供が赤ちゃんだったときに味見してみた、おっぱいの甘さに一脈、通じるものがあります。
酒かすから作られている甘酒は、私にはどうしても甘みが足りず、味醂を足すなどして味を調整してきたのですが、この米から作った甘酒というものは、どうしてどうして、何も足す必要などありはしないのです。
ストレートに飲んで、十分に甘く、そして、美味いのであります。
これが本当の甘酒というものなのか。
この歳になって、どうやら私は、初めて真の甘酒というものを知ったようなのであります。
これを一度、食べてしまうと、酒かすから作った今までの甘酒には、もう戻れません。べたべたした甘さがやたらにねちょついて、気持ち悪いように感じてしまうのです。
甘酒と一口に言っても、この二つは、はっきりいって、まったく別物です。
いまや私の目からは、鱗がボロボロこぼれ落ちています。いや、感動のあまり、涙と涎が一緒に落ちております。
妻は今まで、甘酒をあまり好きではなかったのだそうです。
それほど、おいしくは感じられなかったのだといいます。
ですが、この甘酒だけは別だとか。
やはり、ポイントは、甘みが断然違うということにあるようです。
いまや妻も目の色が違っております。私と争うように甘酒を飲み干しています。
こうして、黄金の甘酒は、たちまちのうちに、鍋から私たちの胃袋へと引越しを完了したのでありました。
米から作った『本物の甘酒』は、これほどまでに美味なのですが、あの量と値段では、しかし、そうしょっちゅう、味わうことはできかねます。
なんとも名残惜しいことです。
江戸時代には、今時分の季節になると、甘酒売りが方々の辻々に立って、甘酒を売っていたのだそうです。江戸の庶民は毎日のように、甘酒を飲んでいたと聞きます。きっと、当時の甘酒は値段も安かったのでしょう。
でも、甘酒がもてはやされた理由はそれだけではないのです。
この季節に甘酒をたくさん飲んでいたのは、甘酒の良質な発酵成分で腸の調子を整え、じめつく、日本独特の夏を乗り切るための庶民の知恵だったからなのです。
甘酒とは、本来、私たちにとって、必要欠くことのできない、大事な食べ物だったのであります。
とするならば、甘酒は自分でも案外、簡単に作れちゃうのではないでしょうか?
・・・調べてみました。
いまやこうした情報は、ネットにはあふれるほど、転がっています。
「甘酒の作り方」というキーワードを打ち込むと、あるわ、あるわ・・・
ということで、我が家でも、早速、米から作る甘酒作りに挑戦しました。
本来、発酵には、50度前後の温度を保てるものが必要とのことで、炊飯器の蓋を開けた状態で保温すれば、一夜にしてできるとか。しかし、我が家の炊飯器は、あろうことか、蓋を開けた状態のまま保温すると、ピーピー、警告音が出て通電しないことが分かりました。
魔法瓶を利用するという手もあるようなのですが、あいにく、これもうちにはありません。
せっかく、意気込んでいたのに、こりゃ、だめか・・・と、ちょっとがっくりしたのですが、しかし、よくよく考えてみると、江戸時代に炊飯器や魔法瓶があるはずもなく、それなら、一体、どうしていたのでしょう?
なお、調べてみると、どうやら、常温であっても、2日から一週間、放置しておけば、ゆっくり発酵が進んで、甘酒ができるとのこと。
ようやく胸をなでおろし、早速、仕込んでみました。
さぁて、お立会い!
うまくできたら、これからの我が家は、おいしい甘酒三昧の日々が待っています!
今日からの数日間、私は毎日、どきどきしながら過ごすことになりそうです。
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