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今月の一言

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9月のわりには気温がぐんと上昇した、ある日の午後。
何の前触れもなく、急にパソコンがフリーズしてしまいました。
慌ててリセットしたのですが、全く立ち上がりません。
そうこうするうちに、バチッという、実に嫌ぁな音がして、完全に沈黙してしまいました。


私は朝、起きるとすぐにパソコンの電源を入れ、その後、寝るまでの間、ずっとつけっ放しにしています。
ご存知のとおり、私の店はネットの中にのみ存在していますので、パソコンはすぐにでも使える状態にないと仕事にならないのです。


最近のパソコンは性能がよくなったことと引き換えに、非常に熱を帯びやすいのが特徴です。
そのせいもあって、気温が高いときには、今までも熱暴走してしまうことがしばしばありました。
今回もきっとそうだろうと思い、電源を強制的に落とし、十分に冷ましてからもう一度、立ち上げることにしました。


丁度、折りよく外出する用事もあり、小一時間ほど放置した後、さぁ、どうか、と期待して電源を入れたのですが・・・


どうもハードディスクがいかれてしまったようで、うんともすんとも言いません。
何度も電源を入れたり消したりしているうちに、先述のバチッという、なにやら不吉な音がして、電源さえも入らないようになってしまったのです。


恐らく電気的にショートしたのでしょう。
電源はもとより、マザーボード、グラフィクボードまでもが一気にいかれてしまった様子でした。


こうなると、もうどうにもなりません。
殆どの主要パーツが交換となってしまいます。
自作したパソコンなので、生きているパーツはそのまま流用できますが、今回の場合、それはごくわずかで、殆ど新規に近い買い直しです。
結局、新品が丸々一台、買えるくらいの出費となってしまいました。


さて、この交換パーツが来るのを待つ間、当然ですが、パソコンを使っての仕事は、さっぱり何もできません。
そうなってみてはじめて、自分が日頃、パソコン、それもネットというものに、いかに寄り添って生きてきたのか、身に沁みて分かりました。


私は携帯はなくても、全く問題なく生きてゆけます。
しかし、パソコンに関してだけは、どうやら駄目なようなのです。


謀らずしも、失ってみてはじめて、パソコンというものが、いつの間にか生活の中で、かなりのウェイトを占めるようになっていたことに気がつかされた形となりました。


手持ち無沙汰というわけではありませんが、こうしてみると、一日のうちに、ぽっかりと空いている時間がずいぶんとあることが分かりました。


突然、手に入れてしまったこの自在な時間。
はてさて、どう使ったらいいのでしょう?


そこで、今までの人生、パソコンがなかった頃はどうしていたのかを振り返ってみました。
すると、そういえば、暇さえあれば本ばかり読んでいたことを思い出しました。


学生時代には年間100冊以上は読んでいましたし、サラリーマンになってからも、往復の電車の中で、寸暇を惜しむようにページをめくっていました。


しかし、年々、そういう時間がどんどんなくなり、その分、パソコンの前に座る時間に取って代わられていたのです。


これは久々に読書にふけるチャンスです。
頃は良し、秋の夜長に読む小説は、最高の友であります。


さぁ、それから、久々に、じっくりと本と付き合いました。


気にかかっていたけれど「積んどく」状態だった小説。
昔に読んで、もうストーリーを忘れてしまったものなど、次々に読破し、すっかり本を読む楽しさに浸りきる毎日です。


中でも、興趣がそそられたのは、幸田露伴、泉鏡花、志賀直哉といった文豪の作品です。
若い頃にも目を通したのですが、その頃は字面だけを追い、あまり深くは感じ入っておりませんでした。
歳を経て、人生のなんたるかを少しは噛み締めてきたためでしょうか、今、読むと、実に面白く、感慨深いものがあります。
漸く、明治の文豪の本が読めるようになったとは、私の精神年齢も多寡が知れていると、少々、冷や汗ものではありますが。


その後、パソコンを組み立て直し、ソフトをインストールしてネットにも無事、再接続致しました。


しかし、幸いというべきか、一度、再燃した読書欲は生半かなことでは消えてくれず、今もって本を読むことの楽しさ、幸せを噛み締めている毎日です。


最近、小4の息子も本の虫となって、ちょっとした時間にも本を広げており、読書の幅も広がって、私とも話が弾むようになってきました。
こんなにも早く、同じ趣味を語らう喜びを実の息子ともてるなんて、望外の幸福といったら大げさでしょうか。


この秋は、親子で読書に勤しむ静かな季節になりそうです。

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