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今月の一言

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花の季節になりました。
今年の桜は、あれよあれよという間に、みるみる満開になってしまった感がありますね。
まるで、春の精が駆け足で通りすぎようとしているみたいです。
ちょっと待って、そんなに急がないで、と言わんばかりの冬の一撃で、昨夜は珍しく春の雪。
散り急ぐが必定の桜には、ひとときの猶予になったのかな、と考えると、寒さで身を縮めながらも、なんだか少し嬉しい気持ちになりませんか。


帰り道、どこからともなく薄紅色の花びらが、ひらひらと空から舞い落ちてきます。
その道筋を逆さに辿ると、あっ、ここにも桜・・・。 歩みを止め、見入ってしまうこと、暫し。。。
いつも目に留めている木々のはずなのに、花をつけるまで桜とは気がつかずにいたなんて。
見慣れた、ある意味、とても日常的で地味な風景が、突然、刷毛でサッと一拭きしたように、淡い桃色に染まって、ゆらりと目の前に立ちはだかります。
どこか見知らぬ土地に迷い込んでしまったような、そんな錯覚さえ覚える春の夜。
この短夜を演出するのは、艶やかで、少し怖いくらいの満開の桜。
物憂い春のファンタジーは、桜の木の中で存分に結晶して花咲かせ、今夜も人を酔わせてくれます。。。


今年もまた、荒川運動公園の川岸に咲く桜並木を家族揃って歩くことが出来ました。
昨年は途中で転び、泣きじゃくっていた息子。 通りすがりのおばさんから飴玉をもらい、漸く機嫌を直した五歳児は、今年、親の手を離れ、独りででどんどん駆けて行きます。 そして、抱っこばかりせがむ、甘え上手な小さい娘。 三歳になった今春は、自分の足でしっかりと歩き、もう、殆ど、抱っこと言いません。 


大きくなったんだね。 いつのまにか。


遠ざかっていく2つの小さい影を見つめているうちに、なぜか寂しくなって胸が少し痛みました。


こうして、少しずつ、僕の掌から離れていくんだね。


4月は新たな出会いの時。 出発の時。 そして、自分が1つ、齢を重ねる時。


春を迎え、春を送る日々を重ねて、横を歩く妻と二人、いつか、また、二人だけになるときがくるんだろうなぁ。 そのときになっても、こうして、桜の木の下を、彼女と一緒に歩き続けていたい。
やわらかな日差しのなかで、心からそう祈りました。

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