over again(ヒュウコナ)                                      ヒュウガver
可愛い、と言うと怒るから敢えて何も言わずに大きく躯を揺すり上げたら、コナツは息を呑んで痙攣に近い動きを見せてベッドの中に崩れ落ちた。そのまま動かない。
まさか死んだ?
「大丈夫?」
オレがコナツの顔を覗き込むと、
「すみません」
目を開けて謝る。良かった、生きてた。
「凄かったねぇ」
しかし敏感すぎるよ、コナツ。
「はい。気持ちよすぎました」
気持ちよすぎって、ずいぶん正直に答えるねぇ。
「私、変でしたね。少佐がびっくりしてるの分かりました」
変ってことはない。あれが変なら世の中の女性は皆変になるでしょ。男であれ女であれ感じたら素直に表現するのはいいことなんだよ。オレがびっくりしたのは感度の良さ。
「でも可愛かったよ」
コナツの反応は他にはないくらい。オレがこうさせてるんだなって思うとたまらなくなるね。
「抑えられませんでした」
そりゃそうだ。そのために悦くしてるんだから。
「我慢する必要ないでしょ」
我慢してるところもいいなって思うけどね?
「はい」
こういうところは従順だ。いつもこうだったらいいのに……なんて、仕事サボってる上司に何も言えない部下を持った覚えもないしね。
「オレもコナツのいいとこいっぱい見れて幸せ」
コナツの頬を撫でて、猫を可愛がるように首を指で撫でた。こうしたくなるのは顔の輪郭が子供みたいで肌が綺麗でそんで、
「あッ」
おや、コナツ。これだけで感じちゃうの?
「いい子だねぇ」
だんだん小動物を見ているような気分になってしまう。だって可愛いもんな。
「少佐はいつも私を子供扱いしますね」
コナツ〜? オレにとって君はまだまだ子供だよ〜。
「そういう勝気なところも含めて言ってるんだよ」
前より強くなったのは事実だし、本当はずっと大人でしっかりしてるってのも分かってるけど。
「もう……!」
「ほら、きた。その顔がねぇ」
からかうとすぐにこれだ。毎回この反応が面白い。そのうちからかっても何も言わなくなるのかねぇ。怒ってるうちが華ってやつか。
「コナツが泣くのも怒るのも好きだよ。ほんといい顔するよね」
顔だけが好きなわけじゃないけど。オレが認めたのは中身だから。
「……」
オレは固まっているコナツの髪にキスをした。黒髪のオレにはこの髪の色は何か別な生き物に思えるくらい惹き付けられる。
「シャワーどうする?」
コナツは動けそうにないから先にオレが浴びてきちゃおうかな。ちょっと休ませてやりたいしね。
ベッドで横たわる姿も可愛くてシーツでぐるぐる巻きにしたやりたくなる。ちょっかい出さないと気がすまないのは好きだからなんだけど。
ってさぁ、そんなにオレのこと見つめて何が楽しいの? でっかい目で見られると吸い込まれそうになるんだって。
「後からでいいです」
だろうね。いつもなら抱き上げてでもシャワーつれていくけど、今日は焦らなくてもいい。なんでかってコナツの要望でゴム付けたから。コナツがねぇ、オレがつけてるとこ見たいって言うから見せてやったんだ。すっごい興味深そうに見てたんだけど、そんなに面白い動作でもないのになぁ。今度はコナツに練習させてみようと思う。
「じゃあ、お先〜」
オレは一人でシャワーに行こうとしたけど、なんとなく名残惜しくて再度コナツの髪にキスをしてからくちびるにも触れた。びっくりしてたコナツがまた特別に可愛かった。
オレはバスルームに入るとシャワーのコックを捻って水を出した。冷たい水なら熱も冷めると思ったんだが……抱くたびに色っぽくなるコナツの反応は演技なのかと考えているうちに色々蘇ってきて理性が飛びそうになる。
なんだかねぇ、ほんとはこんなに後引かないよ? いつもはもっと冷静。でもコナツが相手だとこうなるのはどうしてかな。
っていうか、終わったばっかりだってのにさっきまでのコナツが頭から離れなくてヤバイ。もう1回抱いたら嫌がるかなァ。
とりあえず違う話でもして空気の流れと気分を変えてみよう。明日の仕事の話でもすればコナツは仕事人の顔になるしね。
「コナツくーん?」
シャワーどうぞ〜って言おうとしたら、
「あ」
裸のまま起き上がってオレを見ている。すると突然、
「水も滴るイイ男ですね」
と言われてしまった。
……誰が? ってここにはオレしか居ないじゃん。何言い出すの、コナツ。
「イイ男ぉ? そーお?」
冗談を言うようになったのも成長の証かね。
「本当のことですよ」
「……」
「少佐はかっこいいです」
真面目な顔で何を言ってるんだか。
「……コナツ、いじめられたい?」
「えっ」
「煽るコナツが悪いなァ。シャワー勧めようと思ったけどやめた」
「!?」
オレはじわじわ攻めるように上に乗ると、
「えっ、ちょ……っと」
目を丸くしてるコナツにキスをしようとした。でも、その前にちょっと仕掛けてみることにする。
「嫌なら首を振って。いいなら目を閉じて」
「……!」
すぐに首を振るかなって思ってたけど、コナツは目を閉じた。へぇ、そう来たか。しかも、薄くくちびるを開いて誘ってる。
「やっぱり悪い子」
オレはそう言いながらくちびるを合わせた。
コナツは腕を伸ばしたあと、オレの背中に少しだけ爪を立てて、そのままオレの腰まで手を下ろしていった。そして腰に巻いたタオルを取ったんだ。こういうのを教えた覚えはないんだけど、何処で覚えた?
憎らしいから深いキスをしてやろう。
「……ぅ」
ほら、いい感じになってきた。
「甘い声」
男のくせに、なんでこうも甘いんだろうね。
「……っ」
「コナツの透明な声って好きだよ」
「!」
「そんなわけで、啼いてもらおう」
「少佐!?」
はい、そこで自分の口を塞がない。このお手々はおとなしくしててくれないかな。
オレは少し体勢を変えてコナツの脚を持ち上げた。実はこの瞬間にゴムも付けちゃった。サイドテーブルに置いてあった予備を取って、あっという間。たぶん、コナツは気付いてないだろう。こういうのは気付かれないうちにするからいいんだよ。
さて、待てないから、このまま犯すよ。
「ごめんね」
謝ってはおくけれど。
挿入したとたん、コナツが歯を食いしばって仰け反ったあと、短く息を吐き始めた。痛みを逃すときにいつもそうしている。
泣きそうな顔を見せて、
「動いてもいいですよ。さっきよりも激しく」
そう言ったんだから覚悟は出来ているんだろう。
「なんだか可愛いよねぇ。いちいち可愛い」
「からかわないで下さい」
やっぱり怒ってるから、たまにはオレも真面目に言ってみようか。
「からかう? オレがコナツにしていることのぜんぶは本音だし本心だし偽りのない真だよ」
「!」
なぁに今更びっくりしてんの。
「オレはコナツ狂だからさ、多少はおかしいかもしれないけどね?」
「少佐……」
それとコナツ、いい加減認めなさい。自分が如何に可愛いかってことを。そうすれば苛々しなくなると思うよ。
「大体ね、なんでこうバカみたいにコナツを抱きたくなるんだろうね」
そこで「それは私が可愛いからじゃないですか」って言えるくらいになってほしいもんだ。
「このあとでまたシャワー浴びに行っても同じこと繰り返しそうだよ」
実はこれがオレの本音なんだけど。
「そんなの私も同じです」
え、コナツも? マジで?
「そう? 珍しく意見が一致した」
「一致って……」
キスだけで終わらせなくてもいいってことでしょ。

そしてオレは欲望のままにコナツを抱いた。さっきまで同じことをしていたとは思えないほど興奮してて自分でも呆れたけど、終わってもあとを引くコナツの魅力は人を狂わせる何かがあると思った。だから、これは仕方ないんだと諦めるようにした。

ああ、ごめん、オレ、めちゃくちゃだよね。コナツ、感じまくってイヤイヤしながらイキそうって叫んでるけど、まだ駄目。

で、結局。
コナツは気を失ってしまった。今回はちゃんとイッたあとに倒れた。
ぐったりとしたコナツを見たオレは、ここまでくればあとは無理をさせることはないと思って、そのままベッドに寝かせて様子を見ていた。今夜はもう頬をつついたり髪を引っ張ったりしてちょっかいは出さないよ。朝になったら起こしてあげるから大丈夫。

なんて、先に目が覚めたのはコナツで、オレは起こされるほうだった。うん、こうなることは分かってたし? 朝はオレ、グダグダだし?
コナツは自分が失神したのを謝ってきたけれど、それはコナツが悪いんじゃない。
「でもお陰でオレもセーブ出来たよ。さすがに意識が飛んでる人間を相手にするのは可哀想でね」
そう言ったものの、
「ぐったりしたコナツも色気たっぷりでたまんないんだよ?」
本当はどこまでも終わりがないのだと言ってやった。
「そんなの知りません」
顔、赤いよ。
ほんと、ムキになって否定するところも大好きだけどね?

さっそくおはようのキス。
「もう一度」
「駄目です」
「もう一回だけ」
「駄目ですって」
「もう一回だけだから」
「駄目……」
「コナツ」
「はい」
「いいよね」
「……はい」
朝っぱらからキスするだけで、こんな会話してるオレらもどうよって感じかな。