too love

今日もアヤたんからかって、カツラギさんから美味しいオヤツもらって、昼寝もいっぱいして、有意義に過ごした!
……と言いたいところだけど、一つだけ気になることがあった。
コナツが冷たかったんだ。
いくらオレが仕事しないからって、オレに「寄るな」「近づくな」って言うんだよ。会議のこと聞こうとしても、離れて何処かに行っちゃうんだ。こんなんじゃ仕事出来ない。……する気もないけど。
今までは「仕事してください!」とか「何処に行っていたのですか!」とか、そういう言い方だったのに、それが「来ちゃ駄目」って。何? オレ、どういう扱いされてるの? 今更黒法術師が怖いとか、そんなん? コナツの家系だって同じなんだから、怖いはずないし、一体何なの?
だからオレは懲らしめてやろうと思って、今夜もコナツを部屋に呼ぼうとした。
「コナツちゃーん? 夜にちょーっとお話があるんだけど」
にこやかにそう言った時、コナツは物凄く嫌そうな顔をしたけど、返事は「分かりました」と素直で、オレはコナツが何を考えているのかちょっと分からなくなった。
なのにコナツは夕食も別々にとって、オレから逃げてるのがバレバレ。オレが何か悪いことしたみたいな態度に、思わずアヤたんに相談しに行こうと悩んだけど、行ってもアヤたんはコナツの味方しかしないからなぁ。
もしかして約束すっぽかすかなって諦めてたのに、コナツは時間通りにやってきた。そっちの方がびっくり。
で、世間話をして時間を潰すつもりもなく、オレは一人で勝手に酒を飲んで出来上がってたから、飲みすぎないうちにと思って、さっさとコナツを寝室に連れて行った。その間、コナツはずっと無表情だった。目はどこかを見ていて、上の空。話しかけると2秒くらいして返事がくる。
なんか変だと思ったけど、そんなことを気にしてたらキリがないから、オレはサクサクと事を進めて、難なくコナツを裸にし、今までと同じように抜かりなく手順を踏んでいった。
「コナツちゃん、今日は随分おとなしいけど?」
「……」
「無視?」
「……」
変だなぁ。どうなってるんだろ。まぁ、本当に嫌なら本気で抵抗するだろうし、そんなふうにも見えないから、続けてもいいんだろうけど、やりづらい。
暫く経った頃、
「どうしたの」
やっぱりコナツの様子がおかしいんだ。今夜はオレの抱き方が強引すぎたかと反省しても、今更やめられないし、だって、まだ中盤にすら差し掛かってなくて、前戯の途中、オレはまだシャツの前だけ開けた状態で、コナツの躰もほぐれてないってところなのに、どうもコナツがずっと無言で、何処をいじっても声すら出さずに苦虫を噛み潰したような難しい顔をしているから、続けようがない。
体調がすぐれなかったら言ってくれればオレだって無理に抱かないし、むしろ体調がよくなければ黙っててもオレは気付く。そんなの隠したってオレには分かるのに、そういう状態ではないみたいだし、現状を把握したい感じ。
「コナツー?」
口がきけなくなっちゃったの?
「やめる?」
試しにそう言ったら首を振った。
「なんか、辛そうな顔してるよ」
「そうですか」
「……」
やっと喋ったけど、棒読み。
「お気になさらず」
「気になるでしょ」
「いいえ」
「ロボットと喋ってるみたい」
「!」
「なんだかなぁ」
もともと礼儀正しい子だし、調子に乗ってふざけることなんてしない子だけど、どうも機械的。無機質っぽくて感情がなくて。
「こういう態度だと、醒めますか?」
「うーん」
オレが困っていたら、コナツってば何て言ったと思う?
「少佐は私の躰だけ見ていればいいのです」
って。なんだぁ? どういうこと?
オレは納得がいかなくて、行為をやめて詰め寄った。
「何考えてるの?」
最初は優しく出たよ、オレだってこれでも寛容だからね!
「何も」
「嘘ついても無駄」
「ですから、気になさらないで下さい」
「だったら、せめてそのぎこちない表情を何とかして」
「……っ」
「昼間から、どうしたっていうの? 寄るなだのあっち行けだのって、オレ、何かした? 仕事しないから?」
「私、そんなふうに申し上げた覚えはありません」
「そんなに言葉は悪くなかったけど、オレにはそう聞こえたの」
「ええっ」
「コナツはオレの部下なんだから、そばに居なきゃ駄目でしょ。オレが近づくと嫌がるって、どういうこと?」
「嫌がってなんかいませんよ!?」
「じゃあ、なんで避けるの」
「避けてなんかいません」
コナツも強情だから、中々折れない。
「はぁ。埒が明かないから、やめた」
「!?」
「コナツ、今日はここで寝てもいいよ。オレ、出掛けてくるわ」
コナツは先に裸に剥いちゃってたけど、オレはまだ服着たままだからよかった。
オレがベッドから出ると、コナツは思い切り固まってオレを見てた。だって、全然反応ないのに無理やり抱いても面白くないし。っていうか、やめて欲しいっていうオーラ出まくりで、さすがにオレもしつこくするのも可哀相かなって思って……やめた。
だけど、
「酷いです! まだ途中なのに!!」
コナツが珍しく大声を上げた。
「だって、続けられそうにないもの」
「こんな状態で出掛けるって何です!? 何処へ行くつもりですか!?」
「その辺」
「まさかナンパしに行かれるのではないですよね!?」
「ナンパぁ? それは考えてなかったな。面倒くさい。それならしかるべきところに行って抜いて来た方がいい」
「……」
って、これはコナツには意味が通じてないみたい。説明するのもアレだから、
「じゃあね」
上着だけ羽織って部屋から出ようとすると、
「せめてシャツの前くらいは閉めて下さい!」
と言っていた。……そういう問題? そんなこと言われたらオレの目も点になるわ。ったく、どうやって言い返してやろうかと考えていたら、今度は、
「私だって浮気しますっ! 乱交もしますからっ」
コナツが発狂していた。
……なんか、コナツらしからぬ台詞が聞こえてきたような気がするんだけど、気のせい?
「私、少佐以外の人とでも出来ます。というか、したい」
「!?」
「少佐以外の人のほうがいいみたいです」
「はぁ?」
ええ? どういうこと?
「でも、相手が居ないので誰か紹介して下さい、なるべく年上の人がいいです」
「はぁぁ!?」
なんだ? 何が起きてる!? コナツ、どうしたの?
「私、少佐だと駄目です」
「!!」
「もう我慢しないことにしました」
「……それって、もうオレに抱かれたくないってことだよね」
「……ッ、近づかれるのも嫌です!」
なんてはっきりした子! せめて歯に衣を着せるくらいはして!
「……仕事中は?」
「だから悩んでいるんです」
あ、そう。仕事も一緒にしたくないってことね。まぁ、それならそれで、コナツに仕事しなくていいと許可を得たって思うようにするけどいい?
「コナツが参謀部に居たいならオレが出るしかないんじゃない? でも、オレはあんまりあっちこっち行けないんだよねー。黒法術師は監視が厳しいんだ」
「そんなことを申し上げているのではありません」
「?」
「まだ気付きませんか!?」
……? え? ん?
「私がどうしてこんなに悩んでいるのか分かりませんか!?」
「オレがキライだからでしょ」
「誰がそんなことを言いましたか」
ってうか急展開。
「本当はご存知なのでしょう? 少佐は私のことなら見なくても何を考えているかお分かりだと以前仰ったじゃないですか」
「……」
まぁね、その通りだけど、でも、そのタネ明かしをここでやっちゃあ面白くない。
「でも、あえて私の口から聞きたいのですか? だから、言わせようとしている?」
「んー、それでもいいけど、今回は聞かないようにする」
「!」
「おやすみ。また月曜日にね」
「は!? 少佐、帰らないおつもりですか!?」
「うん、放浪の旅に出る。自分探しでもしてくるよ。それと何かいい壷あったら買ってくる。今回ボーナスが多かったんだよね……」
「……」
「浮気はしないよ。あっ、でもいい男にナンパされたら抱かれてもいいかなって思うけど」
「……どこまで愚かな」
「ひどい」
「でしたら、私は本当に浮気しますからね。こうなったら誰でもいいです。上官狙いでいきます」
ははは。どの口がそんなこと言うか。……懲らしめたい。
「少佐は本気にされていませんね? 私が他の人と出来ないと思っているでしょう?」
「思ってるよ。だってコナツ、そういう子じゃないもの」
「でも、心と躰は違うんです!」
「……?」
やっと喋るようになったと思ったら色々複雑な事情があるみたいだね。きっと自分でも処理しきれなくなってた問題を抱えてるのか。だって表情は至って真面目。っていうか悲痛に近い。……お前をそれだけ苦しめている原因って何だろう。
そしたらコナツは気持ちを落ち着かせるために一度深呼吸してから口を開いた。
「二通りあります。心では求めてしまうのに、躰が拒絶する。心ではいけないって思うのに、躰が相手を欲する」
「!」
「少佐に対しては、今は前者です」
「はい?」
なにやらおかしなことになってきたけど。っていうか、躰が拒絶って、それってひどすぎじゃ? 後者のほうがかっこよくない? 躰が嫌がるって、もうアウトじゃん。救いようがないじゃない。
やっぱり傷心の旅に変更。むしろ傷心の夜遊びにしようかな。でも、
「それもこれも少佐のせいですからね! だから、私は他の人を選びます」
「意味分かんない」
ちょっとやそっとの尋問じゃ終わらなさそう。問い詰める価値はあるけど、コナツを追い詰めるつもりはなくて、なのに、他の人を選ぶとか言ってるから、オレ的にはコナツが他のヤツと寝るなんて考えられないことで、いくらオレが拒絶されてるからって簡単に「ハイ、そうですか」って認めるわけにはいかない。いかないんだよ、コナツ。
「私がどれだけ苦しいか……」
「……ちゃんと聞くよ。もしオレが悪いなら謝るし」
まぁ、オレにも非があるんだよね。仕事しないで困らせてるのも事実だし、ちょっと我儘言っちゃったり、普段からコナツの手を煩わせたりしてるから嫌になったのかなって反省することもある。
そしてオレはおとなしくコナツの言い分を聞こうと耳を傾けた。
しっかり聞いて、コナツが抱えている重みを少しでも取り除かないと、ますます思い詰めて気苦労の耐えない子になって、小さな頃から厳しい状況で育ってきたのに、安らぐ場所がないのも可哀相。オレにも責任があるし、少しでも状況をよくするために協力と努力を惜しまないようにしたい。オレだっていつも勝手し放題じゃなくて、お前を幸せにすることだって出来るのに、いつも混乱させてばかりだね。
そう思っても今すぐ言葉には出せなくて、オレはただコナツの出方を待っていた。そしたら、コナツは何かよく分からないことを言い始めた。
「私の躰、少佐が近寄るだけでビリビリと静電気を感じるみたいな反応を示すようになったんです」
「……」
「それか、毒を浴びて痺れるような感覚にもなります。気を抜くと意識が遠のいたり、脚から力が抜けます」
「……」
「倒れそうになるし、困るんです」
「……」
「少佐、猛毒放ってないですよね?」
「猛毒ー!? 放つって、オレは毒蜘蛛? 蛇!? 猛毒キノコ!? それか物質!?」
毒吐きキャラでもないつもりだけど!?
「だって、凄まじい勢力です。半径1メートル以内に近寄られると、私、ビクビクってなって立っていられなくなります」
「えええ!?」
「だから、こっそりザイフォン放って私を苛めているのかと思ってました」
「してないし!」
なんでそんなことしなきゃないの? オレにはコナツをそういう意味で攻撃する理由はないんだけど!?
「変ですね」
「あ、だから仕事中に”来るな、寄るな”だったの?」
「はい。正直言って、姿見るだけでも駄目でしたから」
「なにー!?」
そこまで嫌われてたとは。そんな拒否反応出るまでになっちゃったんだね。
「ですが、私がおかしいと思うのは、その感情が憎いとか嫌いというのではないことに気付いたんです」
「ん?」
「こう、ふわふわしてきて、スゥっと意識が遠のくような時もありますし、ビリビリというより、ゾクゾク? ざわめいたり……心の中がキューッとなったり」
「……」
「そして私は少佐を見ると、躰の一部が異様に反応することが分かり……」
「えっ、何それ」
「どうも……欲情……というか、すみません、不謹慎ですが、犯されたいと思うように……」
「え」
「しかも、酷く……激しくされたい、乱暴にされるのがいい……とか、ああ、私、何なんでしょう!?」
「何なんでしょうって、それ、こっちの台詞……」
「私、おかしな性癖に目覚めてしまったんでしょうか!?」
「かも?」
「どうしましょう!」
これは……どういう悩み相談になってるのかな。オレはどうすれば?
「なので、少佐に近づいてはならない、近づかれても駄目、見ても駄目、見られたら最後だと思うようになって、つい、邪険な態度をとってしまい」
「はぁ。まぁ、嫌われるか好かれるか、どっちかだと思ってたけど、つまり、この場合拒絶じゃなくて、オレは壮大に好かれてるってことなんじゃないの」
「それを認めたら負けです!」
負け? 勝負!? 誰と勝負!?
「なので、少佐に抱かれている間は、少佐だと思うと気が狂いそうになるので、違う人だと思うようにしてました」
「へ!?」
「そうしたら我慢が出来るように」
「ちょ、ちょっと待って、オレを誰だと思うようにしてたの」
「知らないおじさん?」
「ぶーっ!!」
それもショック!? どういうこと!? なんでオッサン扱いなの? オレは知らないオッサンになってたの? マジで!?
「そうでもしないと躰がもちませんよ」
「だからってその例えはないんじゃない!? ……どうりで無反応だったわけだ。変だ、変だとは思ったけど、まさかオレが知らないオッサンにされてるとは想像もつかなかった」
「すみません。確かに、本当に知らない人だったら絶対無理でしたが」
「それは……そうだろうけど」
オレもね、大体のことを予想したり推測する力はあるんだけど、さすがにそれはないわー。正直言ってオッサンにされてるとは思わなかったし、せめてお兄さん? とかならまだしも、アヤたんならオジサン扱いでもいいけど、オレ、まだ心は17歳よ? それなのに酷いよね。
「はー、なんか仕事するより疲れた気がする」
ショックがでかい。なのに、
「仕事? いつもしてないじゃないですか」
コナツがオレを苛める。
「例えばの話だって」
「少佐に仕事を例えにされるとは想像もつきませんでした」
「言い返された」
「すみません」
「オレはどうすればいいんだろうねぇ」
「私もどうしたらいいのか分かりません」
「近づいたら嫌なんでしょ?」
「い、嫌では……」
「ちなみに、近づいてみる?」
「え、あ……はい。念のため、一歩から」
「何ソレ」
そしてオレは一歩近づいた。コナツは、ほんのちょっとびっくりしたような顔をしてたけど、特に大きな変化はなかった。オレは少し笑ってから、
「じゃあ、始めようか」
予告もなしに足早にベッドに寄って、ベッドの真ん中で上体を起こしていたコナツを押し倒した。
「!! !?」
不意打ちを喰らったコナツは、最初は無言で目を見開いてたけど、
「めちゃくちゃ近いね」
そう言ったら、
「アア……ああああ!」
パニックを起こしたように暴れ始めた。
「おーっと、おとなしくしてればいいのに、それは刺激したくなる態度だなぁ」
オレはわざとコナツの首筋に噛み付いた。ここが弱いのは知ってる。で、やっぱり、
「ひぃぃぃぃぃぃ」
物凄い反応だった。
「嫌がってるんじゃないもん、何してもいいよね?」
「あううううううう」
「あららー、言葉にならないってやつ?」
「うぁぁぁぁ」
まだ何もしてないのに。
「あれー、ほんとにピクピクしちゃって、途中で失神しないよねぇ? 気が付いたら気を失ってたなんて嫌だよー?」
「ふ、ふぁっ、ふあ……」
「通じるように喋って? っていうか、酷くされてもいいって言ったんだから、今夜はその方向でいく?」
「はうううう」
……変なコナツ。さっきの無表情とどっちが変って聞かれれば、今の方が変かも。
「なんて、乱暴はしないよ。もう既にいっぱいいっぱいだもんね」
失神されるのも嫌だし、奇声発せられても調子狂うし、普通でいいよね。コナツは溺れてる人みたいになってるけど、かろうじて息出来てるし、死にはしないだろう。
だから。
オレはコナツの躰を目一杯撫でてさすって、舐めた。触るたびに電気流れたようにビクンって飛び上がって、演技にしては大袈裟だよって注意したら、目に涙をためて、コナツは何も言えなくなってた。
感じやすい胸に手を当てたら、なんと心臓がバクバクいってるのが分かって、コナツはマジなんだって気付いて……胸に耳を当てたら心拍数上がってて、血圧上昇してるんじゃないのかって驚いたくらい。
「大丈夫?」
心配になってきちゃったよ。
「でも、またオレを知らないおじさんだと思わないで」
すり替えられちゃたまらない。オレはちゃんとオレであることを認識されたくて、おでことほっぺにキスをした。そしたら、コナツは返事の代わりにオレの躰に腕を回してきた。……ぶるぶる震えながら。
「可愛いなぁ」
キスしてもいいかな。したら泡吹いて白目剥かれそう。やめとくか。でも、しないことには先に進めない。さっきキスした時はどっちかっていうとくちびる引き結んで舌入れようとしたら押し返されたんだよね。あからさまでしょ。知らないオジサンじゃ嫌ってことじゃん?
どうしようか迷ってると、コナツはくちびる震わせて何か言おうとしてる。そんなワナワナしてる顔見たらオレの方が焦るよ。どうしたの? 何が言いたいの?
「ち、ち、ちかすぎ、ます」
「えっ」
「しょう、さ、が、ちかい」
「そりゃそうじゃない。オレたち、今、何してると思ってるのー?」
「む、むり」
「はあ?」
あのねぇ、今からオレはコナツにもっと凄いことして、最終的にはお前の中に入るんだけど?
「もう無視して続けよう」
「ひぃっ」
首とか胸とか指も舐めて、太腿の皮膚吸って、かじって、両脚持ち上げて受け入れるところひたすらいじくってたら、コナツは悲鳴上げまくって別人のようになってた。
「これ、挿れるけど、暴れないでね」
自分のものを癖で2〜3度扱いてみたけど、その必要はなかったと思うほど、我ながら驚くくらいの張り具合。それを他人事のように見ながらコナツの尻に先端を当てたら、
「キャーッ」
って。……その反応は……。
「もう何回もしてるでしょ、挿れてるでしょ。初めてじゃないんだから、そんなに驚くことないじゃん」
「あ……ああ……」
なんか、初めての時を思い出すよ。あの時より今は先が分かってる分、かえって怖いのかもしれないけど、コナツの興奮状態はただごとじゃない。狼狽ぶりも凄い。
「しょ、しょうさ」
「なぁに」
「ちゅ……うと半端だ、から……いけな、い、のかも。もっと……私が……もっと」
「?」
「わた、しが、私から、あなたに近づけば」
「……」
そう言われて、オレはコナツを抱き上げて体位を変えた。その間も奇声を発していたけど、被害が出るほど暴れてたわけじゃなくて、すぐに収まった。
「オレにしがみついて。自分から思い切りね」
「……はい」
「……これね、結構奥まで入っちゃう体勢なのよ。それでもいい?」
「……」
オレから近づくとコナツはびっくりして引いちゃうなら、自分から近づけばいいんじゃないかってことで、そういう環境を作るべく、まずは座位にしてみたら、コナツは素直に抱きついてきた。首に腕を回してないと後ろに倒れちゃうからね。気も抜けないけど、その方がちょうどいいのかもしれない。もし気を失ったらオレが支えるからいいけど。
だけど……。
挿入を開始したら、コナツはオレの首を締めてきた。しかも、奇声を発しながら。
「コ、コナツ!」
オレはもう何度、この子にこんな目に遭わされてるのか。
「ひゃあ、ひゃあ! ああっ」
オレはコナツの腰を抱いてたけど、急遽腕をとってその腕をコナツの後ろに回して、オレの片手でひとまとめにして、空いた手で腰を支え、再度下から突き上げてやると、コナツは、
「こんなのだめっ」
とか、
「倒れる」
とか色々喚いてたけど、まだ先しか入っちゃいないよ。コナツから近づくってのは、無理だったかな。なら、しょうがない。
「力抜いてごらん。ただ、こっちから攻めるけどね。だからオレに命令して」
「!?」
「どうして欲しいとか、こうして欲しいとか、ぜんぶ言って。言われた通りにする」
「うう」
自分から言ったのなら、それを拒絶することはないでしょ?
「さぁ、どうされたいの?」
「……」
「言って」
「……っ」
「もうちょっと気持ちが昂ぶらないと言えないかな?」
「……ぅ」
「姫様、ご命令を」
「!?」
「今のコナツちゃん、物凄く可愛いよ。可憐な少女みたいだ」
「わ、私は男……」
「うん、こことここを見れば分かる」
オレが胸と股間に視線を下ろしたら、
「見ないでーっ」
って、何を今更。
「ほら」
「じゃあ、もっと……もっと奥まで……私からは動けないからっ」
「分かった。少しずつ?」
遠慮して言ってみた。こう、宥めるように、あやすように、優しく、穏やかに。なのにコナツは、
「違う! 串刺しにするみたいに!」
だって! ちょ、その可愛い顔からその言い方!?
「それって、受け入れる側の台詞じゃないような」
激しくされたいっていうのは、このことだったのか。たぶん、痛くてもいいって言うんだろうな。コナツが痛がるのは忍びないけど、それを望んでいるのなら、そうしてやりたい。
コナツは後ろ手で拘束されたのがいたく気に入ったみたいで、
「やっぱり少佐に支配されるのが好きかもしれない」
と言っていた。
だけど、オレは敢えてこれをSとかMとか、そっち系の言葉では表現しない。それとは少し違うような気がするから。
動きながらのキスをせがんだり、胸揉んでとか、オレも両手がふさがってるんだけどね、コナツは無茶な要求をするから叶えてやるのが大変。でも、あれこれ言ってくるからコナツも気を失わずに済んでるっていうか、意外に楽しそう。
酷くされたいなんて言いながら、実は命令するのが好きだった? 本当は女王様かもしれないねぇ。ほら、だから、お互い心……むしろ躰の中に潜んでいるものは計り知れない。
でも、限界まで来て、もう駄目だって叫んで、正常位でイキたいって言うから、うん、本当に正常位がいいって言葉に出したんだけど、コナツをそっと寝かせるようにしてベッドに置いた。扱いて抜く必要はなさそうで、
「もうイケる?」
って聞いたら、頷いて、さっきまでああだこうだって言ってたのに、最後はしおらしくてね、こっちが本物のコナツかなって思って、オレは更に腰を入れて、奥まで揺すった。
オレに何度も、
「イッてもいい?」
って聞きながら、オレがいいよって答えても、
「一人でも?」
って再確認してきて、
「オレも後を追う」
そう言ったら、
「もう我慢出来ないから、先にいきます」
だって。
その後はちっちゃな声で「あ」と言っただけで達しちゃった。オレは思わず、
「コナツちゃんってイク時も上品だよね」
褒めたよ。だって本当のことだもの。
今回は珍しく失神しなかったから、それも褒めたら、
「私、変じゃなかったですか?」
って、いつものコナツに戻ってた。……なんとなく安心。

どうして急にコナツがこんなふうになったのか、終わってから知ったんだけど……オレの胸に手を当てて、
「傷……」
凄く心配そうに呟いて。
「ん? ああ、あの時の? もう大丈夫だけど」
「普通なら即死ものなのに」
「あはは。そりゃ剣が貫通すればねぇ。人間なら駄目だったねぇ」
「もう無茶したり、下手に遊ぶのはやめて下さい」
「……分かったよ」

この間のいざこざで、司教たちの足止めをする時にやっちゃった怪我は、本当なら致命的な傷なんだけど、オレたち黒法術師にとっては別状はないわけで。だけど、コナツにしてみれば、やっぱり嫌だったっていうか怖かったみたい。
だから一人で思い込んで、一人で心配して、一人で勝手にオレのこと意識して、いつの間にか浸って、基本的認識が物凄く高いところにいっちゃってたらしく。
だけど、オレは本気で自分で知らないうちに毒を撒いてるのかと思ったし、放電体質になってコナツに近づくと電気流しちゃうのかなって考えてしまった。よかった、そんなことなくて。
しかしコナツの思い込みとか、一途な想いって熱いよね。

アヤたんにも心配されたけど、これってさ、やっぱりオレは愛されてるってことでいいのかな。……いいよね? だよね?

さて、これで問題解決? 今日はこのままコナツ抱きしめて眠るけど、明日になってまた騒がない? 月曜日にまた避けられたらどうしよう。でも、嫌われてるわけじゃないから、大丈夫だよね!


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