ヒュウガが毎晩コナツを抱いている。
こんなふうに関係が激しくなったのはヒュウガなりの理由があった。 その独占欲は、たとえコナツが職務で体力を使い果たしていても強引に躰を開き、コナツが戸惑っているのを、 「拒否権ないから」 と言って、ベッドに押し倒した。 そう言われてしまえば従うしかないのだ。 いくら抱かれる側とはいえ、ただ人形のように横たわっているわけではない。 なにしろヒュウガはコナツが疲れているときに限って激しく抱き、その荒々しい動きにコナツは全身汗だくになって耐えている。 もともと性的興奮を受けると失神しやすい体質なのか、射精するたびに痙攣して気を失ってしまい、そうならないように必死で意識を保とうと力を振り絞る。若いから体力があるだろうという見解は通用せず、コナツは終わったあともフラフラになりながら後処理をしようとするのだった。 だが、後処理をするのは専らヒュウガの役目で、シャワーに連れて行くのもコナツを抱き上げて行き、丁寧に洗う。決してコナツを乱雑に扱っているわけではないのだが、何よりもコナツは毎晩自分が相手にされていることを不思議に思っていた。 「どうして私なんですか」 そう訊ねると、 「なんでそんなこと聞くの」 ヒュウガが逆に聞き返す。 「私は誰かの代わり……ですか?」 「またそんなこと言う。いつも思うけど、本気で言ってる?」 「はい。でなきゃ毎晩こんなことするはずないですよね」 「コナツだからするんでしょ」 「分かりません」 「分からないだろうな。……本人はね」 「?」 大体、ヒュウガとて何人もの誘いを断ってコナツの元に来ているのだ。その真意が掴めないコナツは、仕方なく上司が暇つぶしに部下の部屋に来て性欲を処理している、としか考えていないのだった。 そして翌日もヒュウガは強引にコナツの部屋を訪れ、開口一番、 「通い妻ならぬ通い夫」 と言ってふざけているのだからムードも何もなく、コナツはヒュウガが本気ではないのだと思わざるを得ない。 コナツ自身も服を脱がされながら、 「自分でします」 事務仕事のように言ってしまい、 「ちょっと、人の楽しみ奪うなんて!」 ヒュウガが憤慨する有様だった。 「あ、すみません、じゃあ、もう1回着ます」 「なにボケてんの」 「ですよね」 漫才のように会話を繰り返す二人だったが、キスをし始めれば途端に甘くなっていった。それはヒュウガの先導が巧みでテクニックもあり、色事師のようにコナツを酔わせてゆくからだ。 「コナツ、いい匂いがする」 シャンプーの残り香か、元から持っている体臭か。 「香水?」 「いいえ」 「ふーん」 「……」 一言、二言、何かを言っては口付けの回数を増やしていく。 その度にコナツのなめらかな肌に残る淡い色の跡は、ヒュウガを更に興奮させ、欲望は留まることを知らずに加速する。 「あー、昨日のが残ってるね。もしかしてこっちは一昨日のかな」 「いつのものなのか分かりません」 「だよね、毎日何処かに付けてるもんね」 「……はい」 「少しだけ慣らすから、もう挿れてもいいかな」 「えっ」 「我慢できないからさ」 「少佐?」 余裕のない相手ではなかった。いつもならたっぷりと前戯に時間を掛けてくれるし、毎晩こんなことをしているのだから、そろそろ満腹とばかりに飽きてくるものだと思っていた。我慢ができないというのはどういうことだろう。 「耐えて」 「!」 あの衝撃が来るのだと覚悟した。 見ればヒュウガの雄の印は完全な欲望の塊となり、硬く聳立している。これが自分の中に入るのだと思うと、いつものことながら恐ろしくなったが、それでもコナツはその激しさが欲しいのだった。 「最初は痛いだろうけど」 「構いません」 ローションと指で慣らされて、受け入れる準備をした。だが、挿入時の痛みは耐えがたいものがあり、コナツはヒュウガが腰を進めるたびに悲鳴を上げるか歯を食いしばって懸命に痛みを逃そうとする。しかし、前立腺を刺激されれば否応なしに達してしまうため、浅く突こうとするのを、 「駄目です、少佐! そのまま奥まで来て下さいッ」 そう叫ぶ。 「随分いやらしいことを言うんだね」 「お願いです。自分だけが終わってしまうのは嫌なんです」 直接イイところを穿たれて瞬間的にオーガスムを味わうのもいいが、もっと長く交わっていたい。出来るだけ熱く繋がって相手の存在を感じていたい。 「じゃあ、ちょっとキツイかもしれないけど、続けるよ」 「は、い」 心もとない返事を聞きながらヒュウガはゆっくりと大きなものをコナツの中の更に奥へと進ませる。 「うッ」 「……やっぱり無理かな」 「いいえ、大、丈夫……です」 「あんまり酷いようならやめる」 「やめないで、下さ、い」 そうして根元近くまで押していくと、 「ア! アッ! アアッ、すご、い……凄いっ」 コナツが下腹部を押さえて身を捩じらせながら喘いだ。 何が凄いの、とは聞けなかった。 まだ幼さの残る顔が色っぽく変貌し、眉根を寄せて小さなくちびるから淡い濡色のような声が漏れるのだ。このときのコナツの顔が好きだった。それを見ればヒュウガの中に燻る性の欲求がギリギリと高ぶり、今、自分が犯している狭いところをぐちゃぐちゃに掻き回したいという加虐心に火が点く。 「凄いと言ってるコナツのほうが凄いんだけど」 吸い付くように絡んで締め上げる中の良さに関しては言葉もない。 「まだ全部入ってないよ」 「う、あ……っ」 「痛い?」 訊かれてコナツはすぐに頷いたが、 「だけ、ど、気持ちいい……です。私の中が……少佐でいっぱいに、なります」 「そうだね」 「ああ……ッ」 コナツは甘美な声を上げた。そこからひどく敏感になって立て続けに「いい、気持ちがいい」と発して指を噛んでみせたり、キスをねだるようになった。 「コナツ、こういう仕草は他の人に使っちゃ駄目だよ」 「……え?」 「真面目なコナツがこんな淫らになるなんて誰も想像つかないだろうなぁ」 ヒュウガがしんみりと呟いているが、 「私がこんなに気持ちよくなるのは相手が少佐だからです」 「!」 「少佐じゃなければこんなふうにはなりません」 汗に濡れた肌、潤んだ瞳、淡い色のくちびるからたまらない台詞が紡ぎ出される。 「コナツ」 「誰かと寝るなんて、考えられない」 独り言のように呟いてヒュウガの腕を掴んだ指先は、自分はこの腕しか求めないのだと語っていた。 「ああ。悪いけど、コナツは誰にも渡さないよ」 目の前に横たわる美しい躰。 これを他の男に晒すなど絶対にしたくないし出来るはずもない。 「私は、少佐だけのものです」 本当はコナツもヒュウガに同じことを言ってほしいと思ったが、立場上ヒュウガを縛り付ける権利はないと諦めている。 しかし、コナツはコナツで複雑な思いを抱いているのだ。それは、本心では嫉妬をしているがヒュウガほどの男であれば、もっと女性を相手にしてもいいと思っていることだった。要するに自分の上司である彼を他の誰かに見せびらかしたいのだ。この逞しい裸体とテクニックをもっと誰かに知ってほしい、そして驚いてほしい。まるで恋人自慢をするような行為にも似ていたが、彼の色気や強さには誰もが執着するだろうという確信があって、こんなにいいものをここだけの話にしておくのは勿体ないと思ってしまう。 実際に外で遊んで来れば嫉妬をしてしまうが、それでも文句を言う資格などなく、 「少佐が私以外の方とこんなことをしても構いません、ただ私が劣っていることを比べないで下さい」 寂しい気持ちを抑えてそう言うしかなかった。 「比べないよ。無理だもの」 ヒュウガはそう返すだけだった。 それはコナツ以外の人とベッドを共にすることはないという約束には聞こえなかったが、事実を聞くのが怖くて何も言えなくなってしまった。 ヒュウガの場合、誰を抱いてもコナツほど満足することはないのだ。もっとも、今は「ワンオブゼム」なのか「オンリーワン」であるのか明かすことはない。ただ言えることは、 「躰の相性が合うんだよね」 言葉の通りである。 すると、コナツもそれには同意し、 「私は少佐との行為で悦ぶことを覚えてしまいました。一番強烈なものを最初に知ってしまった」 照れながら呟いた。 自分が尊敬する相手に抱かれることがスタートになれば、あとは誰と経験してもつまらないと思う。もっともコナツに他人との経験はないが、誰かと関係を持ってみたいという欲望も皆無なのだ。 「だから、酷くされてもいいんです」 「コナツ……」 「痛いのが好きだというのではなくて、少佐になら何をされても……」 その続きが聞けることはなかった。 ヒュウガはコナツから自身を抜くと、素早い動作でコナツを引っくり返して尻を抱え、再び中を抉るようにぐいと圧していった。 「あっ、いやッ!!」 コナツの背がしなる。腕ががくがくと震えて自分を支えることも出来ずに不安定な状態で首だけを捻って振り返ると、 「いい眺めなんだよね」 ヒュウガは低く呟き、ゆっくりと腰を回した。 「少佐……っ」 「今ならいつもより挿入るね」 「う……ッ」 「大丈夫、ちゃんと気持ちよくしてあげるから。こんないい位置でオレばっかり楽しむのは嫌だし」 宥めるように言うと、 「……じゃあ、今、どうなっているのですか?」 コナツはおかしなことを聞き始めたのだった。 「コナツ?」 「そこがどんなふうになっているか教えて下さい。私には見えない」 眺めがいいと言うなら、どういいのか知りたいと思った。 「いやらしい質問」 「少佐は見えているのでしょう」 「見えるね、ぜんぶ」 「言って下さい、どんな言葉でもいいです」 「コナツは大胆だねぇ」 「こうなったのは少佐のせいですから」 「ああ、そうだろうね」 ヒュウガが結合部を指でなぞり、自身を自分の手で押さえながら突き引きを繰り返した。 「……ッ」 「コナツが自分の目で確かめることが出来たらいいのにねぇ」 少し角度を変えるとビクリと躰が反応する。 「狙ってないからイクことはない。でも、それに近いことはする」 「!?」 コナツは上位が苦手だと言って嫌がることはあるが後背位は拒絶しない。多少の不安はあってもヒュウガがドッグスタイルを好むのだ。 そして律動を強めたあとに、 「ちょっと引いてみようか」 抜こうとして引くと、 「駄目です、抜いちゃ駄目!」 コナツは慌てたように腰を動かす。 「おっと、締まる。やっぱりいいねぇ」 自分の中から出て行かないように無意識に締め付けてしまう、この刺激法と抜去法でヒュウガは思うままにコナツの下半身で快感を得た。コナツは肉体的な快感と心理的な描写が相まって精神が乱れてゆく。 そうしてヒュウガが事細かに繋がった部分の状態を口で言ってやると、コナツは囁かれるたびに羞恥に耐えているのを、 「知りたいって言ったのはコナツでしょ」 わざと言う。 「さぁ、もっとイイ子になってもらおうね」 先端ぎりぎりまで引いていき、コナツはそれを遮るように絡みついて離すまいと力を入れる。 「あ、あ、あ……」 小刻みな喘ぎは女の嬌声にも似ていたが、後ろから抱けば女性と間違えそうになるほど肌は柔らかくラインも美しい。 「可愛い」 ヒュウガが何度もそう言ってしまうのは仕方が無かった。だが、ヒュウガはコナツを女の代わりにしているのではない。男の子である彼を啼かせる愉しみはコナツならではの魅力があるからこそ出来るものであり、様々なスタイルを試したくなる。 その証拠にヒュウガは再び体位を変え、コナツを正常位に戻すと肩や背中に枕やクッションを置いた。自然にリクライニングした形になって、ヒュウガはコナツの両脚を開いて掲げ、局部がよく見えるようにした。その間に割って入り、キスをしながらペニスフェンシングという互いの性器をこすり合わせる行為をしてコナツの反応を見た。 「いやだ、いやだ、いや」 逃げる様子もなく、まして腰を突き出して言う台詞ではなかった。 「本当に泣きそうだねぇ」 「ああ……ああああ」 「ほら、ちゃんと見てごらん、これならよく見えるでしょ?」 「こんな、こんないやらしいことっ」 コナツが叫ぶとヒュウガは平然として、 「あれー? まだマシだけど? まぁ、コナツがオレのを咥えてるのは自分では見られないからねぇ」 残念そうに呟く。 口での奉仕も躰を繋げているところもコナツは自分で見ることが出来ない。その視界的興奮を味わえるのはヒュウガだけである。 それからは愛撫と睦言や何度目かの繋がりによって同時に達したが、その際にコナツが叫んだ言葉も独特の響きがあった。「中に出せ」というのを「奥に飛ばして」と言ったのだ。 「後からが大変だから」 ヒュウガが制しても、 「今は欲しい、後のことはどうにでもなる」 そう言ってきかない。 「いいところで強情だ」 ヒュウガは楽しそうに残さずコナツの中に放ったが、奥に思い切り射精するという事実上の性的興奮は言葉にならない。全身に快感が走るのだ。 そんな興奮が味わえるのはコナツのみであった。 だから毎夜立て続けに抱くのをやめられないのかもしれない。 後戯の間、おしゃべりをしながらヒュウガが今まで溜めていた言葉を口にした。 「コナツはね、ほんとにたまらないんだよ。こういうことを商売にしてる人ならともかく普段は真面目でしょ。優秀だし、有望。それがこんなになって」 「それは……」 褒められているのか、よくない言われ方をされているのか分からない。もし本性は酷い淫乱だと表現されているなら心外である。 だが、ヒュウガは悪い意味で言っているのではないのだった。 「抱くたびに違う反応してくれて、すごく新鮮だし飽きない。ギャップもいい。可愛いからもっと啼かせたくなる」 「少佐……」 「コナツは成長期で日々変わっていくから、それを逃さないためにも毎日見てないともったいないんだよね」 「だから毎晩私を……?」 「そう。普段一緒に居るだけでもいいんだけど、これが一番魅力的だし、他の人は知らないことだから」 真面目に仕事をしている姿は皆知っている。だが、ベッドの上での乱れようはヒュウガしか知らない。 「私は少佐の性欲が強いのだとばかり思っていました」 「それはどうかなぁ。オレは別にそこまでじゃないよ。性欲で言ったら本当は結構淡白」 「えーっ!」 「……凄い驚いてるのはなんで?」 「信じられないからです!」 「オレどんだけいやらしい人になってんの」 「違うんですか!?」 「ひどい。ここまで執着するのはコナツだけなんだよ? そりゃあ美男美女には目がないけど」 「……」 「だからねぇ、コナツのことは毎日抱かないと気がすまなくなってるワケ。理由はそれだけじゃないけど」 「でも私がもちません」 「そうだろうなぁ」 そんなふうに事後も会話が出来るうちはよかったのだが、さすがに毎回こうでは躰がついていかず、或る日、始める前の熱いキスで既にコナツの意識が朦朧としてきたことがあり、毎晩手を出すのも限界になっていた。 だから、時にはキスだけで終わらせることもあるし、ただ添い寝するだけのときもある。そんなときは恋愛の処方とばかりにさまざまな駆け引きで愉しむ事を覚えた。 一日じゅう一つのグラスで飲み物を飲んだり、食べ物に関してもヒュウガは自分の舐めている飴をコナツの口に入れてみたり、間接キスという行為を何度もを繰り返す。そういった接触以外にも自分が相手に言って欲しい台詞を遠慮なく打ち明けて耳元で囁いてもらったり、遊びを重ねていくことで関係を深め、存分に活用するのだ。 何を提案するのかはその日の気分によって決まる。どれもスリルがあって、そして大人の味がするものだった。 「さぁて、今日は何して遊ぶー?」 「少佐、もう夜中の12時になりますよ」 今宵もまたこうして愛を試される。 「これからが大人の時間じゃん」 コナツはまだ未成年で適当な誘いではなかったが、数日躰を交えていなかったためか、 「じゃあ、今日は私を抱いて下さい」 そんなことを言ってヒュウガを驚かせた。 「そうか、そう来るか」 「ええ」 エロティックな罠は、二人で楽しむためにある。 「どうなっても知らないよー?」 「それより私が最中におかしなことを言っても笑わないで下さいね」 「いいよ、言えば? コナツは毎回言うこと違うから、聞くのも楽しいよ。まぁ、日々卑猥になってる気がするけど」 「そんなばかな……」 「それにねぇ、今日はどんな顔してくれるのかなぁ」 「えっ、そんなの私にも分かりません」 「だよね。それを見つけるのがオレの楽しみだもんな」 ゲームはいつ何処から始まっているのかは分からない。既に開始されていることは確かで、全てを受け入れる覚悟は出来ている。 そう、愛ひとつあればすべてが決まってしまうのだ。 「ほんとに可愛い、コナツ」 「可愛くないです」 「アップに耐える子だよねぇ」 「はい?」 「近くで見れば見るほどイイってこと」 「それは少佐のほうでは?」 「ほら、そう言ってくるところがまた可愛いんだって」 「もうっ」 二人は24時きっかりにキスを始めた。 偶然だったのかどうかは知らないが、くちびるを合わせながら秒針が重なったのを見たとき、ヒュウガは何かを思いついた。 「今日もちょっと遊んでみようか」 「何ですか?」 「今からオレはコナツを抱くけど、少しだけ遊びを取り入れる」 「なんでしょう」 「今だけ限定でね、コナツがオレにしてほしいことを言って貰おう」 「えっ」 いつものごとく、ヒュウガは姦雄のようだ。こういったことに関してあれこれと思いつき、それを愉しむ術を知っている。 「オレもコナツにしてほしいことを言うから。但し、それを実行するのは時間指定ありってことで」 「どういう意味ですか?」 「じゃあ、先にオレからのお願いを言おう」 「はい」 コナツはヒュウガの言うことに耳を傾けた。 「オレからのお願いは、きっかり20分はオレの上に乗って貰うこと」 「えーっ!!」 それは無理だと思った。上に上げられることはあっても出来ないからとものの数分で下ろされるのに20分とは。 「今日限定だもん、不可能とは言わせない」 「で、でも……本当に無理なものは無理で」 「大丈夫、大丈夫」 「その自信はどこから来るのです」 「銀河系から?」 「意味が分かりません!」 ヒュウガは先を読んでいるのだ。 これから行われる長い前戯による愛撫で、コナツの心と躰は甘くとろけ、ヒュウガが上にあげたときには危うい色香で誘うだろう。「嫌だ」「出来ない」と言っているのは今だけなのである。 「で、コナツの望みは?」 「えと、えっと……」 「たまに無理言ってみたら?」 「いいんですか?」 「何でも聞いてあげるけど」 「ええと、あの……」 視線を逸らして言いにくそうにしているのをヒュウガが不思議に思っていると、 「今までしたことのない体位を……」 とんでもないことを言い出したのだった。ヒュウガが驚いたのは当然で、 「マジで?」 真顔で確認をとってしまった。 「はい」 「なんてチャレンジャー」 「あ、でも、体位なんて他にあるんですか?」 今まで様々な形で抱かれ、コナツは一通りこなしてきたと思っているのだが。 「あるもなにも有り過ぎるけど。どれにしようか迷うくらいで」 「えっ」 「コナツで試したかったのがあるんだー。アクロバティックだけど、コナツ躰柔らかいし股関節もよく開くし大丈夫だよね」 「!?」 「安心して。裾野とかしないから」 「!?」 コナツにはヒュウガが何を言っているのか分からず、不安の余り前言撤回したくなった。もしかして墓穴を掘ったのではないかと気付いたが、時すでに遅し。 「で、それをどのくらいこなしてほしい?」 時間を聞かれて思わず、 「5秒」 と答え、 「何言ってんの」 ヒュウガにおでこを人差し指で突付かれる。 「だって怖いですもん!」 「さぁねぇ、どうだろう。怖いかもねぇ」 ヒュウガがにやりと笑った。だが、コナツは一瞬怯んだが持ち前の強さと明るさで、 「でも気持ちよくして下さるなら楽しみです」 そう言ってやった。 「お互いにね」 二人はこれ以上ないほど艶冶な会話を続け、熱い夜に溺れてゆくのだった。 |
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