pinkie square


ミカゲがいない。
テイトはいつも肩に乗っているミカゲの姿が見当たらず、必死で教会の中を探していた。朝起きたときは隣に居たし、朝食のときもいた。午前中はずっと肩の上に居たというのは記憶にある。問題は昼過ぎてからだった。昼食を食べてから居なくなったのだ。ほんの数分だけなら心配はしないのだが、もう数時間にもなる。ミカゲが居ないということは、よからぬ事態が起きている可能性が高い。またコールが出たのか、それとも。
「ああ、テイト君、どうしました?」
カストルが通りかかり、テイトに声をかける。
「カストルさん……ミカゲがいないんです。教会に不穏な動きはないですか?」
「特に。……さっき会ったラブラドールも何も感じていなかったようですが」
「そうですか。それならいいんです」
「探すの私も手伝いましょうか?」
「いえ! 大丈夫です、オレ一人で探します!」
走りながらテイトが叫んだ。
ただでさえ忙しいカストルの手を煩わせるわけにはいかない。
だが、カストルにとってラゼットが大切な存在であるのと同じように、テイトにとってミカゲが大事な存在だということは分かる。それを思えばテイトの焦りは手に取るように分かるのだ。
「ちょっと、人形を使ってみましょうか。人探しなら、人数は多いほうがいいでしょう」
そう言って、カストルはこっそりシスタードールを使ってミカゲ探しを始めてしまった。ここでカストルがミカゲを人扱いしていることと、人形も人としてカウントしていることに突っ込む人間は誰も居ない。
教会の周り4キロを二周し、礼拝堂も覗いたし、西の温室も見てから一度自分の部屋に戻ったがミカゲは見つからなかった。
「おかしいなぁ。中庭にも居ないなんて。大体あいつがオレから離れることなんかないのに」
息を切らしながら困り果てていると、シスタードールが近づいてきた。
「あ、カストルさんの……」
シスタードールは、一枚の紙切れを持っていて、それをテイトに渡す。そこには、カストルの字で、
『外側の南のはずれの木に行ってごらんなさい』
と書かれてあった。
「南のはずれ?」
テイトはきょとんとして声に出したが、シスタードールは、南のほうを指差し、更に上を指差す。
「なんかよく分かんないけど、ありがとう! カストルさんに伝えて!」
テイトは再び走り出した。
「南……」
結構な距離だったが、外れまでくると、人通りも少なく、木々が密接して生えていて森のようになっている。
「ここにミカゲが?」
奥まで進むと太陽が見えなくなって、あたりが少し暗くなった。
「シスタードールの様子じゃあ、悪いことは起きてなさそうだったけど」
ミカゲが何者かにいたずらされて怪我をしているというのであれば、シスタードールではなく、カストル本人が慌てて知らせに来るだろう。
悪いことが起きていないのはいいが、どうしてここに居るのだろうと不思議に思いながら、テイトは懸命にミカゲを探した。
「つか、ミカゲは小さいから見つけづらいだろっ」
草むらに隠れていても探し出せるかどうか。
「ん、そういえば、上のほうを指差していたな」
メッセージに気付き、上を見て見渡すと。
「いたー!! デッカイのがいたー!!」
小さいミカゲではなく、デカイ何かを見つけたのだ。
「なんでこんなところにフラウが!」
実は、フラウが木の上で昼寝をしているのだった。
「つか、オレが探しているのはフラウじゃなくてミカゲなんだけどー!」
冷静に突っ込みを入れていると、
「ぴゃ?」
ミカゲの声がした。
「!?」
ひょこ、と顔を出したのはフラウの胸元からだ。
「なんでー!?」
「んあ? うっせぇなぁ。なんだ何事だ?」
「それはこっちの台詞だっつうの!」
フラウが目を覚まして上半身を起こすと、フラウ自身も、胸の上にミカゲが乗っていたことを初めて知る。
「お。お前、ここにずっと居たのか? ははーん。さてはテイトよりオレのほうが良くなったんだろ。オレが連れてきただけあって見る目あるな、お前」
満足そうにミカゲに話しかけるフラウだったが、
「何言ってやがるー!」
テイトは全身で否定しながら駆け寄った。
「あ、もしかしてミカゲを探し回ってたのかー?」
「そうだよっ。すっげー心配したんだぜっ」
「だろうな。お前、ミカゲ居ないと泣くから」
「誰が!!」
「ほら、行ってやれよ。オレはまた寝る」
安眠妨害されたとばかりにフラウがミカゲを下ろそうとすると、
「待て。オレもそっち行く」
テイトがひょいと木登りを始めてしまった。
「オレの睡眠時間が……! ったく、今日はお客さんが多いな」
フラウは叫びつつも手を伸ばし、テイトを招き入れた。テイトは安定した箇所に腰を下ろすと、
「っと、へぇ、いい眺めだな。人目につかないし、静かだし」
「中々だろ? 枝が丈夫でお前くらい細ければ二人でも寝られる。ま、オレはここには読書しに来るんだけどな」
「……」
テイトが不審なまなざしを向けた。
そばに聖書が置かれてあるが、間違いなく、それは……。
「おう、聖なる本だ。見てみるか?」
聖なのか性なのかは分からないが、テイトはうんざりして、
「要らない」
脱力しながら断った。
「なんだよ、ちょっとは成長しろ」
「そういうのは要らないっつってんの」
「ふぅん。じゃあ、オレはもうお前にゃ手ぇ出せねぇな」
「え、なんで?」
「こういうのは要らないんだろ?」
「……変な本は要らないって意味だよっ」
「変な本じゃなきゃいいんだ?」
「う……」
「でもな、これでもオレだってこの小さな胸を痛めてるんだぜ。いたいけな少年を手篭めにしちまってさ」
「どこから突っ込めばいいんだ?」
「事実だ」
「小さい胸ねぇ。そんだけ胸板ありゃ冗談にしか聞こえない。痛めてるとか有り得ないし。いたいけな少年ってオレのこと? まず手篭めとかナシ」
「ぜんぶに反論しやがった」
「当たり前だっつうの」
「そんだけ元気があればいっか」
フラウはテイトの頭にポンポンと手を置いて笑った。
「フラウ……」
いつだってフラウはテイトが心配で放っておけないのだ。親友のミカゲを失くしてからずっと落ち込んでいて、故意にフザけて怒らせてみるが、滅多に笑うことがない。それでも、
「お前が元気なのが一番」
そう言って慰める。
「……うん」
ありがとう。
まだ、素直に言えない。
顔が赤く火照るのを感じて、テイトは風に当たろうとした。
「いい風だ」
「まぁな」
「あのさ……」
「どうした」
「うん。いつも……いつ、も……」
気にして声をかけ、優しくしてくれる。首輪のせいだと分かっているが、今まで優しくされたことがないから、感謝の気持ちをうまく表現出来ない。天邪鬼だと思われても仕方がなかった。
「いつも、なんだ?」
「え。あ、うん。ええと……」
「なんだよ、はっきり言え」
「だから! いつも! えーと!」
テイトは勢いに任せて「ありがとう」と言いたかった。
しかし、言ったあとは脱兎のごとく逃げ出したい気持ちになるのではないかと思い、
「いっつもいつもいやらしい本見て、変な気起こさないのか!? ……なんて。アレ?」
聞きたくもないことを聞いてしまった。
こんなはずではなかったのに。
脱兎……いや、ウサギより早く逃げたいどころか、何処かに穴があったら今すぐ入りたい。
「何言ってんの、お前」
「だ、だって……」
「まぁ、よく聞かれるけどな」
「聞かれるー!? 誰に!?」
「ラブ。カストルにも。呆れられるっつうか」
「だよね」
何となくうまくまとめられた気がしないでもない。
「大体、読むたびに一々変な気起こしてたら大変だろうよ」
フラウは素っ気無く言い返したが、
「オレはそんなの持ち歩く理由が分かんないもん」
テイトには全く理解が出来ないのだ。
背が大きくなりたい、もっと力をつけたいという願いはあっても、まだ女性に興味を持つ余裕がない。
フラウはもう大人で、背も高く、力もある。自分の願いがある程度叶うと、人は誰でもおかしな趣味へ走ってしまうものなのか……と考えずにはいられなかった。すると、フラウはテイトの心を読んだのか、
「コレはなぁ、嫌なことを忘れるための必需品だ」
分かり易く説明した。
「あ……」
そういえば、いつも吸っている煙草も、薬なのだと聞いたことがある。
「気分転換。読んだからどうこうなんて深く考えるまでもねぇ」
あっさりと言われてしまった。
「そっか」
フラウには目に見えぬ重い枷があるように感じる。自分の痛みを人に晒すことはないが、悲しい運命に逆らっているように思えるのだ。
だから、それらを払拭するためにわざとおかしなことばかりしている。テイトもフラウの道化師振りに薄々気付き始めていた。
「分かったか、クソガキ」
「分かったよ」
「よし、じゃあ、本当のことを話そう」
「え?」
これ以上何が?
テイトが目を丸くしてフラウを見た。
「エロ本見てどうこうなるわけじゃあねぇが、お前がそばにいるとこうしたくなる」
「へ? あ!?」
フラウはテイトの顔を両手で挟むと、しっかりと固定し、くちびるを合わせた。そして一度だけ音を立ててテイトの形のよい小さなくちびるを吸いあげ、至近距離のまま、
「もっとイイことやっちまおうかな」
妖しく囁いたのだ。
「ちょ、ここを何処だと……!!」
テイトが首まで真っ赤にして慌て出す。
「木の上。暴れると落ちるぜ」
「ミカゲが見てるだろっ」
「大丈夫、ミカゲはオレの味方だ」
「いつから!」
「今日の午後から」
「そんなバカな!」
見ているのはミカゲだけではない。外は教会内であればラブラドールの庭のようなもの。草花がラブラドールに知らせるかもしれない。或いは、カストルのシスタードールが心配して様子を見に来ているかもしれない。
こんなところでテイトに手を出せば、いずれ誰かの鉄拳が飛ぶかもしれないというのに、フラウは徐々にテイトを囲ってゆくのだった。
「お前、オレの腕にすっぽり収まるんだもんな。いい感じだぜ」
「どこが! なにが!」
「いざとなったらこの中にお前を隠せる」
「なんでオレがお前のコートの中に入らなきゃいけないんだー!」
「だからいざって時だよ」
「いざって時ってどんな時……」
この先のことは、テイトには口にしてはならない内容のものだと思った。
「さ、冗談もほどほどにしないと願望と現実の区別がつかなくなっちまう」
「は? 意味がよく……」
「いいの、いいの、お前は分からなくて」
「またそうやってオレだけおいてけぼり!」
「ああ? 教えてやってもいいけど」
「教えろ!」
「しょうがねぇな。いいか、よく聞け。青姦ってのは大体相場がイテーッ!!」
何かが遠くから飛んできてフラウの後頭部を直撃した。
「だ、大丈夫か!?」
「痛ぇじゃねぇか、誰だ!」
フラウが頭を撫でながら振り向くと、
「いい加減にして下さいね? フラウ」
数メートル先にカストルがにっこり笑って立っていた。
「何の話だ」
フラウが早速しらばっくれた。
「あなた、今、テイト君にいかがわしいことを教えようとしたでしょう?」
「さぁて、何の話かなぁ? つうか、お前、いつからそこに居たんだ」
「さきほど来たばかりです。心配になって見にきたら案の定厄介なことに。間に合って良かった」
「ったく、どいつもこいつも余計なことしやがって」
「余計なのはあなたのほうです!」
フラウとカストルの攻防が続く。
すっかり蚊帳の外扱いになってしまったテイトは、
「あ、あの……」
何とか二人を宥めようと、
「あおかんって何ですか?」
とんでもないことを聞いたのだった。
「テ、テイ……」
フラウはバツの悪い顔をし、
「ほぉうら、だから余計なことを吹聴するなとあれほど……!」
カストルは下から凄んだ目でフラウを睨む。
「えっ、あ、聞いちゃいけないことだったらすみません!」
テイトはカストルに謝った。
「いえいえ、君は何も悪くないです。悪いのは、そこのデカイ男。とにかく二人とも、降りてきて下さい」
「はいっ」
テイトは素直に返事をしたが、フラウは諦めが悪く、テイトを人質にとるように抱え込むと、
「眼鏡のお兄ちゃんが怖いから降りられなーい」
似合わない台詞でごまかし、逃げようとする。
「フラウ。今度の礼拝の大司教補佐のお手伝いはあなたにやって頂きましょうね」
「おいおい、んなことしてやれっか」
「そんな言い方はバスティン様に失礼ですよ」
「冗談じゃねぇ」
「なら降りてきて下さい」
「ったく、脅すなんて最悪だな」
「最悪なのは誰ですか」
「はいはい、分かりましたよ。んじゃ降りるぞ、クソガキ」
フラウはテイトを抱いて飛び降りた。
自分で降りられる、と叫ぼうとしたが、間に合わなかった。
「降ろせよ」
屈辱に、抱き上げられたままもがく。
「可愛くねぇな」
「可愛くなくて結構!」
「クソガキ」
「このエロ司教!」
毎回飽きもせず繰り返されるやりとりを一通り並べて降ろされたのはいいが、ここでテイトは或ることにハタと気付いてしまったのだ。
視界が低い。
さきほどまで木に登っていたからではなく、身長のないテイトにとって、フラウとの差は30センチ以上。5センチ違うだけでも世の中が変わるというのに、いつも何気なく抱えられて見る世界はフラウの視線なのだ。高いところから見る視線は、気持ちがいい。
「……」
「どうした」
「あ……」
決して降伏するわけではないけれど。
「どうしました、テイト君?」
自分でも納得がいかないけれど。
「あのさ」
フラウが見ている景色が見たい。
そう思ってしまったら最後、ついに、
「やっぱりもう一回。っていうか肩車」
フラウにおねだりしてしまった。当然、フラウも目が点になったが、
「えーっ!?」
素っ頓狂な声を上げたのはカストルだった。
「ど、どうしたんですか、テイト君!?」
「い、いや、カストルさん、これには訳が! オレ、肩車に憧れてて!」
それを聞いてフラウは、
「ははーん。さては高いところが好きだな、お前」
「う……」
カストルはテイトの気持ちを理解し、
「ああ、そうだったんですか。それは分かりますよ。なら私がしてあげますか?」
自ら申し出た。
「カストルさんに肩車!? そっ、それは申し訳ないので無理です!」
「おい、クソガキ。今のは聞き捨てならねぇぞ。なんでオレはよくてカストルだと申し訳ねぇんだ?」
「だって、カストルさんは素晴らしい方で! 話しかけられるのも光栄なのに、肩車なんて!!」
テイトはカストルをベタ褒めした。カストルはにっこり笑って、
「別に私は構いませんよ? ただ、若干フラウより低めではありますけどね」
冷静に対処した。
「ひー! ほんとにいいんです。そんなことしたら天罰が下ります!」
カストルには後光が差して見える。そう思うのはテイトだけに限らず、教会の者、教会の外の者みんなが口を揃えて言う。まさに神の存在だった。
「なんだ、この扱いの差は」
フラウが面白くなさそうにブツブツ文句を言っている。
「普段の行いです」
「人形オタクのくせに〜」
負け惜しみを言うフラウだったが、
「そういうわけで肩車」
「……偉そうだな、お前」
「いや、俺じゃなく、ミカゲが」
「は?」
「ミカゲも高いところから見たほうが喜ぶんじゃないかって」
「それならいっそ高い高いしてやろうか」
「駄目だろ。っていうかオレはガキじゃねぇっての」
「ガキだろ、クソガキが」
「テメェー! うわっ」
喧嘩腰になりかけたそのとき、フラウは軽々しくテイトを持ち上げて肩の上に乗せてしまった。
いつもいつも軽くこなされてしまうのは悔しいが、腕力では逆立ちしても適わない。
「おー、やっぱいい感じだー」
テイトが見晴らしの良さに感激する。
「見事な三連コンボですね」
カストルがクスリと笑う。
フラウの肩にテイトが乗り、テイトの肩にミカゲが乗るという構図は、なんとも微笑ましいものだったが、
「ったく、手のかかるヤツらだ」
フラウが言うと、
「オレはミカゲが居なくなったから探し回ってただけだ!」
「しかしこいつは何でオレのところに来たんだか」
「それはこっちが聞きたいよ」
ミカゲの行動は謎だった。暫く考え事をしていたカストルが、
「そういえば昼食中に、フラウはこの子に何か言ってませんでしたか?」
思い出したように訊ねた。
「ああ、昼寝するって言った」
「……だからついてった? そうなのか、ミカゲ?」
「ブールピャッ」
まるで肯定しているような顔でテイトを見つめる。
「いくら何でも勝手についてっちゃ駄目だろ。いいか、今度からは一人でいなくなったら駄目だ。約束。ゆびきりげんまんだ、ミカゲ」
「ゆ、ゆびきりげんまん……」
フラウが呆れた顔で二人を見上げる。
「ちゃんと約束すれば守るよな」
「ピャッ!」
「ほら」
「……」
テイトが自分の小指を差し出してミカゲの前足とゆびきりげんまんをしているのを見てフラウは何も言えなくなった。カストルはやっぱり笑っていた。
「そうだ。フラウとカストルさんもしょっちゅう喧嘩してるけど、悪いところは直すように、決まりは守るようにって指きりげんまんすればいいんですよ。そうすればうまくいくんじゃないですか?」
テイトが名案とばかりに提示するが、
「私とフラウが指きりげんまんですか……」
「無理なこった」
フラウとカストルの間に冷たい風が流れる。
「それは私の台詞です!」
「オレだって死んでも嫌だね!」
また喧嘩が始まってしまった。
「ちょ、待って下さいよーっ、ホントに仲いいんですか、二人とも。だからこそ協定とか約束が大事なんじゃないですか。ゆびきりげんまん、結構、効きますよ!」
「……そ、そうですね、検討してみましょう」
カストルにとってテイトは可愛い弟のようなもの。折角の提案を無下にしたくはなかった。
「オレは嫌だぜ」
まったく遠慮がないのはフラウである。
「やはりあなたには次の補佐の仕事を丸一日やって頂きましょう」
「勝手に決めんな!」
「決めてもいいのです、私は」
「偉そうに!」
「ええ、何とでもおっしゃって下さい」
「このおー!」
「先日あなたが図書館に隠した新しい本ですが……」
「あ、え、もう見つかっ……」
隠した本と言えば、成人向けの雑誌でしかない。
「見逃してさしあげましょうか?」
「うーん、そうだなぁ、補佐の仕事やってもいいかな」
結局、仲がいいフラウとカストルなのである。

中庭に辿り着くと、
「いらっしゃい、待ってたよ」
ラブラドールがお茶の用意をして待っていた。辺りには明るい色の花が散りばめられて、暖かく癒され、みんな自然に笑顔になるのだ。
「わっ、いい匂い! オヤツもある!!」
テイトとミカゲが勢いよく飛び降りる。
「子供はゲンキンだな」
「いいじゃないですか」
フラウとカストルは暖かいまなざしで幸せな光景を見つめるのだった。

今日も一日、平和に時間が過ぎようとしていた。いつまでも続けばいい、そう思えるほど、優しいときが。

幸せを願うすべての人に、神のご加護がありますように。


fins