16.アイリーン

アイリーン
「私はあなたと戦いたかったわ。行くわよ!」

いや〜、私はあなたと戦いたくなかったです、と思わず言いたくなった
第二次ロストール戦役の真っ最中。いつもゼネテスの副官なので、
どうしてもアイリーンと対峙するはめに。でもいつも逃げるはめに。
前作のファーストプレイの時、アイリーン戦で逃げられると知らずに
倒してしまった時の後味の悪さ・・。一種のトラウマですよ。それ以来
絶対逃げることにしてます。前作では王城スタートをプレイしたの
ですがインフィニットはまだです。王城スタートの主人公はアイリーンの
影に隠れてどうも情けない気がします。マルーンの言うことはもっとも
だよ。将来のパートナーはよく考えたほうがいいゴブよ、って私まで
ゴブゴブ言いたくなってしまうほどの発言の適確さ。マルーンを
パーティに入れられたらよかったなあ。あちこちで言われてますが、
どうも男主人公のスタートって、女主人公に比べるといまいち
決め手に欠けるというか、地味ですね。旅先スタートが一番いいと
思うんですが、個人的に旅先スタートは女主人公でやりたいし・・。

話がそれました。アイリーンはそんなわけで、個人的には接する
機会が少ないんですけど、印象は強いですね。なんと言っても
珍しく自分から好感度を上げに(?)現れてくれるキャラですから!!
ほとんどのキャラはこっちから会いに行かないといけないのに、
アイリーンは自ら街中に現れ主人公に話しかけてくれる!!
他のキャラから見ると主人公ってこんな感じなんでしょうね。
エステルも自分から話しかけタイプに分類されると思いますが
なんせさらわれたり、いきなり失踪したりが多いので。自分から
話しかける=強引のイメージもぬぐえませんが、嬉しくもあります。
王城スタートでは序盤の戦闘で頼りになりますしね。
その分主人公の情けなさが強調されもしますが・・(笑)。
どうしても騎士になりたいと故郷を出て強くなるための修行の旅を、
なんてのは男主人公にしてあげたいほどの頼もしさです。

カルラに見出されたことは彼女にとって幸せだったのか、
不幸だったのか。真面目すぎるアイリーンは、戦争の厳しさを
自分では理解していたつもりだったものの、カルラの苛烈な
やり方(ロセン王家根絶、リベルダムの破壊など)を理解しようとは
しながらも、納得できないものもあったようです。アイリーンはもともと
父親のような騎士になりたかった。実際の姿はともかく、ロストールの
竜騎士は、正々堂々としていて、弱気を助け強きをくじくという
イメージだったのでしょう。
しかしロストールでは女性は騎士にはなれない。ディンガルなら実力
があれば騎士になれるが、それはアイリーンの思っていた騎士像とは
違っていた・・。ロセン潜入イベントで、カルラとアイリーンに追い詰められ、
ノエルたちが助けてくれた時、思わずアイリーンは主人公たちを
助けようとしてカルラに背後から襲いかかろうとします。
カルラはお見通しで、厳しく説教(笑)するのですが、アイリーンの
行動には驚かされました。もはやカルラの忠実な部下として尽くして
いるのに、主人公を助けようとするなんて。王城スタートではない、
アイリーンとはたまたま冒険者仲間として知り合っただけの仲、と
いう立場だったので余計に驚いたし嬉しかったですね。
以前は「敵同士になった」と絶縁宣言をされてしまったりしたので。
晴れて騎士になったのに、カルラを裏切ろうとする行為に出ようと
してしまう。アイリーンは様々な矛盾と葛藤を抱えているようですが、
カルラもアイリーンのそんな複雑な気持ちを分かっていたようですね。
その矛盾の危険性を分かっていながらも、その矛盾もアイリーンの
魅力の一つとして彼女を切り捨てることはしないカルラはやはり
大物ですね。

前作では、第二次ロストール戦役でアイリーンから逃げたら
それっきり会うこともないですが、インフィニットではその後もアイリーンの
イベントが発生するし、仲間になることもあるので救われた気分です。
戦争や自分の生き方への矛盾と葛藤を抱えきれなくなり、ついに
アイリーンは失踪しオズワルドへ行ってしまいます。
心を開放してくれるという魔人ヴァシュタールに会いに行く為に・・。
アイリーンは最も「普通の人間」ですね。アイリーンは甘いかもしれない
けれど、現実の人間から見たら最も自然な心の動きに思えます。
前作は正直強引さばかりが目についたんですが、インフィニットでは
真摯に生きるその姿勢が快いものに思えました。矛盾を抱え、
生き方について悩む普通の人間。特別な能力を持っているわけでは
ないけれど、こういった人たちに支えられて、無限のソウルを持つ
主人公も日々成長していくんだなあ、と感謝するわけです。

追記
今まで何度も書きましたが、初のカルラ配下で進めました。
カルラ配下で進めていると、ストーリーにますます深みが出て
きますね。いつも軽い物言い(色々な方言をミックスしたような
謎の言葉遣いがちょっとなあ・・。まあそういうキャラですが)で
本心の見えないカルラも結構身近に感じられます。
そしてカルラだけでなくアイリーンも新たな一面を見ることが
できますね。

PS版では王城スタートをやったものの、2度ともロストール戦に
参加したせいで、アイリーンの話は切れてしまったので、今回の
プレイでアイリーンをよりよく知ることができました。カルラと違って
生真面目なアイリーンは、側にいればその心情が手に取るように
わかりますが、共感できるところが多いですね。高い理想を持って
修行の旅に出るも、いざ念願の騎士になり戦争が始まると理想と
現実とのギャップに悩むようになる。一体自分はなんのために
戦っているのか、誰のために戦っているのか・・。

ヴァシュタールも言っているように、無限のソウルを持つ者とは違って、
アイリーンには世界を完全に理解することは悲しいけれど絶対に
出来ない。だからといってカルラのように世界を理解したふりをして、
自分の思うままに行動することも出来ない。
ごく当たり前の常識や、世間体や、よくある優しさに振り回される
普通の人間。伝説の勇者にはなれないけれど血の通った人間。
そして、世界を動かしているのは実はアイリーンたちのような
普通の人間なのだろう、と思わされます。

無限のソウルを持つ者や、ネメアのような勇者が世界に道を
示す者なら、アイリーンたちは道に従い世界を形づくっていく、
まさに無数の意思。Zill'Oll=Zillion Of Will、無数の意思。

ジルオールは勇者だけでなく、普通のキャラもきちんと
描いていて、その点も素晴らしいですね。きっとアイリーンも
主人公の一人なんだろうなあ、と思うのです。みんな主人公
なんですよね、きっと。