03.ネメア

「・・・グローサー・シュテルン広場の周辺の野原には、
怪蛇(ヒドラ)が、またネメアの獅子が、待ち構えてもいるのだった。」

  (ヴァルター・ベンヤミン『1900年前後のベルリンの幼年時代』より)

これはゲームとは全く関係ないところからの出典です。
たまたま読んでいた本に「ネメアの獅子」という言葉が出ていたので、
引用してみました。

ネメアの元ネタについては、既にご存知の方も多いでしょうから
簡潔に述べますと、ギリシア神話の一つ、ヘラクレスの冒険から
来ていると思われます。
英雄ヘラクレスが命じられた12の難事(ここからも元ネタありですね)の
最初の冒険が「ネメアの獅子退治」です。ヘラクレスがギリシアの
アルゴス地方、ネメアの谷に住む獰猛な獅子を退治したというお話。
ちなみにこの12の難事の一つに「ケリュネイアの鹿を捕らえること」と
いうのもあります。この鹿はとても足の速い鹿だったとのことで、だから
ジルのケリュネイアの異名は「閃光の雌鹿」なんですね。
他にもケルト神話などからも元ネタが見られるようです。興味の
ある方は調べてみると面白いかも。私は詳しくないのですが。

さて、ジルのネメアは、非常につかみどころがないというか、どうも
分かりづらい人物という印象が強いですね。前作では主人公を
差し置いて一人パッケージに登場し、この人何者?という疑問を
抱かせてくれました(笑)。裏を見るとしっかり男女主人公が
載ってるので、まさしく謎の英雄。
ゲームをする前は「このネメアって敵?味方?」と不思議に思って
ました。インフィニットではさすがに主人公もパッケージに載ってますね。
ただ、男主人公だけなんですよね。出来れば男女両方の主人公を
載せてほしかった。

ネメアはどうも何を考えているのか分からない。あまりしゃべらないし・・。
おしゃべりな英雄というのもイヤですが。
ネメアは前作とインフィニットでは、ほとんど追加イベントがなく、
追加のセリフも最後のエンシャントにてエルファスから主人公を
助ける時くらいしか新たなものがなかったような。
ですのでネメアに関しては、前作とインフィニットではイメージの
変化がないですね。自分ではあまり語らず、マイペースに行動する
英雄。心酔するベルゼーヴァやザギヴ、オイフェなどに対しても彼らの
想いにはお構いなしっぽい。超然としてますね。
闇に対抗するため世界征服というのがいまいち理解できないん
ですが・・。ロストールなどを併合して国力を上げたところで、
そういう俗世間の力で闇の勢力に対抗できてたんでしょうか。
それよりは無限のソウルを持つ者を味方にしたり、巫女を仲間に
したりとこちらも超常的な能力を持つ者たちで固めたほうが
よかったのでは・・?
まあ最後は無限のソウルを持つ主人公と一緒に戦いますけど。

あと世界征服より闇の神器集めに没頭したほうがいいと思う。
・・よく考えるとネメアはそっちのほうに力をいれて単独行動してたん
ですね。しかし世界征服ってのは・・やっぱりどうも謎です。
私の理解がいまいちなのか。ゲーム中で街の人が言うセリフ「結局、
ネメアの世界征服はなんだったのかな?いらぬ混乱を引き起こした
だけと思うけど。」まさしく私の心境にピッタリ。
私もゲームによくいる街の人Aと同じ意見。

何を思ってエルファスの姉イズをさらったのか。よく考えればエルファスが
世界を闇に落とすという願いを持ったのもイズを奪われたからなわけで、
そう考えるとネメアが原因・・??いやあんまり深く考えないほうが
いいのでしょう・・
意外と困ったさん?(笑)。ネメアに心奪われたイズにも超然とし・・。
彼が心を許せるのは誰なんでしょうね。やはり無限のソウルを持つ者?
オルファウスお父さん?しかしRPGでよくある「かつて英雄だったが、
悪者になった」「英雄だったが、主人公にその座を譲って死んだ
(もしくは引退した)」などのありがちな展開でなく、最初から最後まで
英雄であり続けたのはやはりかっこいい。というか、主人公の発すべき
セリフ・シーンなどのおいしいところを独り占めしてます(笑)。
「この大地は、ここで生まれ、ここで死に行く我らのものだ」という
セリフとか、エルファスから主人公を助けるとことか、ほんとしゃべれない
自分=主人公の立場がないですね。

城塞都市跡での実父バルザーとの闘いでは、ネメアもバルザーも
お互い全く親子の情も感じさせない戦い方で、恐ろしいものを
感じました。バロルが恋人エスリンを殺したことで、バルザーはバロルとは
袂を分かつたそうですが、ネメアに対する感情はどうだったのか。
もはやウルグの復活にしか関心がなかったのか。魔人に親子の情と
いうものがあるのかはわかりませんが・・。

ネメアはさて、闇との戦いの後どうしたのでしょうか。また遥かな旅を
続けるのでしょうか。半魔人だから、寿命も長いのかもしれませんね。
ネメアにこそ、この言葉を贈りたい。
「自由な旅を!」