●令和7年〜●

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 今年は、2706句から

 
令和7年

1月
1月1日
2706.嫁が君願ふ豊穣共に生く
2707・初夢は根石に宿る神越し
2708・初春や盆の松風ささめきぬ
2709・置石に止る初風消えにけり
2710・あれとこれ結ぶ配線晦日かな
2711・やれやれと心置き無く大晦日
2712・初春や雲吉方へ風の道
2713・春立や後れ毛ふるる風ふるる 春
2714・初春や白さ浮き立つ絹豆腐
2715・愛でたさや朱塗りの器蕪寿司
2716・恵方より初風受けて立ちまとふ
2717・社から千代の初風賜りぬ

1月3日
2718・乱れ打つ葉音の調べ冬の雨
2719・手水舎の雨後の雫や初日玉
2720・手水舎の木杓の雫初日射す
2721・傘収め雨後の手水舎初日射す
2722・花衣指から放る風遊び 春
2723・花衣指に絡みし風遊び 春
2724・天衣梢に忘る初詣
2725・雨音は葉音の調べ落葉敷く

1月6日
2726・地にかはる重なり降りし落葉かな
2727・獣道重なり降りし落葉闇
2728・風誘ひ銀杏静かにちりぬるを
2729・終電車くっさめ一つドアが開く
2730・乱れ打つ葉音の調べ冬の雨

1月9日
2731・闇に聞く木の葉時雨の靴の音
2732・出来立ての椀にとろける若菜粥
2733・家詣で子供氏子のどんど焼き
2734・からびたる御手に一層寒の雨

1月11日
2735・急ぎ着る古びたコートに釦無く
2736・からびたる垣根に恵む冬の雨
2737・八朔や風艶やかに刈穂上ぐ ・秋
2738・新しき豊米炊ぎ神に上ぐ 炊ぐ・かしぐ
2739・八朔や捧ぐ刈穂の額ずきぬ

2740・松過や酒量も減らぬ飲屋街
2741・鳥総松踏まれて返る千鳥足
2742・松過や塀の木目も新たなる
2743・松過の記憶を辿る般若湯
2744・家巡り子供氏子のどんど焼き
2745・出来立ての椀に柔らか若菜粥
2746・へっいにおとなふ木槌鏡割り

1月13日
2747・傘かしげ辷る綿雪音なして
2748・傘かしげ肩に跳ね落つ霰かな
2749・雲湧いて見ざる隙間に霰降る
2750・万策やオセロゲームに霰降る

1月16日
2751・春の風梢に忘る天衣
2752・一束の銀杏降る降る風掃除
2753・銀杏落ち空の深さを確かむる
2754.露払ひ風の悪戯落葉掻き
2755・一息に落ちる銀杏に風は無し
2756・一息に落ちる銀杏の骨哀れ

1月18日
2757・冬木立樹皮をめくりつ手を入るる
2758・並木路の空広がらん枯葉消ゆ
2759・街路樹の枝振り残し冬の雨
2760・葉も消えて並木路軽く冬の空
2761・藪入や人それぞれの物語
2762・小正月忘るる小酒飲み切りて
2763・拭き消えぬ鏡の祝ひ裏表

1月23日
2764・大寒や月夜の伏家籠る灯よ
2765・四手揺るる路地裏社寒の風
2766・大寒や月も細りし隙間かな
2767・大寒や落葉松林まとふ月
2768・コート着る千切れた釦ままにして
2769・大寒や古街通り人何処
2770・大寒や招く電飾地下通り
2771・大寒や夢のまた夢月一人
2772・道照らす繋ぐ明日へと寒の月

1月25日
2773・すずろ出で句作巡らす懐手
2774・道すがら繋ぐ手も無き懐手
2775・たゆみなく光を零す寒の月
2776・迷ひ道伏家を辿る寒の月

1月26日
2777・道照らす杖を伴なふ寒の月
2778・寒の道真中を歩く月が影
2779・寒の月に染まる田畑

1月31日
2780・節分や枝擦る風は恵方から
2781・春の風鈴転がりて庭に落つ
2782・すずろ立つ路傍の過客春の風
2783・月色に染まる田畑 秋
2784・鍋匂ふ潜る暖簾は酒染みつ

2月
2月2日
2785・撒ひてなほ届かぬ先の鬼の豆
2786・豆撒きや広がる先に福来たる
2787・豆撒きや零れし豆に福の音
2788・風まとひ一片毎に散る桜
2789・風まとふ一片毎の桜かな
2790・窓を閉め皆で摘まむや鬼やらひ
2791・春立や路傍の社四手揺らす
2792・蛇口閉め水輪も消えし今朝の春

2月8日
2793・鱈ちりの眼鏡曇らす絡み箸
2794・鱈ちりの箸にほぐれし夕餉かな
2795・身辺りに付かぬ離れぬ冴え返る
2796・ため息を吐ひて腰掛け冴え返る

2月12日
2797・海苔買へば島沢山の海香る
2798・銀舎利に青海苔降らす外は雨
2799・海苔買ふて銀舎利包み墓参り
2800・木枯や風なく方へ風見鶏
2801・木枯や背中押されて身を正す
2802・凩や耳から先に風来たる
2803・冬木立風に逆らふ枝擦れかな
2804・春浅き風のまろさはまだと言ふ
2805・店並ぶ片栗の花慎ましく
2806・身綺麗に片栗の花笊に上ぐ
2807・春浅き籬のすくふ風荒ぶ

2月15日
2808・瀬音背に凭れて宿る花疲れ
2809・一息に来たる流氷隙間無し
2810・鈍色の無言の海や雲凍つる
2811・春荒ぶ老々介護医者通ひ
2812・春嵐帽子目深に一歩づつ
2813・春嵐分銅しかと外に出づ
2814・朝ぼらけ凛と影なす桜かな
2815・朝ぼらけ凛と桜のシルエット

2月22日
2816・春一番一塊に街襲ふ
2817・気兼ねなくマスクに眠る終電車
2818・春嵐電車の扉こじ開け来
2819・羽ばたきは枝擦れの音や春嵐
2820・風花や上枝にとまる綿帽子 上枝・ほつえ
2821・春光や壁を抜けたる影法師
2822・春寒や籬の影の薄かりし
2823・風花やこちそちとまる髪飾
2824・朝来て凛と影おく桜かな 朝・あした
2825・春寒し耳たぶさぶし空き手かな 空き手。あきて(左側)                         馬手・めて(右) さう(左右)
2月27日
2826・大いなる桜を映す湛ふ湖 湛える・たたえる
2827・湖に出て止鏡桜の中に入る
2828・日溜りのベンチに忘る春帽子
2829・天衣掛けし梢に風光る
2830・風光る掛けし梢の天衣
2831・穴出でて地べた這ふ虫変身す

2月28日
2832・陰干しのはき擦る足袋の休みをり
2833・陰干しのはき擦る足袋の物語
2834・雨けむるひひなまつりの古家かな
2835・あやにくの雨の招客雛祭り

3月
3月4日
2836・雨渡る芽吹きの山に月出づる
2837・相傘の空き手は濡れる春の雨
2838・酔ひ飽きて五人囃子は不揃ひに ゑいあきて

3月9日
2839・舞ひ降りし天使の梯子春の海
2840・風光り淡き葉漏れ日衣透く
2841・経木広げ溢る草餅大家族
2842・目に余る三月風やなくもがな
2843・帽飛ばす三月風を連れて来し
2844・事に出づ弥生半ばの風押して
2845・大いなる弥生の空に弓を射る

3月17日
2846・無残やな落下椿は濡れそぼる
2847・古池や架かる橋下蛙鳴く
2848・春雨やお湿りほどの潦
2849・葉漏れ日の揺らぎをなして風光る
2850・薄衣の花のカーテン風遊び
2851・風誘ふ梢に掛けし花衣
2852.天つ風高嶺の山に雪残し
2853・経木から香る草餅深緑
2854・天つ風溢る生ひ出づ山笑ふ 生出づ・おひいづ、育つ

3月20日
2855・衣手に花を賜り風に散る
2856・花とぎれ風に止りて風に舞ふ
2857・春雨にやどる東屋瀬音聞く
2858・桜の芽衣離さぬ爪堅き
2859・つぶらなる木の芽連なる梢まで
2860・古池や春の雨音ポケットに
2861・傘収め瀬音に消える春の雨
2862・鎧着て光を抱く木の芽かな
2863・雨吸ふて芽吹きの園のけむりたる
2864・木々の芽の鎧にかむる光かな
2865・日輪の揺れ暖かき箱電車
2866・日輪を背にし坂道彼岸かな
2867・暮遅く連れて墓路影法師

3月23日
2868・風光り揺れる木漏れ日髪に触る
2869・極暑かなのべつ幕無し日が射さる
2870・目刺し烟ぶ換気故障の網の上
2871・壇ノ浦テレビ中継目刺し喰ふ
2872・玄翁で打つ干鱈や身はちぢり
2873.きすぐれて炙る干鱈身は細る
2874.古池や蛙合戦月の夜
2875・夢覚めて蟇は穴出づ娑婆の宵
2876・隠れ居て花の蕾はサイレント

3月28日
2877・鎧から咲き出づこの世桜かな
2878・風誘ひこの世に開ぐ桜かな
2879・花散って河童の皿に留りたる
2880・茹で卵剥いた殻にも桜時
2881・初桜ヘッドライトに消え隠る
2882・桜時仄と紅過ぐ香を残し
2883・桜の芽この世に出でし拳かな
2884・下萌えの心行くまで風障る  障る・さやる ふれる

3月30日
2885・一筆になぞりて触るる木の芽かな
2886・人筆の触るる指先木の芽かな
2887・包む葉を広げ三枚桜餅
2888・ちぎり葉を口にきすひく桜餅
2889・桜餅語る店主の物語
2890・草餅を一皿毎に剥がしつつ
2891・花冷えの帽子目深に橋渡る
2892・花曇り杖に代わりし傘を持ち
2893・海の波音聞く蛙の目借り時
2894・大いなる灯籠抜けて春日置く
2895・衣擦れの畳の目数桜冷え
2896・笹舟の湖に漕ぎ出で花に消え
2897・鏡の湖水尾に消されし花の雲
2898・番ひして水尾引く湖の花の色
2899・春日向道交い人の数多かな  道交い・みちかい
2900・心解く春日を交わす北の海

4月
4月2日
2901・湖に出て番ひ水尾ひく花の中
2902.春雨や街の灯照らす傘の道
2903・花散らす雨の街灯道けぶる
2904・古傘を打つや冷たき春の雨
2905・鏡湖へ舟漕ぎ出でし花乞ひに

4月3日
2906・笹舟の湖に遊びし春一日
2907・舟浮かべ仰げば遠き花の雲
2908・湖に出て舟を遊ばせ花に酔ふ
2909・漕ぎ出でて迫り出す花に舟隠る

4月4日
2910・花は今散る散る満つる風遊び
2911・枝垂れ寄る花は散りぬる身辺に
2912・古池や渡る石橋蛙落つ
2913・浮世見るこの一時の桜かな
2914・許し得て浮世に開く桜かな
2915・桜散る浮世の風に誘はれて
2916・春の風梢に掛けし薄衣

4月15日
2917・散り染めし道それぞれの花の色
2918・ふんはりと満天星躑躅いと白き・ドウダンツツジ
2919・花車いまだ蕾を解かずして 花車・平戸躑躅
2920・額障子けぶる借景春の雨

4月16日
2921・春の雨天使の糸にかはりつつ
2922.歩み止め見上ぐ残花の一握り
2923・花散って覗く枝振り隣屋かな
2924・花の塵風の箒は軽やかに

4月17日
2925・疾風来て一塊の残花散る 
2926・額障子風の流れを花に知る
2927・道の辺の風に追はれし花の塵
2928・道の辺に尽きなき風や花の塵

4月18日
2929・道祖神風の土産や花衣
2930・道祖神風に纏はれ花の塵
2931・たまゆらの花の出会いは風に消ゆ

4月19日
2932・たまゆらの風に召されて花は散る
2933・春の海やがて魚影に投網打つ

4月25日
2934・月朧亀鳴く池の水輪かな
2935・月ひいて念仏池に亀が鳴く
2936・道祖神風に纏はれ花衣
2937・花抱き地蔵ひたすら立ちにけり
2938・花抱き面を振らぬ道祖神

4月29日 
2939・藤棚の花房けむる小糠雨
2940・藤の雨レインチェーンは雫落つ
2941・藤浪を抜けて傘さす女物
2942・暮六つは閉園時間藤の雨
2943・雨宿り藤見帰りの喫茶室
2944・春の雨窓打ち流るひとしきり
2945・藤の花白紫のカラーがにじり寄る