7月23日22時発の橘丸に乗った私は、翌24日の朝8時には八丈島に到着した。
 新型の橘丸であるが、なぜか私と相性が悪く、またしても御蔵島を出たところで酔ってしまった。かなり気分が悪い状態で下船したが、八丈島の空気に触れると俄然気持ちが良くなってきた。
 バイクを受け取り、底土キャンプ場に向かう。メールで連絡をしてくれたUさんが、キャンプ場入り口で出迎えてくれた。
 広いテントサイトだが、テントは3張りしかなかった。この時期の八丈島は、空いていて最高に気分がいい。炊事場の前が、新たに芝生を張られたようで、立ち入り禁止になっていた。
 指定席のように、いつも張っている場所が空いていたので張ろうとしたが、なぜかその周辺の植物がボウボウに生い茂っていた。その理由は後日わかったのだが、長い間このキャンプ場の面倒を見てくれていたしょうさんが4月になくなり、献身的に手入れをしてくれる人がいなかったからだった。改めてご冥福をお祈りします。

八丈島

 魚が好きだというので、金目鯛、尾長鯛などの島寿司を、連日の夕食でテーブルに並べ食べた。献立とと予算は任されていたので、朝と昼は質素に、そして夕食は豪勢な献立になった。その島寿司が気に入ってくれて、とてもよかった。
 果実酒を作るのが得意なSさんに、香りとこくのあるレモン酒をごちそうになった。一人でいただくのはもったいないので、八丈キャンプではいつも同窓会のようにお会いするUさんや、昨年もご一緒した家族連れのYさんもお招きし、楽しい夕餉のひとときを持った。どさくさに紛れて、お呼びしていない蚊も集団でやってきたので、蚊取り線香の煙をお見舞いした。

 毎年のように八丈島に行く私に、同僚のSさんから「連れて行ってほしい」というリクエストがあった。もちろん、2つ返事で了解した。
 仕事の関係で、一緒に出発できなかったが、2日遅れで、Sさんを八丈島で迎えた。Sさんは若い頃小笠原で生活するなど、まさに海人間だった。私以上に、海に密着した生活を送ってきた先輩だ。
 Sさんが八丈島に滞在した時間は3泊4日と短かったが、連日海に潜り、レンタルバイクで島内を案内した。私としては彼のために、最高の「八丈島滞在プラン」を作った。

7/23-31

 島旅には、毎年新しい出会いがある。
 今回も、たくさんのすてきな人たちとお会いした。連絡先を交換した人もいれば、自己紹介の名前だけで終わった人もいる。しかし、短い日数にもかかわらず、2ヶ月たった今も懐かしく思い出される。
 船待ちの間に大きなカツオを釣り、キャンプ場に届けてくれたKさん。2年続けてキャンプ場でお会いし、一緒にお酒を飲んだYさん親子。画家の卵であるMさん。みんなどうしているかなあ。
 来年、同じ時期に八丈島に行けば、お会いすることができるかな。 (バボ)

「たまりば」の人たちと

 八丈島のキャンプで楽しみにしているのは、毎年ここでお会いする「NPO法人フリースペースたまりば」の人たちとの再会だ。引率した先生と子供達が1つになってラテン音楽のミニコンサートをしてくれる。ところが、今年は楽器を入れてきたトランクが船で行方不明になって、コンサートは開催できなかった。しかし、ギターを鳴らしながら、みんなで蒔き木やペットボトルを打楽器にしながら1時間近く歌ったことは、楽しい思い出になった。
 私は相当残念そうに見えたのか、N先生が後日彼らの演奏しているCDを送ってくれた。この場をお借りして、お礼を言いたい。また、送付してあったお手紙に、笛のトランクが見つかったことが書いてあり、自分のことのようにうれしかった。
 また、今年も八丈小島で釣ったカツオをいただき、ごちそうさまでした。

 底土港のサンゴは、今年私が行った伊豆諸島で一番すごかった。コバルトスズメダイがサンゴにまとわりつき、ダイオウウミウシの赤い体は、透明な海の中にこの上なく映えていた。水中の写真とは思えない写りで、満足している。

 八重根港で泳いでいる時だった。カメを見つけ、勇んで近くに行ったら、甲羅にロープのような物が見えた。釣りの仕掛けを飲み込んでしまい、そのまま左前足や甲羅に食い込んでいた。一緒に泳いでいたUさんと、どうにかとってやろうとしたが、そのロープは頑丈で、切ることはできなかった。後日、Uさんから聞いた話では、ダイバーがそのカメを捕まえロープを切って逃がしてあげたという。
 よかったなあ!! カメ君。

 左の写真は、そのUさんがカメを捕まえロープをとってあげようとしている場面。

 八重根のタイドプールも、連日出かけた。すぐに逃がしてしまったが、大きなタカラガイを見つけた日もあった。ハナキンギョダイもいた。タカベも群れで泳いでいた。

 Sさんをバイクで先導しながら、八丈島を回った。私が最も気に入っている洞輪沢温泉を案内したかったが、何か不具合があって当分休みだという張り紙があった。仕方ないので、近くにある有料の「見晴らしの湯」にいった。ここは雄大な八丈島の海を見ながら温泉に浸かれるということで、かなり人気の温泉だ。
 東の三原山を回って、西の八丈富士は翌日と考えていたが、思ったより時間が余ったので、思い切って1日で両方を回ることにした。

 八丈島に限らず、今年は行った先々の島で10匹以上のカメと出会うことができたが、みんなすれていなくて、近くに行っても写真を撮る距離は確保できた。ただ、それほど高いカメラではなかったので、続けてとるまでのインターバルが長く、連写できなかったのが残念だった。

 キャンプサイトにも長い影が出てきた。日が傾き始めている証拠だ。7月なので、まだ日の入りまで時間はある。今日は海に入ることをやめ、温水シャワーを浴びた。シャンプーで頭を洗った。そして簡単に洗濯をして、テントのそばに干した。この後は、ツーリングを楽しみながら、夕食の準備だ。買い物ついでに八丈富士のてっぺんに隠れようとしている太陽を見つけて、しばしバイクを走らせた。

 連日底土の海で泳ぎながら、心待ちにしている物があった。それは、昨年1度だけ海で出会ったアオウミガメである。今年も出会えたらいいなと思ったら、早速2日目に出会うことができたのだ。水中用のカメラを手に近付いていき、その姿を写真に収めることに成功した。

 昨年珊瑚が群生していた場所に行くと、今年もたくさんの珊瑚が出迎えてくれた。昨年以上かもしれない。この瞬間、八丈島を選択してよかったと思った。

 キャンプ場から階段を下り、海岸に出た。海は真っ青で、思わず写真に収めたくなるほどすてきだった。
 海岸に荷物を置くと、待ちきれなくなって、早速ゴーグルとシュノーケルを付け海の中へ・・・。水温は思ったよりも高かった。さすが南国の島だ。黒潮君ありがとう。事前に調べてきた情報では、台風は発生していないので、1週間は穏やかな天気が予想される。

 テントを設営していると、U氏と一緒に、チャリンコで全国のキャンプ場を回っているという群馬君(出身が群馬県なだけで、名前は失念した)が来て手伝ってくれた。彼とも、親しみを覚え、ずいぶんと話しをした。この群馬君、翌日にそうそうに帰っていったが、八丈島に来たのに水着を持ってこなかった。せっかく八丈島にそのため、もったいないことに海に1度も入らなかったようだ。
 テントを張り終わると汗だくになったので、2人と別れバイクを別の場所に置き、早速底土の海に挨拶に行った。

 Sさんが先に帰った後も、連日海に繰り出した。今年は天候に恵まれ、昨年のように台風を心配して早めに帰るということをしなかった。おかげで、海とテントを行き来する生活が中心だったが、たくさんの生物たちと遭遇できた。(2ヶ月前のことを思い出して書いているので、なかなか筆が進まない。いやPCが進まない)

 今回からテントが新しくなった。
 今まで使っていたテントは、安価な上に小型かつ軽量で気に入っていたが、ついにポールが2本とも折れ、フライも雨を通すようになった。そのため、ついに新調したのだ。考えてみると、たいした手入れもせずにこの2年間30泊以上したので、さすがに寿命かなとも思った。

 テントに詳しい人はすぐわかるが、今度のテントは、「コールマンのST」というやつだ。今までのより、大きさも重さも増え、小型のリュックには入いらなくなったのが難点だが、外見というか、そのデザインはとても気に入っている。

 7月を迎え、落ち着かなくなった。島旅のために仕事をしていると言ってもいいような私にとって、最高の季節がやってきたのだ。
 すでに5月にはもう夏の予定は立てていた。8月は奄美大島へ、そして伊豆諸島のキャンプは7月末だ。まだ定年退職を迎えたわけではないので、仕事もしなければならない。行きたい島はたくさんあるのだが、どこかに絞らなければならなくなった。竹芝桟橋から出る船は2系統なので、八丈航路の八丈島&三宅島か、それとも大島航路の神津島&式根島か。

 「どこの海で一番泳ぎたいか」という命題のもとに、最終的に決定したのは「八丈島」だった。魚たちと泳げるのはどこの島でも同じだが、サンゴのお花畑も見てみたいという気持ちが大きかった。同時に、職場の同僚でもあり先輩のS氏が「まだ八丈島に行ったことがないので、ぜひ行きたい。」という声にも、後押しされた。そのS氏だが、あまり休暇を取れないということで、少しでも長く島の生活をしたい私が先発隊で出かけ、向こうで合流するということになった。

底土キャンプ場
プロローグ

 オヤビッチャー、カゴカキダイ、そしてコバルトスズメといった魚たちと遭遇した。懐かしい人たちと出会ったかのように、魚たちの近くに行って挨拶をした。

底土の海を楽しむ
サンセットタイム
Sさんと合流
八丈島ツーリング
海を楽しむ
エピローグ