ソニーRX100に搭載されたレンズの驚くべき光学性能
ソニーRX100に搭載されたレンズの驚くべき光学性能
高級コンパクトカメラとして誉れ高いミノルタTC-1と近似の大きさ。小さなボディながら、すべてにこだわったというところも同じですが、RX100のレンズ設計者はTC-1のレンズ設計にも携わったそうです。
撮像素子は1型(13.2×8.8mm)とコンパクトデジタルカメラとしてはかなり大きく、当然レンズも大きくなりますが、それを沈胴式のこの大きさに抑えた光学技術も見事です。その小型化の
ために第一レンズの前面が
凹面になっています。でも
ディストーションは光学補
正とソフトによる補正でま
っすぐな被写体は、まっす
ぐに再現されます。
高級コンパクトデジタルカメラの価値、それは小さなボディながら高い質感と優れた操作性、そして想像以上の写真が撮影できる画質です。ソニーのRX100は、まさにその傑作と言えます。ポケットにすっぽり収まる小さなボディ、でも軽くはありません。ズシリとした重量感があります。世のデジタルカメラの中で、このRX100ほど、光学部品、機械部品、電子部品すべてを高い密度で凝縮したカメラはないでしょう。
そのレンズは35ミリ判換算で28〜100mm相当の3.6倍ズームで、ワイド端ではF1.8の明るさ。そのワイド端絞り開放の画質は、画面の隅を除けば見事に繊細。そこでF2.8に絞ると、ほぼ全画面気持ちのいいシャープさになります。また画面の中に太陽を写し込んでも、なかなかゴーストが現れないほど逆光性能の高さも驚きです。
そしてこのレンズでもっとも魅力的な描写が、味のあるボケ描写。その写真をここにお見せします。
_____________________________________________________馬場信幸
画面右上に、眩しくて見ていられないくらいの太陽を入れたとき、やっと画面左下に淡く小さなゴーストが現れました。逆光性能の高さは驚きで、これはレンズとしてはヌケのよさにもつながります。
スッキリしたデザインも本機のこだわりですが、ただしっかりとしたホールディングができません。そこで私は、木目のきれいな木を削って両面テープで接着。これでホールド感が大変よくなりました。
ワイド端、絞り開放による接写がとにかく楽しいレンズです。フォーカスを合わせたところのシャープさに加え、そのやや後方の滲みを伴った味のあるボケ描写、そしてその後ろの柔らかいボケ。標準ズームのワイド端、開放時のこの描写が、RX100最大の魅力です。
庭に咲いたユリの花を接写したものですが、おしべめしべと一部の花びらがフォーカス面に収まるようなポジションから撮影。そこからやや後ボケになったところの滲みが心地よく、背景のボケも柔らかいなど、シャープさと柔らかいボケ描写を両立させているところが秀逸です。
28ミリ相当というワイド画角なので玄関先を背景に写し込んでみましたが、ボケがいいので何気ない背景もきれいにまとまります。晴れていて被写体の輝度域が広いので、Dレンジオプティマイザーによって白い門扉のハイライトから日陰のシャドーまでが再現できます。
ムラサキツユクサの花に小さなクモがいました。絞りをF4に絞っていますが、その克明な描写はマクロレンズ顔負けです。拡大画像でその凄さがわかります。また円形絞りなので背景のボケも、全画面で円です。
デジタルズーム2.4倍、すなわち35ミリ判換算で240mm相当の望遠で撮影したバラです。2000万画素のうちの約350万画素を画素補完をして拡大した画像ですが、花という被写体ではありますが、A3にプリントしても十分に見られる画質です。
内蔵フラッシュによる夜景ポートレート。ワイド端、絞り開放における背景のボケも、さすがに周辺では崩れてきますが、逆にそれでもこの程度とも言えます。内蔵フラッシュはストレート発光ですが、発光部がレンズに近いことからこのようなポーズでは嫌な影はできません。
モデル/南 友香(ネットアージュ)
内蔵フラッシュによるスローシンクロ撮影。この例でもフラッシュの影は問題ありません。この画面中央部分を拡大したのが下の画像で、背景のボケがその量はわずかですが、柔らかく滲んでおり、ワイド画像の絞り開放としては見事です。
周辺で点光源がボケないようなシチュエーションにすれば、絞り開放では崩れてくる画面周辺のボケを避けることができ、RX100のレンズ描写を最大限に生かすことができます。なお、この写真では、内蔵フラッシュに乳白アクリル板をディフユーザーとして使用することで影も多少ですが、柔らかくなっています。
モデル/かりな