超高解像力には興味のない私が合点してしまった至高の描写 シグマ40mmF1.4 Art
超高解像力には興味のない私が合点してしまった至高の描写 シグマ40mmF1.4 Art
整形した私のEOS Rにマウントアダプターを介して組み合わせると重さは2キロを超えます。普段使いのレンズとしては大きく重く、こうなると単に画角のやや広いF1.4の標準レンズではありません。しかし驚くべきがF1.4開放時の光学性能で、これを生かして撮影しないともったいないほどです。40mmの画角とF1.4の浅めの被写界深度を生かし、納得の絵作りを楽しむレンズです。それを実践してみて感じたのが、すべて自然光で、開放で撮り切るおもしろさです。ボディにもレンズにも手ブレ補正はありませんが、撮影しているときの醍醐味は格別です。そこで本稿の最初以外の作例写真はすべて自然光で、F1.4の開放で撮影しています。
この大きさ重さは、標準レンズという概念よりもF1.4の開放で心行くまで絵作りを楽しむためのものです。
_____________________________________________________馬場信幸
拡大画像
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黄昏時の日比谷公園のライトアップを撮影した画像です。絞りをうっかりF1.6にしていましたが、隅の2カ所と中央の拡大画像から、このレンズの驚くべきシャープさがわかります。左の拡大画像は分かり易いように少し明るくしています。EOS Rの3000万画素で画質がJPEGノーマルではこの画像のファイルサイズが5.3MBですから、超高解像力も軽い気持ちで楽しめることになります。
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ちなみに葉が多く写っているこの画像のファイルサイズはJPEGノーマルでも約15MBでした。JPEGは解像力が落ちないように圧縮しますから被写体の絵柄が細かいとファイルサイズが大きくなります。すなわち絵柄の細かい風景では大きくなり、ぼけたところが多い女性写真やネイチャーでは小さくなるという、とても合理的な処理です。したがって風景のように絵柄が細かいとJPEGノーマルでもファイルサイズはファイン並みになります。なお拡大画像から背景の微〜小ボケの良さも分かります。
日比谷の夜景で10mほど先の人物にフォーカスを合わせたので背景が微〜小ボケになっています。その拡大画像を見ると柔らかくぼけていますが、極々小さな点光源に対する微〜小ボケには細く二線ボケがあります。しかし通常の鑑賞条件ではそこまでは分からないのでボケ描写に関しては良好といえます。点光源以外は当然ですがとても柔らかくぼけています。また車のヘッドライトのような高輝度のボケにも色が付かず、色収差の補正も見事です。
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CAPAのコラムに掲載した写真で、ポイントになる顔と両袖がフォーカス面に収まるようなポジションにカメラを構えての撮影で、髪の毛もフォーカス面に収まっているところはスカッとシャープです。そして後方微ボケになったイヤリングはやや滲みを伴って柔らかくぼけています。F1.4の開放ながら主要部分をフォーカス面に収めることでシャープさと背景のボケとのメリハリの効いた撮影が楽しめます。なおこの写真のファイルサイズは4.3MBです。
拡大画像
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上のフルサイズ横位置で撮影した画像を中央だけ縦位置にトリミングしたのが左の画像で、約60ミリで撮影した画角に相当し、遠近感も自然です。EOS Rではこれでも1300万画素もありますからA3ノビに余裕を残してプリントできます。その中の3カ所を拡大したのが下の画像で髪の毛においては被写界深度の浅さが分かりますが、フォーカスの合っているところは繊細なシャープさです。イヤリングは微〜小ボケの領域で、滲んで見えるところと、やや細い二線ボケになっているところがありますが、これは点光源の大きさと輝度の高さによるもので、最終的には写真の鑑賞距離で評価は変わります。ネックレスは微ボケを通り越して小ボケになっており、この時点ですでに素直なボケになっています。ひとつだけ惜しいのが口径食で、これは50mmF1.4 Artよりも幾分大きいです。
拡大画像
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背景は明るいのですが人物にはほとんど光りが行かず、通常ならフラッシュを使う状況です。それでも後で画像処理で人物を明るくする前提で敢えて自然光で撮影してみました。ISO3200、F1.4、1/40秒ですが、人物はかなり露出アンダーです。
オリジナル画像
パソコンで人物などを明るく画像処理
パソコンで背景の明るさはそのままに人物とその周辺を明るくしてみました。ISO3200の画像をここまで明るくしたためにノイズも出てきますが、右の拡大画像のように十分許容できます。また落ち葉のボケも心地良く、ボケ描写も好印象です。ここにはボディ側の性能もありますが、厳しい状況の中でも自然光で、そして開放で撮り切るおもしろさは格別です。
拡大画像
撮影倍率1/20におけるボケ味チェック点光源で、画面中央の最少の微ボケは滲んでいますが次の微ボケでは周辺に弱く二線ボケもあり、小ボケになると素直なボケになっていきます。前方の微〜小ボケが二線ボケになっているのは味、すなわち後方微ボケに滲みの要素がある証拠です。
ボケ味チェックチャートは撮影倍率1/20におけるF1.4開放時の画面4カ所について撮影しました。
中心
中央
中間
隅
ボケ味チェックチャートでは前ボケが少し二線ボケになっている分、画面中心、中央共に後ボケが柔らかく、よく整っています。中間から隅に行くほど点光源に対するボケはつぶれてきますが、点光源でなければ問題ありません。また砂目チャートや縦縞、そしてボケにもまったく色付きがなく、色収差の補正は完璧です。
モデル/安井亜美(シャノワール)
最初は、この大きさ重さにこのレンズの狙いが分かりませんでした。ところが実際に撮影してみると、その見事な開放画質から、絞ってはもったいないと感じたほどです。もちろん目的によっては絞ってもいいのですが、敢えて開放で、様々な被写体をフォーカス面に収めるように撮影すると写真のおもしろさが実感できます。私は以前から女性写真にしろネイチャーにしろ、開放でフォーカス面に収める撮影をしてきましたが、この40mmの気持ちのいいほどのシャープさは、程よい画角も相まって、そのおもしろさは格別です。