シャープさに加え、極めて優れたボケ描写のオリンパス45mmF1.2Pro
シャープさに加え、極めて優れたボケ描写のオリンパス45mmF1.2Pro
オリンパスのF1.2Proシリーズは滲みのあるボケ描写が特徴ですが、この滲みがいわゆる「レンズの味」になります。レンズのボケ描写を良くするには収差方式とAPD方式があります。収差方式とはシャープな結像にするために一般的に行なわれるフルコレクションという球面収差補正とは逆に、開放部分の球面収差補正曲線がレンズ側に傾くようにしたものです。これによって、フルコレクションでは後方微〜小ボケが二線ボケになってしまうのとは逆に、滲むように柔らかくぼけ、そこからつながるように後ボケも柔らかくなります。この収差方式では前ボケが二線ボケになりますが、前ボケよりも重要視されるのが後ボケです。
レンズの味を作り出す球面収差補正
ボケ描写に大きく関わるのが球面収差補正で、開放付近の球面収差補正曲線をレンズ側に傾けることで後方微〜小ボケが滲むようになり、これがレンズの味を作り出します。
画面左上隅 画面周辺 画面中間 画面中心
_____________________________________________________馬場信幸
フォーカスを合わせたシャープな顔に対して、その後方微〜小ボケとなるイヤリングやネックレスが滲むように柔らかくぼけています。この味が大変心地良いのですが、さらに画面周辺域になる赤い枠で囲った髪の毛も柔らかくぼけています。レンズの味は絞り開放時にもっとも大きく現れますが、開放だけに画面周辺ほどボケは崩れて汚くなります。それがこの45ミリではほとんど崩れることがなく、きれいにぼけるのが素晴らしいです。ババロア函館ツアー撮影会のときの画像です。
モデル/斉藤絢女
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CAPAに掲載した写真で、この写真も街灯などその場の自然光による撮影で、AFの効きといい、滑らかな画像といい、背景の柔らかいボケといい、至福の写りです。そしてモデルが浮き上がって見えますが、この立体感は柔らかいボケがあってこそ得られるものです。マイクロフォーサーズはフルサイズに比べるとぼける量は少ないのですが、問題はそのボケの質です。まさにボケは量より質で、いくら大きくぼけてもその小ボケ領域で目障りな二線ボケになったり、口径食が大きく画面周辺で不自然に欠けてしまってはボケ描写としては評価できません。
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この夜景ポートレートは、その場の明かりだけによる撮影で、右の拡大画像ではアクセサリーが滲んでいて味があります。さらにF1.2という大口径でありながら開放でも口径食が少なく、これもボケ描写においては好印象です。
フォーカスを合わせたところのシャープさとネックレスに見られる滲んだ味のあるボケとの対比がきれいです。さらに左上の明かりのボケは画面周辺でありながらよく整っているように、ボケの均等性が秀逸です。
モデル/さわいえり(シャノワール)
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全身を撮影するフルショットでは人物に対しては被写界深度も深くなり、そのすぐ後ろの後方微〜小ボケ、そして背後のボケが注目すべきところです。拡大画像ではシャープさがわかりますが、さらに下の拡大画像ではパーゴラの支柱が画面の周辺ながらきれいに滲んでいます。そして背景のボケには点光源に近いものもありますが、これらもとても柔らかくぼけています。オリンパス45ミリProのボケ描写の良さがわかります。
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ボケ描写の良さが楽しめるのはポートレートに限りません。自然を撮影しても、その後ボケの柔らかさが写真の品性を高めます。
この写真はE-M1MarkⅡのデジタルテレコンを2倍にし、撮影距離をやや遠くして被写界深度を深くし、ツチバチが花から飛び立つ瞬間を狙ったもので、かなりトリミングをしています。偶然、画面左に小さなハチも写ってくれましたが、このようにネイチャーの撮影も楽しめます。
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繊細なシャープさと柔らかい後ボケは、女性写真の撮影には最適、最強のレンズです。
CAPA付録のチャートを画面の4カ所に対して撮影したもので、それを拡大したのが上の画像です。一般に、味のあるレンズでは画面周辺に行くほどきれいな滲みはなくなり逆に微〜小ボケが二線ボケのように崩れてしまいます。ところがこの45ミリProは赤い枠で囲ったところに見られるように、その崩れが非常に少なく、周辺域でも中心部と変わらないくらい整っています。写真レンズのボケ描写において、この均等性の高さは絶賛に値します。これはマイクロフォーサーズによるメリットでもあります。そして収差方式の証として前ボケが二線ボケになっています。
この写真もCAPAに掲載したものでアスペクト比4:3で撮影しています。F1.2開放で全画面にわたって極めてシャープなのが拡大画像からわかります。
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