実験に成功! 露光間可変絞りによる理想的なボケ描写
実験に成功! 露光間可変絞りによる理想的なボケ描写
使用したカメラはマウントアダプターが使えるフルサイズのミラーレス機ソニーα7。ここにニコンのGレンズが装着できるメタボーンズのマウントアダプターを使用。その絞りリングを露光中に回転させます。まず絞りリングのクリックのボールを外し、輪ゴムの力で絞りリングがグリスによってヌーッと回るようにします。次に絞りリングのローレットのギザギザに針
収差がよく補正されていると、ソニーのSTF135ミリのアポダイゼーション光学エレメントの効果のように、絞り位置における光の通過パターンが、そのままボケに現れます。そこで露光中に絞りを開放付近から最小絞りまで可変させることができれば、非常に柔らかいボケを得ることができる筈です。ということで実験をしてみました。
金でロックを掛けるようにしこれをソレノイド(電磁石)で解除します。そのスイッチをシャッターボタンの上に両面テープで接着し、スイッチの重さがシャッターボタンと同じくらいになるようにウレタンを入れて調節。α7を電子先幕シャッターにし、これが切れるのとほぼ同時に絞りリングも回転し始め、絞り羽根が絞られていきます。実際には不安定な構造のためにボケ描写の結果にはバラツキが出ます。またこの絞りの動作のために露光時間は1/8秒前後と遅いことから、三脚を使用します。そして明るい屋外ではISO感度を下げても露光オーバーになってしまうので8倍のNDフィルターを使用します。
シャッターボタンの上に接着したソレノイド用のスイッチ
絞りリング
輪ゴムで絞りリングを回転させる
絞りリングのローレットにロックを掛ける針金
ソレノイド
_____________________________________________________馬場信幸
DCニッコール105mm
F2を装着したところでDC値は0
口径食を避けるために少し絞ったところから最小絞りまで露光中に絞られます
周辺のボケ描写を見るためにCAPA付録のチャートを画面左上にて撮影したものを拡大。左のF4で撮影した画像はボケ量によってはわずかに二線ボケが見られますが、ほぼ素直なボケです。対して露光間可変絞りでは、前ボケ、後ボケ共に柔らかくボケています。
006P乾電池(9V)
F4に絞ったとき 露光間可変絞り
使用レンズはDCニッコール105mmで、フクロウの置物にフォーカスを合わせ、右上の後ボケと左下の前ボケをそれぞれ拡大してみました。左側のF4に絞った画像に比べ、露光間可変絞りでは前ボケ、後ボケ共にとても柔らかくボケています。
前ボケ
後ボケ
F4に絞ったとき 露光間可変絞り
F4に絞ったとき 露光間可変絞り
この写真もDCニッコール105mmで撮影したもので、上側の写真はDC値を0にしてF4に絞った通常の画像で、後ボケは素直です。そして下側の露光間可変絞りでは後ボケが理想的な柔らかさにボケています。屋外なのでNDフィルターを使用し、ISO100で1/4秒という露光中に絞りを絞ることで、このようなボケ描写が得られました。
通常画像 ( F4 )
露光間可変絞り
F4に絞ったとき 露光間可変絞り
室内における撮影で、レンズはDCニッコール105mmでDC値は0。下の拡大画像を比較すると、F4に絞った通常の画像に比べ、露光間可変絞りではネックレスや背景のボケにはレンズの味のような滲みがあり、実に心地よいボケ描写です。ボケの量は少なくなりますが、ボケの質は、まさに最上です。
モデル/かりな
F4に絞ったとき 露光間可変絞り
レンズはAFニッコール50mmF1.4。開放では後ボケが二線ボケになるレンズで、口径食を避けるためにF2.8当たりから最小絞りまでの露光間可変絞りで撮影した画像です。一部を拡大したのが下の画像で、ここでも露光間可変絞りは心地よくボケています。
以上のような実験結果から、キヤノンのEFレンズ、ソニーのEマウント、マイクロフォーサーズなど、ボディからの信号で絞り羽根をステッピングモーターで制御しているレンズでは可能性があります。露光時間中に、それに合わせて絞りを開放から、あるいは口径食が気になる被写体では1、2段絞ったところから最小絞りまで絞るような制御にすれば、このようなボケ描写を得ることができます。ただしフォーカルプレーンシャッターではその全開露光中に制御しなければならないので高速シャッターは無理ですが、1/60秒、あるいは1/30秒であれば可能です。そして手ブレ補正と併用すれば135ミリくらいまでのレンズでは手持ちで撮影できます。またこの観点からすると、レンズシャッターのカメラは、さらに有利です。例えばソニーのRX1のような撮像サイズが大きく、高MTFレンズのカメラで、レンズシャッターに絞り羽根の開閉を兼ねるような構造にします。いずれにしても、このようなボケ描写の得られるカメラやレンズの実現を望みます。