かえる投稿図書館


『硝子の花』

 >>>赤緑 葵   -- 06/02/13-13:27..No.[903]  
    いいことを教えてやろうと、ソレに興味を持ったルーに言った。

アトランティーナの湖の底にだけ咲く花がある。
まるでガラスで出来たような花で、人が触ると壊れてしまう。
そんな繊細な花。
雫のような花びらに、上からさす日の光に照らされて変わる葉の表情。

「わぁ、いいな。すっごい見てみたいよ!」

盗賊の性なのか、目をキラキラさせて拳を握った。
水竜が暮らす湖にしか咲かない稀少な花で、過去に何度も人間が採りに来たことがあったが、うまくいったところを見たことがない。
竜だけしか触ることが出来ない、見るもの全てを魅了する、世界に限られた数しかない、そんなガラスの花。

「見るだけならカガレスに一本だけある」

昔。
父が母を娶る時に村人に花瓶を持ってこさせ、底に咲いていた花の中で一番綺麗に咲き誇っていた花を一本摘んで花瓶に挿した。
不思議なもので、触らなければ枯れはしない。水はアトランティーナの水を水差しから花瓶にいれればいい。

「次に行くときにでも見てくればいい」

透き通ったガラスのような花。
忘れたくても忘れられない、目に焼きついているその姿。
父が愛しいものをみるように見ていたのを覚えている。
きっとそれは、母が好きだった花だからだろう。幼い頃、花に触ることが出来なくても、その花をみて微笑んでいる母を何度も見たことがある。

それで思い出した。
母はその花に名前を付けていた。
たしかそれは。

「『水竜の花』って感じだね、水竜の住む湖にしか咲かないって」

突然、頭で考えていたことをルーが言った。

「あれ?どうかした?」
「いや。なんでもない」

思わず破顔して、クククッと忍び笑いをした…。

=END=

コメント:湖の底って本当は暗いんでしょうが、アトランティーナに限っては目茶苦茶明るそうです。神秘的に光っているといい。


どなたか描いてくださいませんかね…

>>> べに龍   -- 06/02/21-11:00..No.[907]
 
    赤緑 葵さんのお話は、よくツボにはまりますが、今回のお話も…
ほの暗く、青い水の底で、静かに光る硝子の花。目に浮かぶようです…。
見に行きたいです。それも湖の底の方に。

 
あ、いいですね(笑)

>>> 赤緑 葵   -- 06/02/23-05:12..No.[908]
 
    ツボにハマってくださいましたか(喜)ありがとうございますv
うろうろしていて見つけた素材がとてもキレイだったので、それのイメージなのですが、上手くお話になってよかった。
水竜花・火竜樹・白竜草とかっていう三部にしてみたいとか思って書いてました。どんなもんだかさっぱりイメージできてないので、忘れた頃にって感じですが。
湖の底に行ってみたいですね。結婚したらどうなるんだろう、実際の話…うーん。
 


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