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>>>べに龍
-- 05/12/01-07:29..No.[888] |
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レラは、くるりとドーソンの方に向き直りました。 「あの遺跡の、何を知りたいの?」 「何もかもを。ことに、あれを残した人々のことを、だ」 ドーソンの、暗い茶色の目が、より暗い色に、ふうっと沈みました。 「どんな人々が、あそこにいて、あれを作り、使っていたのか。 彼らがどのくらいの人数で、どのように暮らし、何を信じ、どんな政を行い、誰と交流していたのか。 …知りたいのだ、分かっていること、すべてを」 「残念だけど、たいした事は教えられないわね。あの遺跡については、断片的な資料がごくわずか残っているだけだったし、あのとき持ち帰った資料も、まだ充分な記録すらとれていないもの」 レラは、首を振りながら言いました。 「それでもいい。今分かっていること、推測できることだけでいい…」 ドーソンは食い下がりました。 レラの形の良い眉が、不審気にちょっと上がりました。 「なぜ、あの遺跡にそんなにこだわるの? それよりも、この間、この子に連れられて行った無人の城の方が、よほど興味深いじゃないの」 と、白い竜の仔…チビドラを、目で指しました。 「ああ、だが、あそこにはまだ、俺が俺自身で確かめられることが…俺自身で確かめるべきことが、たくさんある」 ドーソンは体をかがめて、足元で気持ちよさそうに身をくねらせる仔龍をなでてやりながら、 「…こいつも、あせるなといっている…だから、そっちはまだ、いい…」 ドーソンは、独り言のように続けました。 「だが、あっちの…もう一つの遺跡のことも、やはり気になるのだ…どんな細かいことでもいい、知りたくてたまらぬ」 しだいに低い、つぶやき声になって、 「…ああいう遺跡にいると、妙な心持ちがするのだ…」 …そう、白龍に関連する遺跡に行くと、ドーソンに…ドーソンだけに、聞こえてくる声があるのです。 以前、霧の向こうから聞こえてきた、あの子供の声です。あの声が、しきりに何か命じるのがきこえてくるのです。 「…『思い出せ』と、いわれているような気がする…」 先の冒険で、白い龍の子供…チビドラに出会ったとき、声の主はこの竜の仔ではないかと思ったのですが…そうでもなさそうです。 もっとずっと近いところから聞こえているような…そのくせ、妙に遠くから響いてくるような…。それに、 「きゅ!」 …チビドラ自身、違うと言っています。 …と、突然、ドーソンはぱっと体を起こして、レラに向き直りました。 妙なところを見せてしまったのが照れくさいのか、ごしごしとこぶしで顔をこすりながら、言いました。 「…それより何より、面白そうじゃないか! 俺にだって知的好奇心というものはあるのでな。結構苦労して、誰も知らぬ秘密をついに見つけだしたというのに、それがどんな意味のある発見だったかもろくに分からない、というのは、なんともくやしい」 「そう…まあ、何にせよ、向学心があるのはいいことね」 一瞬、少々面食らった顔をしたものの、レラはすぐにそう答えました。 そして、 「丁度いいわ。実のところ、今は暇なのよ。注文した新しい機材が届くまで、仕事が出来ないから。こうして場所をあけて待っているのに、到着が遅れているの」 と、空っぽのテーブルを指し、 「荷物が着くまででよかったら、相手してあげるわ…その代わり、機材が届いたら手伝ってちょうだい」 「そりゃ、もちろん」 ドーソンのうれしそうな返事が終わるより前に、レラはくるりと棚に向き直りました。 そして、いそいそと棚のガラクタをとりのけながら、 「そこの下にいる椅子を3つ、出してきて。今、資料を出すわ」 と、言いました。 ================ 9月のレラの挨拶イベントより。 私は遺跡などの話が結構好きなので、その手の発見が新聞に載ると読み込んでしまいます。近所で遺跡の発掘があったら見にいったり…。 本を調べたり勉強したりはまーったくしないのですが。 ともかく、そんなわけで、レラのシナリオではぜひともレラに細部を解説して欲しかったな…と、思っております。 |
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