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>>>べに龍
-- 05/12/01-07:26..No.[887] |
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9月の終わり。残暑も一段落し、夜には涼しい風が吹き始めた頃の、ある朝のことです。 レラの職場の、研究所のドアがノックされました。独特のゆったりとした間を置いて、三回。 「入りなさい、ドーソン」 レラが、せかせかと棚に品物を積み上げながら、振り向きもせずに声をかけました。 ドアが開き、ドーソン・トードが顔を出しました。そのひざの後ろから、小さな白い龍の仔が覗いています。 「おはよう、レラ殿…おや」 ドーソンは、目を丸くしました。部屋の真ん中においてある大きなテーブルの上から、いつも所狭しと並んでいるはずの機材や資料が消えていました。そのせいで、部屋全体が妙にがらんとして見えました。 「これはこれは…今日は、忙しいようだな」 ドーソンはゆっくりとした足取りで部屋に踏み込むと、テーブルを手のひらで軽く叩きました。 「手伝おうか。…それとも、いては邪魔かな?」 レラは、顔だけ振り向いて答えました。 「別に、邪魔でもないし、手伝ってもらうこともないわ。…今日は、何の用?」 「ああ…いや、たいした用じゃない」 ドーソンは白い仔龍を抱き上げて、そのあごの下をくすぐってやりながら、 「…貴方の付けたこいつの名前…チビドラというのは、あまりにもそのまんま過ぎやしないか…」 「それなら、貴方が好きな…」 と、レラがあきれたように返しかけたところへ、 「…などと、今更言いに来たわけではない」 と続けて、チビドラをおろしてやりながら、 「また、神にあらざる神龍などを研究することに、教義上問題はないのか…」 「あるわけないでしょ」 と、間髪いれずぴしゃりと返されたのにも、涼しい顔で、 「…などと、難癖をつけに来たわけでもない」 「じゃ、何よ」 レラの声がとがってきました。 ドーソンは、大きな鐘の響きを思わせる、独特の声で低く笑いました。 「いや、失敬。だが、これで追い出されないところを見ると、今日ならお願いしてもよさそうだ」 「だから、何を頼みたいの?」 レラは再びドーソンに背中を向けて、棚を調べながら聞きました。 「うむ。これも相当今更の話だが…先月の頭に同行させてもらった遺跡…あの、白龍の遺跡について、教えてもらいたくてな」 |
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