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>>>べに龍
-- 07/12/10-07:28..No.[1036] |
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「…まさか、ここまでの力を持っているとはな…」 長い戦いの果て。 リザリアは、力なくそうつぶやくと、どさりと膝をつきました。 その傍らには、2人の手下が立ち上がる力もなく、ぐったりと倒れています。 ドーソン・トードは心の底からの安堵のため息をもらしました。 レラは冷静に、そんなドーソンに改めて癒しの技を使い、ミーユはいつもの涼しげな表情を取り戻して剣を収めました。 …が、見たところは、3人とも満身創痍。どちらが負けたのか分からないような姿です。 「力の問題ではない…分からぬのか?」 ドーソンは、静かに問い掛け、リザリアのへこんだ冑の奥を覗き込みました。 リザリアは無言で、ドーソンをねめつけています。 「力だけなら、お前たちの方が、はるかに格上だ…」 言いかけてドーソンは、ふらりとよろめき、焦げたトネリコの枝にすがりました。 「…その力を生かすのも殺すのも、お前の心次第…心の使いかた次第だ」 弱弱しい声でしたが、語調は確信に満ちていました。 「これだけの長きを生きて…」 ふと、ドーソンの目に哀れむような光が浮かびました。 「俺よりはるかに長き年月を生きて…お前には、それが、まだ分からぬのか」 今度のドーソンの言葉は、問いかけではなく、断定でした。 「貴様…」 リザリアの目が、憎悪の炎を吹きました。 そのとき。 「これで分かったろう。私利、私欲のためだけに、力は存在するのではないことを…」 突然、あたりに威厳に満ちた重々しい声が響き渡りました。 同時に、神竜の鏡の向こう、大広間の大部分を占める大きな空間が動き出しました。 空気が揺らぎ、渦を巻き… どこからか集まってきた光が、ふわりと形をまとい… 白い龍…神竜が、広間いっぱいにその巨大な姿を現したのです。 「く、くそっ…」 リザリアはうめいて、ギリリと歯噛みしました。 神竜は、しばし無言でそこにいる敵味方を見渡し、それからリザリアに目を据えました。 「命があるうちに、この場を去れ…」 竜の言葉に、リザリアははっと身体をこわばらせました。 「ふざけるな! 貴様らなどに、情けをかけられるくらいなら…」 …そして、リザリアは自ら開いた「冥府への門」と呼ばれる死のワープゲートの向こうへと、消えていったのでした。 身体を引きずり、いざるようにしてまでも、あくまでも彼の後につき従うことを選んだ2人のダークエルフと共に。 「さらばだ、ドーソン! あの世で、また会おうぞ」 「…さて。会えればいいが。俺は、おぬしよりよほど腹黒いからな…」 リザリアの最後の言葉に、ドーソンは、自嘲めいた呟きを返しました。 ……おぬしは、2人もの相手に、これほどの忠誠を抱かしめるものを持っておったのだな。 一軍の将とであれば、あるいは世に名を残しえたかも知れぬ。 …それをうらやましいとは思わぬが、しかし…… 「人の人生とは悲しいものだ。しかし、お前たちが気にすることはない…」 1人自分の思いにふけりながら、リザリアの消えた空間を見つめるドーソンの心に、神竜の言葉が響きました。 「ええ…」 ドーソンはうなずきました。 が、浮かぬ表情は変りません。 ドーソンもまた、神竜と同じく、リザリア達を見逃してやっても良いと思ってはいました。 しかし、それは… 「今のままのリザリアになら、まず遅れをとることはない」 という余裕と、 「プライドの高いリザリアはこんな形で情けを受けることを良しとしないだろう、このまま去って自分たちの前には二度と姿を現すまい」 という読みから出た思いであったのです。 「…俺の思いを、見透かされたような…」 後味の悪さが、尾を引いていました。 ……待ちぼうけだな、リザリア…俺が逝くのは、もっと暗いところになるだろうよ…… 「…いや、気にしてはいけないのだ」 白い神竜の声が、再びドーソンの心に響いてきました。 今お前が思っている、そのことも含めて…言外に、そういう響きをにじませて。 ドーソンは、分かっている、と言いたげなようすで、首を横に振りました。 「忘れなさい、ドーソン」 ふいにレラが、ぴしりとした声をドーソンにかけました。 ドーソンが見返したときには、レラはまた、うっとりと神竜を見つめていました。 「今は、そんな顔をしていられるときではないでしょう?」 代わりに、ミーユがそう言い添えました。 「ああ…そうだな」 ドーソンは、もう一度うなずきました。 そして、物陰から顔を出した、小さな竜の子のほうを振り返りました。 「さあ、チビ、おいで。…親父さんが帰ってきたよ」 ======================== ようやく、ラストバトルが終わりました。 次は、ドーソンの過去が明かされる予定… |
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おつかれさま >>> おりづる -- 07/12/15-02:37..No.[1037] | ![]() | |
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ども、おりづるです。 ついに、ラストバトル終了。感無量です。 それと、ドーソンさん、大丈夫ですよ。腹黒い程度なら、ちゃんと地獄より明るいところに行けますって(天国と言わないあたり)。 さて、いよいよ絵本完成。ドーソンさんの本名は? そして、チビドラちゃんとのらぶらぶエンディングなるか?(しつこい) | ![]() | |
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>>> べに龍 -- 07/12/18-07:28..No.[1038] | ![]() | |
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>おりづる様 いつもレスどうもです。 ドーソンも、やっとここまで来ました。 しかし、たしかにドーソンは、地獄や天国より、辺獄あたりが似合いそうな気がしますね…いや、むしろこの世で「千の風」や「小鳥のくちばし」になってそうな。 …ドーソンの本名…。毎度鋭いところ突かれますね…。 | ![]() | |
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