Jumo 004

Me-262用のJet Engineの開発がドイツ空軍省からJunkers社にも打診され、Junkers社では当時Superchargerの開発を行っていたAnselm Franz博士が責任者となり1939年にJumo 004の開発が始まった。ドイツ空軍省の要求項目で重要な点は前面面積当たりの推力を定義したことであり、この要求により遠心式Compressorを採用することは現実的に不可能となり、ドイツでは軸流式Compressorが主流となる。Anselm Franz博士は遠心式のSuperchargerの豊富な経験があったが、前面面積を小さくするため軸流式Compressorを選択した。Jumo004 Engineの特徴は次の4点があげられる。

 

1. 軸流式CompressorStraight Flow Combustorの採用。

2.耐熱性の高いNickelの不足を補うため、Sheet Metalから製造したAir-Cooled Hollow Turbine Bladeの採用 

3.同等出力のピストンEngineのほぼ1/5の製造費用 

4Variable Area NozzleおよびJumo004Eで採用されたAfterburning  

 

Anselm Franz博士は当初から低開発費、短期での完成を目標としてかかげリスクを避ける開発を行った。そのため試作Engine Jumo 004Aは非常に慎重な設計が行われた。Turbine BladeKrupp社で製造されたTinidur 製のSolid Non Cooled Bladeであり、その組成は30%Nickel, 15%Chromium2%Titanium、残りがFeである。Jumo 004A19411月には9000rpm946lb推力を発生させることに成功、194112月には2200lbの推力で10時間の試運転を完了した。1942718Jumo 004A2台装備したMe-262の試験飛行が行われた。しかしJumo 004ANickel等の希少金属を使用するため、大量生産には高価になりすぎるということは明らかであったので、Jumo 004Bでは炭素鋼 Sheet MetalAl Coatingし袋状に成型しTrailing EdgeWeldで結合し、Box RootおよびSolderingによりDiskに締結されるHollow Turbine Bladeを採用した。Jumo 004Bの開発中にTurbine Bladeが6個のCombustor3個のExhaust Strutと共鳴し破断するという不具合が発生した、その究明のため音楽家がバイオリンの弓でBladeを弾きBlade自体の共鳴点を調査したという。対策としてBladeの長さを1o減らし回転数を9000rpmから8700rpmに変更することとした。共鳴の問題はいつの時代にも発生し、その解決は困難を極めるという一つの例であり、共鳴点をずらすため回転数を変更する手法は現在でも行われる。[5] [11] [15]  Jumo 004Bの重量はJumo004Aより100s軽くなったが依然744sであるのに対しBMW003は約200s軽い567sであった。また性能的にも同時代のドイツのEngineに見劣りする部分もあるがJumo 004Bは最終的には6000台生産される所謂ベストセラーEngineとなった。6000台といえば現代のCFM56-7の台数に匹敵する。ただしJumo 00430時間ほどで取り卸されCompressorCleaningおよびTurbineの検査が必要であり、その検査は約100Man-Hourかけて強制労働者等により実施された。Me-262自身も1400機生産され航空史上の一つの金字塔である。戦後Anselm Franz博士も米国へ移住(連行され)しLycoming社でイラク戦争のTV報道でよく見かけたM1A1 Abrams戦車のGas Turbine Engine AGT1500の開発にも関わっている。Junkers社は多くの爆撃機、輸送機を製造した航空機メーカーであり特に波型外板を持った3発輸送機Ju52が有名である。

Science Museum Jumo 004B

 

Fig 1が最前方で順番に後方を撮影している。Fig5が最後尾。

 

 

 

 小さいが中央に位置するのがGearboxGenerator, Hyd Pumpも装備される。

Fig 1  

Fig 2

 

左の丸い穴はFuel NozzleAccess Port。この下にはCombustorが位置し、黒い部分は2重構造でCooling Airが流れる。

Fig3  

 

右に見えるWireの伸びる部品はTemperature Sensorその下はPressure Sensor。中央のShaftVariable Area Nozzleを駆動するDrive Shaft

Fig4

このJumo004Bはあまり手が加えておらずその当時の状態をよく残している。

Fig5

ドイツ空軍省開発番号109004の刻印がGearbox後ろのCompressor Caseに認められる

Fig6

SpinnerにはPiston Engineが配置され始動の際、手でStarter Cableを引きまずPiston Engineを始動させ、その後Engine自体が始動される。このSystemBMW003と同じ。Combustorはこの時代の代表的なCan Typeであるが、Fuel NozzleFig12で詳細を示すようにCombustorの中央でAir Flowとは逆向きに燃料を噴霧するようになっている。Exhaust Nozzle ConeBall Screw Actuatorにより軸方向に移動しExhaust Nozzle面積を変化させるVariable Area Nozzle機構がある。Compressor8段で圧縮比は3.14:1、1850lbの推力を発生した。Boeing 787に搭載されるGEnxではFan 1段、LPC 4段、HPC 10段で圧縮比は23160000lbの推力を発生する。ほとんどの部分がAlと炭素鋼により作られ現代多用されるTiはほとんど使われていない。

Fig7

Fig8, 9, 10Royal Air Force Museum, LondonJumo 004B Cut ModelStarter Piston Engineが装備されるInlet Cone部分。ドイツのJet Engineはこの型式を好んだがガソリンタンクを別に備える必要がある。

Fig8

中央にCompressor Disk同士を結合する直径方向に挿入するBolt Headが見える。赤色に塗られているCase断面の中央部分に抽気Portが認められる。

Fig9

右はTurbine 、中央にTurbineCompressorを連結するShaftとそれを支えるBearing,左にCopressorの最終段、わずかにAir Leakを防止するためのTeeth Seal Finが見える。

Fig10

Compressor詳細図。Compressor Diskの結合方法が分かる。かなり頑丈なAl製のDiskで構成されこれが重量増の原因の1つであった。Compressor 直径は後段で若干大きくなり空気速度が音速を超えることを防いでいる。

Fig11[15]

Fuel Nozzleは前向きにFuelを噴霧する方法。Fuelが燃焼領域に長くとどまり気化しやすく燃焼が促進されるが、Fuel Nozzle自身が高温領域にあるのでTube内にCokingが発生しやすくこの方法はその後は発展しなかった。かえしのような部分からも外側の空気を中央に注入する。Jumo004も加速性能が悪く、速度を落とさないために旋回半径を大きくとり旋回を行う必要があり、また着陸時の加速の悪い時期に敵機に狙われやすく、Me-262の着陸を援護するPiston Engine戦闘機の部隊もあった。

                                                         Fig12[3]                     

Jumo 004Bの中Hollow Bladeの締結方法。1945年にはCeramic MaterialによるBladeの検討も行われていた。

Fig13[15]

Cooling Air Flowの概略。Combustorの内側には3つのBearingが組み込まれているが、それらをCompressor後段から引き抜いたAirCoolingし、その後Turbine VaneCoolingにも使用していることが分かる。またCompressor中段からもAirを引き抜きTurbineの後ろのStrutCoolingし、Turbine Diskも注意深くCoolingされている。ただCooling7%ものCompressor空気が利用されたので燃費悪化の原因となった。

Fig14[12]

さすがにFuel Control Systemは現代のEngineに比べれば単純である。電動Pumpにより燃料は導かれ右側に示されるGovernorで回転に応じ微調整される。Variable Area NozzleActuatorFuel Pressureで作動する。現代のEngineActuatorでも同じようにFuel Pressureで作動させる機構はよく見られる。Idleで約600lb/Hrの燃料を消費する。60000lbを発生するCF6で約1000lb/Hrなので確かに燃費は悪すぎる。

Fig15[12]

 

 

Oil System。右に示されるようにTurbine部分のBearingにはScavenge Pumpが専用に配置される。Compressorの前方は3つのBearingで支えられていたことが分かる。

Fig16[18]

   

 

Anselm Franz博士

Fig17

 

 

 

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 Munich Deutsches Museum, Me-262

              Fig18

 

 

 

参考Web

[1]Me 262 SUPER DETAIL WALKAROUND Part 4/4

[2]Junkers Jet Engine Developments

[3]PERFORMANCE INVESTIGATION OF A JUMO 004 COMBUSTOR by Robert C. Miller

[4]Flickr photo Jumo004

[5]Anselm Franz and the Jumo 004

[6]The Junkers “Jumo004” Turbo Jet Engine

[7]Jumo 004

[8]Some origins of German jet power page-4

[9]Jumo004 Wikipedia

[10]Combustion in the Gas Turbine A Survey of War-time Researh and Development

[11]Elements of Propulsion :Gas Turbines and Rockets

[12]Bulletin Messerschmitt Me 262

[13]Junkers Jumo 004 Museum and Survivor Engine

[14]Flightgloval Archive 1945

[15]Aeronautical Research in Germany: From Lilienthal until Today

[16]Hugo Junkers Homepage

[17]History And Experiences of HE-162 and HE-162 Report No.2 Performances with Jumo-004

[18]Design Analysis of Messerschmitt Me-262 Jet Fighter Part II – The Power Plant