29年度上期「トークサロン」第1回

 

『従事した都営地下鉄建設を振り返って』

 

 平成29年度上期第1回厚木稲門会トークサロンが、6月29日(木)にレンブラントホテル厚木の中華レストラン「トルファン」にて開催されました。

 今回のスピーカーは、石川 徹さん(S31 理工)。「従事した都営地下鉄建設を振り返って」というテーマで、カラフルでわかりやすい資料を準備の上丁寧にお話くださいました。

石川さんは大学では都市計画を専攻し、東京都に入庁。交通局にて、地下鉄建設に携わりました。地下鉄は現在9都市にありますが、最初にできたのは東京。地下鉄の父と呼ばれる早川徳次氏が、昭和2年に浅草―上野間2.2kmをつくりあげ、この現在の銀座線が、日本はもとよりアジア最初の地下鉄になりました。 

「もはや戦後ではない」という合言葉のもと地下鉄建設が次々と計画されましたが、当時は地下鉄の経験者がいなかったので、石川さんは地下鉄のパイオニアとして大変ご苦労されました。

  ご苦労した事の主なものとしては、 @用地買収―地下鉄が通るところの地上の全ての地主の了解をもらうこと A地中にある文化財と思われる埋蔵物の対処 B換気、排水、防災、水の浸入防止の工夫等々ありました。とりわけ、石川さんが責任者として担当された大江戸線の建設(H5年着工)は、「新しいタイプの地下鉄」を「安く」しかも「早く」という方針で推進することになったため、ご本人は淡々と話されていましたが、そのご苦労は並々ならぬものであったと推察いたしました。 

地下鉄は土木費が全体の5割を占めるので、トンネルの断面積を半分にできると全体の費用の25%削減が可能となるので、様々な工夫がなされ、建設費の削減に努力されたとのこと。

  具体的には、車両にリニアモーター(車両に取り付けられたモーターとレールの間に敷いた、リアクションプレートとの間の磁力を利用して推進力を得る方式で、車両が浮いて走行する方式とは異なる)を採用。これにより車輪が小さくて済むので車両のコンパクト化が可能となり、更にプラットホームの高さも低くすることができたので、断面積の削減に大変有効だった。

 また、ホームを全て“島式”(真ん中にホームがあって、両側に線路)にしたことにより、駅の幅も狭くすることができました。

 一方、断面積を小さくしたことによる利用者の圧迫感を軽減するため、“パブリックアート”の設置等の工夫も。(改札を出たところにレリーフや、ホームの両側にアートの設置等)

また、大江戸線は後発なのでトンネルを深いところに通さざるを得なかったこともあり大変苦労されたとのこと。(六本木駅は地上から42メートルで日本一深い) 

話の最後に、「大江戸線の開業時に事故が起こらなかったが、本当にありがたいことだった」という石川さんの言葉に真の責任者の姿を感じました。

 

 このような内容は滅多に聞けない事と、参加者は一様に熱心に聴き、資料話の中身について色々な質問が続きました。

地下鉄に乗っている時に大地震が起きたらどうなってしまうのか、という私達の一番の心配については、地下鉄は地面と一緒に動くためむしろ地震に強いとのことで、一同安心した次第です。

 石川さん、ありがとうございました。

 今後大江戸線に乗ったとき、石川さんのご苦労の数々を見ることができるでしょう。その時が楽しみになってきたお話でした。

                                            (S52理工 大貫玉美)