講演会『平家物語』の世界〜父と子の物語〜』

           講 師  大津 雄一氏(昭52教育)

 

 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。」

日本人なら誰でも知っているこの有名な書き出しで始まる『平家物語』ですが、講師の流れるような朗読に、会場は一気に中世文学の世界に誘われました。

 ご承知のとおり『平家物語』は平家の栄華と没落を描いた軍記物語ですが、講師は源平の戦いを追いながら今回のテーマである「父と子の物語」の舞台として、「敦盛最後(あつもりのさいご)」の段を取り上げます。

軍功にはやる熊谷次郎直実が弱冠17歳の平敦盛を討つ、その時に敵味方を超えて去来する「父と子の情感」を丁寧に解説いただき、会場は深い感銘に包まれました。

日本人の心情に深く根差し、長く愛されてきた『平家物語』の魅力の一端を見た気がしました。

 講師にとっても久しぶりの故郷の地での、見事なご講演でした。

                           (S52文 小林 孝雄)