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2002.2 No.98  発行 2002年2月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■「食品安全庁」新設/農水・厚労省が検討

■雪印食品事件について

■国立病院の医療事故「個人データ除き公表」/情報公開審基準

■増え続ける農道、税金の無駄がここにも

■公衆トイレの電力を水力発電で/南アルプスの山小屋

■電源のいらない自動水栓/TOTO

■カップめん回収装置/エコフレンド


1月のニュースから

■「食品安全庁」新設/農水・厚労省が検討

 農水省と厚生労働省は28日、食品の行政に関する双方の一部機能を総合し、新たに「食品安全庁」を設置する方向で具体的な検討を始めました。これは狂牛病を未然に防げなかったとの批判に応えるため、消費者から生産農家に至までの食品の安全性を包括的な監督する体制作りが不可欠だと判断した結果のようです。両省は早ければ今国会中にも関連法案を提出、来年度にも同庁を設置する見通しでいますが、将来的には「消費者保護庁」を新設する案も浮上しているといいます。

 歓迎できることですが、このような弊害を生んだ省庁システム全体の見直し議論につなげ、最終目的である「健康そして安全な国民生活の確保」という視点を軸に、新しい組織のあり方を考えてもらいたいものです。日本の縦割り行政の弊害が「無理」と「無駄」を生み、多額の税金を使う割にはその額に見合った効果がないことは、国民の大多数の知るところです。食品に限らず子どもの利用する遊具の安全性についても、町中の公園は国土交通省、学校・幼稚園は文部科学省、保育園や児童館は厚生労働省が管轄しているため、同じ安全基準や安全確保のための施策が異なっています。しかしこれら3省が、機械や電子回路を含んだ設備の安全技術のことを分かるはずがないと思うのですが(仮に分かるというのならば経済産業省の担当官に匹敵するほどのマンパワーが必要になるのですが…)、単に監督者としての威厳を保ちたいだけのようです。本来はその監督業務に徹底すればいいのですが、科学的な分析・検証方法についても口を出したがり、省庁独自の規格・基準に固執する裏には業界・団体などとの癒着、また不正の温床を作り上げているようです。全ての省庁業務は業界などに対する適切な監督とし、その業務の技術的根拠やマネージメントシステムは専門機関の作成する基準・ガイドラインなどで十分のはずです。今後消費者保護局を検討しているようですが、将来的には「総合安全省」的な組織が安全に関する全ての科学・技術的な分析・規格作りを行い、国民生活に関係する個々の規格の細目を統轄する各省庁に示し、彼らにマネージメントさせればいいのでしょう。もちろん個々の産業や業界などの抱える問題はあるので、それらは各省庁が総合安全省に規格の運用について答申をすればいいことです。大きな規格を元に、省庁の管轄する業者が法律を遵守しているかを検証すれば、「目的は一緒なのに基準が違う」というばかげたことは無くなるでしょう。こんな単純な組織作るだけで役人の人員2〜3割は削減できるように思いますし、このような国民の納得できる本質的な行政改革が進めば、税金などの国民負担も理解できるのですが…。

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■ペースメーカー、盗難防止装置で誤作動/厚労省、注意呼びかけ

 図書館などの公共施設や書店・電気店などの多くは、盗難防止装置を出入り口に設置しているようですが、心臓ペースメーカーをつけている利用者の安全性については国内の事故の報告事例がないことからあまり表面化していませんでした。しかし米国FDAでは昨年「過去10年間に44件の報告を受けている」と発表し、「万引き防止監視システム及び金属探知器により心臓ペースメーカがペーシングレートの変化やプログラムされたモードの変更を受け、失神及び胸痛等の干渉を受けた」という報告18件を明らかにしています。また植込み型除細動器が不適切に患者にショックを与えた報告2件、うち1件は万引き防止監視システムに寄りかかっているとき、他の1件は携帯型金属探知器でチェックを受けているときに発生したものです。更に金属探知器に曝された後にモニターのみのモードに変換されたケースが7件報告されていました。

 昨年、東京都内の医療機関に通院する80代の女性がつけているペースメーカーのプログラムが無効になったのを主治医が3回にわたり発見、調査の結果、女性が利用する図書館の磁気式盗難防止装置によって同じ状態になることが確認され、5月に厚生労働省に届け出ました。

 同省によると心臓の拍動に会わせて動くように設定したにもかかわらず、機械的に動く標準状態にリセットされていたといいます。女性に自覚症状はなく、健康被害はなかったということですが、同省では17日、この国内初の誤作動確認を受けて、医薬品・医療用具等安全性情報で医療機関や患者に注意喚起をしました。(医薬品・医療用具等安全性情報 No.173/http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/01/h0117-3a.html#13)

 店舗などでは盗難防止装置が設置されていることを明らかにしないで、そのセンサー装置の場所も植え込みなどで隠していることもあるため、ペースメーカーをつけている人は注意が必要です。しかし何らかの被害が発生する恐れのある設備を設けている施設・店舗では、隠さずに大きな看板でその旨をうたう情報提供が求められます。出入り口に盗難防止装置が設置されていることを明らかにすると、それを避ける盗難者がいるとでも考えているのか、あるいは知らずにいる盗難者をだましてとらえることを望んでいるのかもしれません。どうも封建的な暗い発想で、彼らにそのような振る舞いをさせない、といった抑止力に訴えることは考えていないようです。

 犯罪者を罰するだけではなく犯罪をさせない社会環境へと変化して欲しいのですが…。

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■雪印食品事件について

 毎日のようにニュースをにぎわしている雪印食品ですが、次々に明らかになる事実から消費者の不安は食品全てについて拡大しているようです。元々偽証表示が絶えない食品業界ですが、これほどの悪意と受け取られたこともあまりないことです。雪印乳業の不祥事と同じ“根っこ”に起因する今回の事件は、トップのすげ替えだけでは企業の体質は何も変わっていないことを見せつけました。残念ですがこのブランドはもう社会に必要ないのかも知れません。企業の担当・部課長のとった「会社のため」という顧客を欺く利益優先の企業論理の結果が、企業の存続に大きく関わる、という教訓(今度こそは関連業者の教訓になって欲しいのですが…)を残したことが唯一の成果でしょう。

 思えば今私達の身の回りにある多くのなじみのブランドも、ほんの少し前から急にのし上がってきたものが多いのです。何かしら悪さをしていてもおかしくはないと疑うのは、消費者の自然な考えであり、企業はそんな私達に客観的な企業活動全体を明確に示してもらいたいものです。企業が全ての法律を遵守するのは当たり前ですが、実際は利益を得るために法律ギリギリ、あるいは法律に抵触するのもやむを得ない、という内部事情が多いようです。しかし知的財産権などの場合は理解できますが、顧客からお金をもらい商品を販売する以上、品質・安全上の欠陥や虚偽の表示があること事態、犯罪と考える厳格な社内モラルが確立されるべきです。

 「分からなければいい」という論理は、自動車のスピード違反などとはまったく次元の異なるものでしょう。倫理やモラルの問題から犯罪意識が欠落し、「他社もやっていること」、「誰でもやること」などの言い訳ばかり考えるようになったら危機的です。目的を達成するための手段を選ばない企業の体質にはうんざりですが、打開策は企業のモラルや自浄努力に求めるのではなく、厳しい罰則しかないと思います。残念ながらそうでもしなければ直らない、そんな国民であることをもう十分見てきました。

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■国立病院の医療事故「個人データ除き公表」/情報公開審基準

 内閣府の情報公開審査会は9日、全国の国立の病院や診療所から提出された医療事故報告書をめぐり、厚生労働省が「患者を識別される」などとして大半を不開示としたことについて、事故の発生日時や担当医の氏名、謝罪文の内容など、患者の個人データを除く情報を広範囲に開示するよう求める答申を出しました。
国立病院の医療事故について具体的な情報公開基準が示されたのは始めてですが、従来から全て答申通り公開されていることから、閉鎖的な医療現場の改善が促されれることが期待されます。

 開示を求めた主な項目は、事故名、初診日、受診科、医療事故の医療行為名、原因、日時、病室番号、見取り図、主治医、術者(執刀医)、介護者の氏名、所属診察科、患者側との金銭などの交渉経緯、医療事故防止対策委員会の委員名、開催日時、議事録、警察への届け出と事情聴取の日時、聴取された者の氏名、謝罪文、事故現場、医療機器の写真などです。

 医療事故が起きてからの情報開示としては当たり前のことで、医師や病院側の隠ぺいを助長する「個人情報の保護」といった“隠れみの”で守られている現状がようやく変わりそうです。厚労省はこれまで医療事故報告書の公開請求に対し、病院名などを除き大半を黒塗りにして開示していました。請求した市民団体などがこれを不服として異議を申し立て、坂口厚労相が同審査委員会に諮問していたものです。遅すぎるとは言え、自民党だけで固められた内閣でないことも影響しているようです。

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■増え続ける農道、税金の無駄がここにも

 日本道路公団の高速道路に投入する巨額の国費が問題になりましたが、一般道と同じ道路である「農道」問題もあるようです。農道はさまざまな形で建設・計画され、全体の事業費がどのくらいの額になるのか、所管する農水省も「すぐには分からない」というものです。ただ来年度の政府予算では広域農道などに863億円の予算が付いていて、自治体の支出分を含めた総事業費はその約2倍の1,700億円程度になると見られています。
農道は地元の負担が少なく、一般的な市町村道の最終的な負担額である事業費の34%程度に対し、広域農道では6%程度というケースが多いといいます。そのため地元住民の「膨大な建設費を投じてまでも必要と思わない」という考えとは別に、立派な農道が作り続けられる構図になっているようです。しかも国土交通省の管轄する一般道と違い、別枠の農水省予算であるために二重投資の弊害も出ています。

 愛知県の知多半島では、事業費約93億円で2005年度の完成を目指す長さ40キロの広域農道の建設が進んでいます。すでにこの地域にある有料道路とほぼ並行していて、海岸沿いの国道と合わせると細長い半島に3本の道路が走ることになります。また石川県の能登半島の東側にある能登島は人口約3,300人ですが、この島に総工費55億円の一般道路として能登島大橋が1982年に完成、ところが99年には62億円をかけた中能登農道橋が農道として誕生してしまいました。明らかに建設が急務というものではなく、財源があるから、ということでの大きな無駄だったようです。

 市町村の発展という大義名分で役所・役場の担当者が飛びつく、そんな農水省の公共事業費ですが、いいことばかりでもないようです。それは広域農道を敷設する際の基準である、「自動車交通量のうち、農業に関わるもの(農産物を運ぶトラックやトラクター)などが過半を占める」というものです。そのため地域の農業規模から建設条件を満たすためには、全体の交通量を少な目にすることが多いようです。ところが道路の構造強度(アスファルトやその下に敷く砂利の厚さなど)は、この交通量を元に決められます。そのため農道の完成後、実際の交通量に耐えられないため、補修費に多くの出費を余儀なくされるケースが出てきます。茨城県八千代町では広域農道「ライブライン」を87年の完成後に譲渡されましたが、1日2,900台の通行量予測に対し、実際は昼間の12時間だけでも8,000台もの車が通り、道路の補修費は毎年1,000万もかかります。また、大規模補修時には4,000万円もかかったといい、道を全面的に造り替えない限り永遠に負担は続くのです。

 道路は「あればいい」という安易な気持ちで作られることもあり、完成後の投資費用と効果の検証が行われないことも問題です。道路に限ったことではなく、全ての公共工事では完成後に費用対効果を監督官庁および第三者機関が算出し、その時点での事業の必要度をランク付けしてもらいたいものです。そして毎年算出基準を見直し、同工事のランク付けを続けることで、そのデータを後世の公共事業に生かして欲しいものです。いずれにしても「予算を獲得したら使うだけ」といった、人の金だからできるという考え方(これは企業人にも同じことが言えます)、そして行ったことに対する反省無き体質の構造改革が必要でしょう。

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■公衆トイレの電力を水力発電で/南アルプスの山小屋

 長野県上伊那郡長谷村は、南アルプス・北沢峠(2,032m)で今年の夏山シーズンから、村営の山小屋「長衛荘」向かいにある水洗公衆トイレの運転に、近くの薮沢で水力発電した電力を供給することにしました。これはトイレの水を再利用するための循環装置や、浄化槽に空気を送るモーターなどに電力を供給するためのものです。沢に取水口を設けて約43メートルの自然落差を利用して発電機の水車を回すもので、20キロワットの出力で約2キロの電送路を使い同小屋まで送ります。

 今でディーゼル式発電機2台を利用していたのですが、排ガスや夜間の騒音が環境への配慮に欠けるとの指摘に応じたもので、事業費5,500万円の内半額近くを国の補助でまかなうことにしています。
同村では仙丈ヶ岳直下の避難小屋で太陽光と風力を利用した発電機を設置しいて「環境に配慮した設備で、南アルプス全体のイメージアップにつなげたい」としています。

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■電源のいらない自動水栓/TOTO

 デパートや公共施設では一般的になっている洗面所の自動水栓は、蛇口に手を近づけるだけでセンサーが感知して水が自動的に出て止まるため、利便性と節水にも効果があります。また、せっかく手を洗った後に人の触ったレバーを再び触る必要がないため、衛生面からも必要性が求められ、病院や食品を扱う工場・施設などでも必要なものとなっています。

 しかし電子機器のため、電源が必要となり乾電池や電源ソケットにつなぐ必要がありました。そこでTOTOでは外部の電源に頼らない画期的な自動水栓「アクアオート・エコ」を開発したのですが、その電力は何と水道水の水圧を利用するというものです。それは水道の水流を利用して直径5センチの羽根車を回して発電するもので、毎分3リットルの水量で1回5秒間の水出しを11回行えば1日分の電力がまかなえるとしています。価格は5万5,000円〜8万8,000円で、一日の使用頻度が100回以上であれば数か月で元がとれるようです。

 水道を使うたびに電力が得られる、という資源の有効利用に目を付けたメーカーの開発力には脱帽です。これを機に隠れたエネルギーの有効利用が進むことが期待されますが、同じ発想で水道水による充電器が普及し、全ての水道栓に負荷の大きい風車が付いたときに、送り手の設備は大丈夫なのかと、素人的な心配事が出てきました。

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■カップめん回収装置/エコフレンド

 環境関連装置のエコフレンド(東京・豊島)ではカップめん容器用のデポジット対応型リサイクル装置を4月に発売します。ジュースの缶やびんを返却するデポジットシステムはありますが、カップめん容器では初めてだといいます。容器包装リサイクル法の施行で回収を徹底したいコンビニ、食品メーカーや学校などに初年度70台を販売する計画です。

 装置はカップめん自販機に併設するもので、直径20センチまでの千容器に対応可能で、容器のバーコードを読みとり返した容器が該当する自販機で売ったデポジット対応容器かどうかを判断、10円を払い戻すもので、容器は十分の一に圧縮して回収しやすくします。

 少し前まではデポジット制度が進まないようでしたが、最近ではジュースやコーヒーの缶・びん・紙コップの容器ではデポジット制度が急拡大しているといい、カップめんにも応用するものです。家庭ゴミを分別して出すこともあまりないコンビニ族でも、環境負荷軽減のためにやるべきことが自然に理解されるという効果もあるかもしれません。

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終わりに
 家電メーカーでは最近インターネットを使って冷蔵庫内の食品を管理できる商品などを開発していますが、このようなネット家電といわれる商品の使い勝手はどうなのでしょう。たとえば冷蔵庫ではホーム端末であらかじめ買ってきた食品の種類や賞味期限などを入力しておくと、買物をする際に携帯電話などから在庫や賞味期限を確認できるとしています。しかしどの程度の人が冷蔵庫に入れる商品1つ1つの情報をあらかじめ入力するのでしょうか。最初はおもしろ半分でもその労力に見合った情報管理の代償とはとても思えないのですが…。

 各商品のバーコードを冷蔵庫にかざすと自動的に読みとってくれて、あとは賞味期限だけの入力ならまだしも、このような商品は単に目新しいものだけで終わって欲しいものです。将来的には商品内臓のICチップによる商品情報を無線で自動的に読みとることも可能になるのですが、こんな些細なことも管理できないで機械に頼っていると、与えられた情報で行動させられるようで少々気になります。便利さに飼い慣らされないようにする家庭内の情報管理くらいは適度な頭の運動でもあり、また失敗を反省する感情を生むことでもあり、私達には大事な要素だと思いますが…。最近ではITという言葉が躍る製品が多いのですが、技術先行型で本当に人の健康や快適さを追求するソフトの立ち後れが目立ちます。

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