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2000.10 No.82  発行 2000年10月10日
発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12
Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■テレビ発火事故公表せず、今になって自主回収4万5,000台/三菱電機
■新幹線24時間立ち往生/JR東海、乗客には情報も提供せず
■ファイアストンのタイヤリコール問題
■患者取り違え経験16%、ニアミス68%/文部省の大学病院調査
■入院初日は要注意/日本看護協会、誤薬事故調査速報から
■患者が医療費の不正をチェック/領収書求める動きが活発
■2日でパソコン修理/日本IBMの自宅出張サービス


9月のニュースから

■テレビ発火事故公表せず、今になって自主回収4万5,000台/三菱電機

 雪印問題に端を発した顧客無視の事件は、食品メーカーおよび消費者の関心から品質問題として回収が拡大し続けています。自動車業界でも三菱自工のリコール隠しの問題が発覚し、大きな事件が立て続けに起きました。このため医療関係の誤薬などの事件は日常化した感じすらあります。電子機器関係では自主回収の公告がよく目に付くようになりましたが、大きな顧客無視の事件がないことから、業界あるいは通産省がまともなのかなどと思ったりしていました。しかし業界を問わず企業の顧客無視の体質を引きずっている企業があったのです。三菱電機がテレビの発火事故を公表せずにしかも自主回収もしていなかった事実が判明しました。

 同社によると、87年から90年にかけて製造した大画面カラーテレビについて発煙・発火のクレームが66件あり、このうち火災などの事故が7件あったといいます。このため同社では12日、遅ればせながら自主回収の実施を決めたものです。回収の対象となるのは29−37インチの大型テレビで、計10万台製造したうちの推定残存台数は約4万5,000台に上るとみられています。基板の割れやダイオードにちりが積もることが発煙・発火の原因と見られていることから、同社では「簡単な部品交換で済むので、客先で修理することになるだろう」としています。

 テレビは高圧回路を内蔵しているため、絶縁不良などからアークによる発煙・発火事 故が起きやすく、相次ぐ発火事故に東京消防庁が業界に安全対策を要望したことがあります。これを受けた業界では90年7月に安全設計の自主基準を設定し、その後テレビの発火事故は激減しています。しかし古いテレビの事故が起きることから、東芝、パイオニア、松下電器産業、ソニーの4社は事故を公表し無償修理を行ってきました。しかし三菱電機は事故の実態をつかんでいながら、公表することを拒んできました。

 最近の家電・電子機器業界でも出荷後の製品の安全問題が発覚すると、回収・無償修理を行う企業が増えています。とくに発熱や発火の恐れがある製品は、今年になってからだけでもカーステレオ、インターホン、シェーバー用充電器、携帯音楽プレーヤー、充電電池パック、冷蔵庫など数多くあります。火災への確率は低いかもしれませんが、火災の危険を最小限にし、生命・財産の損害を未然に防ぐための回収は評価できます。企業にとっては負担の大きいことですが、起きた事故の対処も大事ですが、類似の事故を起こさない取り組み、これが今の社会が求めていることです。各企業もそのことを十分認識していると思われ、三菱電機の対応は家電業界でも特異なケースかもしれません。

 しかし工業会の中でも幹事会社として他社をリードすべき同社が、このような利己的なアウトサイダーでは困ってしまいます。また同社のコメントの中に、「今回の不具合については、電気用品取締法の対象でないため公表しなかった」とありますが、これも困ったことです。恥ずかしくないのでしょうか、問題を全く理解していないようです。電気用品取締法は技術基準であり、最低限守るべき安全対策の指針です。しかしながら絶対安全があり得ないために事故は必ず起きるものであり、“そのこと”への社会・消費者に対する責任を求めたのがPL法だったわけです。「事故により迷惑をかける顧客を最小限にする」という発想があるならば、「法律に反しなければいい」などの保身的責任論など出てこないはずです。

 今回の事件では京都製作所長の判断で事故が公にならなかったのですが、本社の担当本部も追認したといいます。このようなマネージメントシステムの結果信頼を失ったわけですが、同社のリスク管理とは、その場しのぎの低レベルのものだったのでしょう。

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■新幹線24時間立ち往生/JR東海、乗客には情報も提供せず

 東海道新幹線は11日夕方、東海地方の記録的豪雨のため名古屋−岐阜羽島間で列車の運転を見合わせましたが、運転再開は翌日午後2時24分となる異例の事態となってしまいました。東京−新大阪間に設置された雨量計が運行規制を上回ったため運転を見合わせたのですが、JR東海の判断ミスから雨の影響のない東京などからの列車を止めることをしませんでした。その結果列車は途中で次々に立ち往生、最終的には74本の列車の乗客に迷惑がかかりました。JR東海では「東京から運転規制地点の岐阜羽島までは2時間で、そのうち規制解除の可能性があると判断、運行を続けた。止めると逆に『どうしてだ』といわれてしまう」と話したといいます。

 列車内や駅構内で一夜を明かした乗客は約5万2,000人にも上りましたが、11日午後3時過ぎの東京行きひかりは20時間以上も遅れたことになります。毎回問題になるのですが、列車が駅と駅の間に止まったまま動かない場合、乗客は狭い社内で苦痛を強いられるわけです。11日夕方に上りの新幹線に乗り、その後18時間社内に缶詰になった乗客の話では、「新幹線は発車してまもなく止まったのに、乗車前には、駅で運転規制になる恐れがあることを知らされなかった」とし、停車後、社内アナウンスで雨量を理由に規制がかかったことを知ったが、JRはその後も「規制解除の見通しは立っていない」と繰り返すだけだったといいます。

 もちろん次々に列車を発車させて被害を拡大させた不手際はありますが、問題は事故が起きたときに乗客の置かれている立場を理解した、適切な情報提供にあると思います。テレビのニュースなど見ることのできない乗客のために、現状の認識と今後の進展を少しでも知らせることで、不安の解消につとめる必要があり、これは乗客の知るべき当然の権利です。例えば「現在立ち往生している列車が○本あります」と説明することで、不幸に見回れたのは自分たちだけではない、との連帯感からくる安心を与え、「気象庁の予報によると今後もしばらくは豪雨が続くことが考えられ、規制解除の見通しは今現在立てることが難しい状況です」とのJR側での判断の難しさを説明、そして「できるだけの情報を入手し、今後の見通しについて速やかにお知らせするつもりです」との最大限の努力を払っている、などの説明が必要だったでしょう。
「自然災害だから自分たちに非はない、しょうがない」ということは一般人の認識で、公共機関ではそのような考えがあるとしたら問題でしょう。どちらにしろ乗客の安全確保や不安解消のための努力を行い、「乗客を守る」という視点が欠けていたのは事実です。

 JRグループでは情報提供に関する問題がよく指摘され、昨年も3件ほど記憶に残っています。1月、中央線の韮崎−塩山間で電気系統のトラブルで立ち往生した特急「スーパーあずさ」では、暖房が切れた車内に乗客が5時間半も閉じこめられました。乗客の1人は「長時間閉じこめられたのに、JR側から説明がないため、自分の携帯電話で家人と連絡をとって状況を把握するありさま」と述べていました。このときのJR東日本の説明に、情報提供が不十分だったことについて「バッテリーが切れ、社内放送ができなかった」とありましたが、バッテリーが切れても各車両に出向いての説明がなぜできないのか、つまらない言い訳をする彼らの無神経さに腹立たしい思いをしたものです。

 6月、上越新幹線で車両故障を起こしたMaxがトンネル内で立ち往生、乗客は約4時間缶詰にされました。そのときの乗客の話では、正午過ぎに急ブレーキがかかって列車が止まり「車両故障です」とアナウンスがあった後、約2時間「お待ち下さい」というだけの放送が続いたと言います。

 9月、山陽新幹線の徳山−小郡間でひかりが立ち往生、後続の3列車も両駅間で停止してしまいました。停電のために冷房が止まった車内では2,000人の乗客が苦痛を強いられ、一部の乗客が体調不良を起こし5人が入院する事態となりました。このときはさすがに中国運輸局も問題視し、「乗客らへの情報提供が不適切だった」との内容を含む警告書を出しました。

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■ファイアストンのタイヤリコール問題

 海の向こうではフォード「エクスプローラー」に装着されたブリヂストン・ファイアストン製のタイヤリコール問題で大騒ぎです。原因が完全に特定できない中、「タイヤのゴムがはがれるのはタイヤの問題」とするフォードと、「車両の重量に対する空気圧の設定やサスペンションの設計ミスが原因」とするファイアストン双方の主張がぶつかり合っています。騒ぎはファイアストンが8月から始めた650万本のリコールを機に表面化したもので、昨年9月にサウジアラビアで多発した事故の対処としてタイヤ交換に応じたことを、今年5月まで政府へは報告しなかった事実が明らかになるなど、情報開示のまずさも指摘されています。そして事故多発のベネズエラでは政府の追及も強まり、「エクスプローラー」で最大400件の交通事故が発生し、最大100人が死亡した、と言っています。また、ファイアストン以外のグッドイヤーでも事故が出ているという報告を受け、政府当局者による調査が始まったといいます。

 米国での訴訟は5月末で71件起きているといわれ、訴訟に絡んでの証言からファイアストンのずさんな品質管理も明らかになってきました。中でも製品検査でタイヤの外からキリで気泡を抜く、危険な「オーリング」という処置を行ってきたことから、米高速道路高通安全局が現在調査しています。ファイアストンの品質問題と政府・消費者への情報提供のあり方、そしてフォードの設計基準などの技術的問題が絡んでいます。車の事故によるPL訴訟では大企業であるフォードへの追求が強まることは必至で、フォードのファイアストン攻撃はさらにエスカレートしそうです。

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■患者取り違え経験16%、ニアミス68%/文部省の大学病院調査

 文部省が全国の国公私立大学病院に対し行った医療ミスに関する調査で、医薬品投与時に患者を取り違えたり、取り違えそうになった経験のある看護婦(士)の多いことが1日分かりました。調査は今年6月、全国の79国公私立大学病院の薬剤部長と、内科、外科、小児科系看護婦・看護婦長、研修医の指導医を対象に実施し、78大学病院から回答を得たものです。

 実際に「患者を取り違えたこがある」とした看護婦(士)は15.5%で、「取り違えそうになった」は68.1%に達しています。日常的に患者の取り違えがよく発生していることが改めて浮き彫りになりました。医薬品投与に関しては、医師が記載する指示書の内容の問題もあり、指示書が「明確である」は5.2%、「ときどき不明確」が91.4%にも達しています。

 医療ミスの背景についての質問では「思いこみ」(99.5%)、「忙しさによる注意力の低下」(95.6%)が目立ちましたが、「ものを言いにくい職場の雰囲気」というのも53.5%ありました。

 一方、研修医を指導するベテラン医師に尋ねた問いに、研修医が書いた処方箋、指示書のチェック状況で「必ず確認する」が、たったの26.5%しかなかったのも気になります。また、担当医師以外の医師が単独で患者の処置を行うケースは71.8%にも上り、「患者の顔を知らない医師が常態的に処置している現状は問題。事故防止の向け主治医の責任体制を確立すべき」(同省医学教育課)の指摘も出ています。

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■入院初日は要注意/日本看護協会、誤薬事故調査速報から

 日本看護協会のリスクマネジメント検討委員会でまとめていた、誤薬事故の調査の一部がまとまりました。調査は病院で発生した誤薬事故について無記名で記入したもので、首都圏の11病院で今年2月の1ヶ月間に経験した誤薬事故総数は257件となっています。事故による後遺症や死亡例はなく、「実害がなかった」が58%、「バイタルサインに変化はなかったが、何らかの影響を与えた可能性がある」が38%、「事故により、新たな治療、検査、処置の必要性が生じた。または、入院日数が増加した」が2%でした。興味深いのが入院14日間の誤薬事故発生件数で、入院当日がもっとも多く26%、ついで2日目が16%となり、3日目以降は10%以下と平均化しています。また、事故の発生件数を時間帯別で調査した結果、平日の18時〜21時、休日の9時〜12時に多いことも分かりました。

 これらは人間エラーの発生しやすい「“相”の変わるとき」、つまり新しく患者が入り看護婦が初めて接し、まだ患者と病状が把握しきれてない時期、3交代勤務がオーバーラップする看護業務の最初や最後の時間帯などに事故が集中しているのが分かります。頭で理解できても無くならない事故には、記録、他のスタッフへの再確認、点呼・発話などによる意識付けが大事になるでしょう。入院当日と次の日、看護婦の交代前後、新たに発生する治療時などは、患者や家族の気の抜けないときです。

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■患者が医療費の不正をチェック/領収書求める動きが活発

 「年間に3,000億円以上もの不正請求がある」(ゼンセン同盟)といわれるように、医療費の不正請求は後を絶たないようです。脱税のなどの不正なニュースは病院に限らず多く、医療費の不正請求も「分からなければいい」とする病院が多いと考えてしまいがちです。また医療費の場合は実際に自分の治療にかかった医療行為の代金ですから、誰でも関心があると思います。

 医療費の何割かは、病院側が作成する「診療報酬明細書(レセプト)に基づいて健康保険組合が負担しますが、レセプトに記載される薬、注射、検査などの治療内容は医師の自己申告のため、請求内容の適否を判断するにはカルテと照合する必要があり手間がかかります。このため架空請求や水増し請求が後を絶たず、自己申告を偽る確信犯にはなすすべもありません。このような現状打破のため、治療内容の内訳が記された医療費の領収書をもらう運動が始まりました。領収書があれば、自宅に健保組合から郵送される「医療費通知」と照らし合わせて、おかしな請求が見つけられます。
自動車総連(構成員約76万人)は今年1月、「領収書を下さい」と書かれた名刺サイズのカードを全組合員に配布、病院の窓口で料金を払う際にカードを提示してもらうことにしました。なかなか言いづらい人もいることから、カードの提示という方法を考えたものです。その後ゼンセン同盟(約58万人)も同様のカードを作成し3月から全組合員に配りました。こうした動きを受け、連合も9月下旬から800万枚のカードを地方組織や傘下の労組を通じて配布することを決めました。

 毎月健康保険料を払っていますが、決して安い額ではなく、それも少しずつ値上がりしてきます。医療費の不正請求のために個人が保険料を不当に負担しなければならないとも考えられ、額の大小に関わらず気になります。天引きの保険料であってもしっかり監視し、自分の支払う金額に見合った医療・質を求めていきたいものです。

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■2日でパソコン修理/日本IBMの自宅出張サービス

 日本アイ・ビー・エム(日本IBM)では、パソコンの修理にユーザーの自宅に出張、その場で修理するサービスを18日から始めます。出張サービスの対象となるのはデスクトップ機の「アプティバ」で、18日の新モデル発売を機に開始するものです。電話で受けた依頼を最短2日で修理するもので、修理完了までの時間としては国内最短とのことです。これまでは故障した製品は購入店を経由し、日本IBMが修理していたので、修理後の製品がユーザーの手元に届くまで約15日かかっていたといいます。これをリコーテクノシステムズに委託し、同社の国内拠点で対応することなります。パソコンの修理は、通常ユーザーが購入店に出向き依頼しますが、修理がいつ完了するのか店側が把握していないことが多く、ユーザーの問い合わせにも満足に答えられない店員・店があります。修理に出して1週間ほど経ってから電話で問い合わせをしても、「いつになるか分からない」という返事もあります。それでも「メーカーに問い合わせくらいできるでしょ」と促すと、次の日に「修理が完了しました」というおかしなタイミングの電話を受けることもあります。顧客が困っているときに誠意を見せない販売店の、レベルの低さを感じます。そのような中、日本IBMのサービスは評価できます。

 ところでアップルコンピュータの場合では、全国展開している日本NCRのサービスショップ(クイックガレージ)に持参すると、その場で症状を見てもらえます。部品がないときは部品が入り次第都合のいいときに訪れ、1時間程度で修理してくれます。仕事でパソコンを使っている場合はとても心強いもので、購入店などにはもっていく気がしません。最近では修理に出したパソコンのハードディスクのデータの流出も気になることから、目の前での修理はとても安心できます。

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終わりに

 今月も相変わらず異物混入の食品ニュースが多く、どのメーカーにも衛生管理上の問題が山積しているようです。しかし何度も問題を起こす工場には困ったもので、何とかならないのかと少々怒りたくもなります。今度は日本ケロッグ高崎工場で製造した「レーズンブラン」から我の幼虫、山崎製パン仙台工場では蒸しケーキにゴキブリが混入していました。

 日本ケロッグは製造が6月のことからまだしも、山崎製パンは8月31日の製造でした。まさか「商品回収だけをすればいい」などとは思ってないでしょうが、ちょっとずさんです。前回の異物混入後、何を改善したのか疑いを持ちたくなります。おそらく異物の混入経路だけを見直し、工場全体のシステムまでチェックしあらゆる問題点を洗い出さない、その場しのぎの対策だけで、予防措置のできない企業なのでしょう。このような企業の商品はしばらく買いたくないですね…。

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