1998.11 No.59  発行 1998年11月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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関西でNTT専用線がダウン/企業の活動大混乱
清涼飲料にカビ/JT、ダイドードリンコ、ポッカ、日本コカ
携帯電話、運転中は自粛を/宮城県白石市で条例
陪審制導入検討/政府、司法制度審新設へ
武蔵工大が環境ISO取得/国内大学では初
ダイオキシン汚染土壌の除去始まる/能勢町ごみ焼却施設
従業員の健康調査/能勢町のごみ焼却施設
能勢町のごみ焼却施設閉鎖へ
低公害タクシーの導入進む/長野
自動販売機の紙コップで10円払い戻し/アペックス
スタイニー瓶の回収で協力/アサヒとセブンイレブン
「有機」の認証基準を厳しく/JAS法改正案


10月のニュースから

■関西でNTT専用線がダウン/企業の活動大混乱

 28日午前10時過ぎ、大阪市東淀川区の日本電信電話(NTT)東淀川ビル内で、企業の専用回線などが入った構内設備が故障する事故が発生しました。このため大阪府や兵庫県で一般電話から警察への110番通報が2時間近く不通となり、関西国際空港などで航空機の離着陸ができなくなったほか、3,000社以上の企業に影響が出ました。
 NTT本社によると、午前10時7分頃、東淀川ビル内の中継用専用線装置の電源が故障し、専用線2万3,000回線のうち約1万4,000回線が使えなくなったものです。原因は設計上の許容範囲以上の電圧変動が起きたため、と発表されました。11月に入り調査結果が明らかになり、それによると「電話加入者線試験装置」と呼ばれる装置が不要となったため、撤去のための準備作業として28日午前9時半頃から関連会社の社員がヒューズを抜き去ったために専用線装置内のコンデンサーが機能せず電圧変動をもたらしたようです。
 どのような回路構成なのかは分かりませんが、現在機能している回路に操作を加える作業が何の制限もなくできてしまうシステム・管理であったことは事実で、全くお粗末な限りです。
 ところで、バックアップ体制を取っていた企業では全く問題は発生せず、企業によるリスク管理の差が出たことは興味深いものがあります。阪神大震災で甚大な被害を受けた大阪ガスではNTT回線から独立した無線ネットワークを確立し、京都に「中央指令サブセンター」を稼働させ大阪と京都の二拠点体制となり「当面バックアップ体制は十分」(広報室)としています。またシャープも「問題ない」(広報室)といっています。
 しかしNTTの専用線は電話で使う公衆回線とは異なり、「安定した高品質のサービス」が売り物だっただけに、宣伝文句として使われる物理的なスペック(仕様)を保証する、システム全体の安全度の評価を行っていなかったことを露呈してしまったようです。

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■清涼飲料にカビ/JT、ダイドードリンコ、ポッカ、日本コカ

 日本たばこ産業「JT」が製造・販売している清涼飲料「桃の天然水」の製品の一部にカビが混入したため、JTが自主的に回収していることが2日明らかになりました。JTは混入の事実を東京都などに報告しなかった上、異常に気が付いたあとも販売しており、東京都などは調査に乗り出すとともに、食品衛生法違反の疑いもあるとして処分も検討することにしています。
 カビが入っていたのは8月15、17、18日に製造された500ミリリットルペットボトル入りの製品で、群馬県の日本キャンパック赤城工場で製造されたものです。9月下旬に北海道、中国、四国地方の複数の販売店から「ペットボトルの中にカビのようなものが浮いている」とクレームがあり判明したものです。
 JTが調べたところ、製品の中に直径1〜1.5センチの緑色のカビが浮遊していることが確認され、同時期に製造されて出荷されたペットボトル約8万6,700ケースを9月29日から回収を始めました。
 JTの「桃の天然水」と同じ製造元で、ダイドードリンコが販売する「ぶどうのきれいな天然水」にもカビの混入があったのですが、ダイドードリンコでは群馬県などに報告せずにいたことが、3日判明しました。
 またポッカコーポレーションが販売している「さくらんぼのおいしい水」のペットボトルの一部に、直径2センチ程度の白い綿上のカビのような異物が混入したり変色したりしているものが見つかり、2日から自主回収をしているとの報告が4日までに同社から名古屋市衛生局にありました。異物が見つかったのは宝積飲料志和工場「広島県東広島市」が製造した約2万9,000ケースです。
 これで終わりかと思ったのですが、日本コカ・コーラグループが製造販売している「爽健美茶」の一部にカビが混入し、同グループが自主回収していたことが27日に明らかになりました。消費者へは注意喚起をしておらず、厚生省ではコカ・コーラグループからの報告は届いていないと言っています。この異物混入は消費者から日本コカの顧客相談窓口に問い合わせがあり判明したもので、日本コカでは小売り各社に「社会情勢にかんがみて、念のため商品を交換することにした」と回収を要請したものです。
 さて、JTの場合ですが8月16日に製造された約37万本についても全品回収することを5日に明らかにしました。JTでは16日の製造分についてもカビが混入している疑いがあるとし、この日の製造分全品に対し目視検査を実施、80本からカビを確認したものの、残りの製品は「異常なし」として9月28日以降全て出荷していました。ところが今月4日、「検査済みの製品1本からもカビの混入がある」とのクレームがあり、急所回収を始めたものです。目視検査で対応したということは、カビが増殖することが分かっていなかったのでしょう。全くいいかげんなもので、呆れてしまいます。
 JTとダイドードリンコのカビ混入事件の原因として群馬県は6日、製造元の「日本キャンパック赤城工場」に汚れたペットボトルが納入され、同工場がきちんと洗浄せずカビが繁殖した可能性が高い、と発表しました。同県衛生食品課では、ペットボトルの容器を納入している「北海製缶千代田工場」が、ふたを開けたまま倉庫に放置していた古い容器数百本を混ぜて納入、キャンパックでは通常通りの洗浄をしたが、汚れがひどく洗浄しきれなかったためカビが発生した、と見ています。ところで納入された容器に対し、キャンパックが検査を一切していなかったことも判明しました。製造業では当たり前の「受け入れ検査」をしない企業があるのですね。ひどいものです。人の口に入る飲料・食品を提供する製品の品質をどのように考えているのでしょうか。
 我が国では平成7年の食品衛生法の改正により、食品の衛生管理システムであるHACCPによる衛生管理が「総合衛生管理製造過程」の承認制度として位置付けられました。その結果、承認対象食品である乳・乳製品、食肉製品、魚肉練り製品などの業界ではHACCPの導入を積極的に行ってきました。現在、承認対象食品ではない清涼飲料水の業界では対応が遅れているのか、ミネラルウォーター異物混入騒ぎがあったにもかかわらず、大手4社の品質管理がこの程度というのは困りものです。しかも、“隠す体質”が各社共通というのはどういうことなのでしょうか。清涼飲料水業界の猛省を促したいものです。

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■携帯電話、運転中は自粛を/宮城県白石市で条例

 宮城県の白石市議会は2日までに、自動車運転中の携帯電話を自粛するよう促す条文を盛り込んだ交通安全条例を可決し、施行しました。罰則はないものの、携帯電話が絡んだ交通事故が社会問題になっていることから意識改革につなげたいとのことです。たしかに車を運転していると、突然前の車のようすがおかしくなることがあり、原因が携帯電話の使用であることをよく経験します。その運転手だけが事故で被害を受けるのならまだしも、周りの車両や人などに危険を振りまいている行為は、やはり法律により規制すべきでしょう。

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■陪審制導入検討/政府、司法制度審新設へ

 政府は5日、陪審・参審制度の導入や法曹人口の拡大など司法制度改革を総合的に検討する司法制度審議会(仮称)を内閣に新設する法案を、次期国会に提出する方針を決めました。
 この審議会では、他に裁判の迅速化、法律扶助制度、弁護士事務所の法人化、司法関係予算の拡充などの司法制度改革や準司法機関である公正取引委員会についても全面的な検討を行う、としています。
 中でも市民が裁判に参加する陪審制と、選出された市民が裁判官と裁判に当たる参審制については最高裁も調査研究を進めていて、今後の動向が注目されます。

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■武蔵工大が環境ISO取得/国内大学では初

 武蔵工業大学の環境情報学部が28日、環境管理・監査の国際規格「ISO14001」の認証を取得しました。国内の大学での認証は初めてのことです。 適用範囲は環境情報学部が置かれている横浜キャンパス全域で、教職員、学生の他、常駐する受託業者全員が同システムに参加します。
 大学による環境ISOの取得は、まさに生きた教材として利用でき、そこで教育を受けた学生は将来企業などで活躍することになるでしょう。このため今後は、企業側でも環境ISO取得大学の学生に注目することになり、他大学の認証取得も進むかもしれません。

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■ダイオキシン汚染土壌の除去始まる/能勢町ごみ焼却施設

 大阪府能勢町のごみ焼却施設「豊能郡美化センター」で2日午前、ダイオキシンに汚染された土壌を除去する工事が始まりました。高濃度ダイオキシンを検出した施設の南斜面約1,200平方メートルで、深さ約20センチまでの表土約250立方メートルを除去する工事で11月末までに終える見通しです。土のう袋に詰めた土の最終処理については未定で、当面は施設内の倉庫などに保管するとしています。9月21日に発表された厚生省調査で、南側と同レベルのダイオキシンを検出した施設北側斜面の土壌などを除去するかどうかはまだ決まっていません。
 ダイオキシンで汚染された土壌の除去は国内初めてのことですが、高濃度ダイオキシンを検出した府立能勢高の実習農場や、同センターの調整池の浄化も行うことにしていて、これには総額約3億円の予算を見積もっています。大阪府と同センターに出資する能勢、豊能両町で負担するわけですが、健康・安全への配慮を軽く見た結果でしょう。

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■従業員の健康調査/能勢町のごみ焼却施設

 労働省は3日、大阪府池田保健所能勢支所で能勢町のごみ焼却施設「豊能郡美化センター」の従業員らの緊急健康調査を始めました。ダイオキシン問題で労働省が健康調査を実施するのは初めてのことで、この日は午前9時から同省派遣の医師、看護婦らが1人当たり200ccの血液を採取、2日間に分けて4日も採血します。国内最高濃度のダイオキシンが検出された同センターでは、原因が開放型焼却炉から濃縮されたダイオキシンの飛散であることが分かり、従業員の健康が気になっていました。
 労働省では自治体に対し今年度、焼却場の施設内の空気中に含まれるダイオキシン類の濃度を測定するように求めていますが、自治労長野県本部では15日までに、県内の公営のごみ焼却場で働く職員を対象にダイオキシン類による実態を調査する方針を決めています。労組としての取り組みは珍しいと言われていますが、今後は多方面でごみ焼却場で従事する人の健康がクローズアップされることでしょう。

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■能勢町のごみ焼却施設閉鎖へ

 大阪府能勢町の「豊能郡美化センター」のダイオキシン汚染に関連して、能勢、豊能両町と兵庫県川西市、猪名川町の隣接4市町村は12日、広域ごみ処理施設の新規建設に合意したと発表しました。これにより同センターは事実上閉鎖が決まったことになり、ダイオキシン汚染の問題では初めてごみ焼却施設が閉鎖に追い込まれたことになります。焼却炉は昨年6月から運転を休止、粗大ごみ分別作業などは続けながら能勢、豊能両町が改修を検討してきましたが、厚生省の調査による炉の構造的な問題と高濃度のダイオキシン汚染が判明したために改修を断念したものです。開放型の炉の構造的な問題をクリアするためには、改修ではなく作り直しになることが分かったのでしょう。現在運転休止中の各地のごみ焼却施設でも、この焼却施設の閉鎖は大きく影響すると思います。
 住民らは9月に焼却炉メーカーの三井造船などに、被害調査や補償を求める公害調停を府公害審査会に申請しています。また10月9日には11億円あまりの損害賠償をメーカーに求めるべきだとの住民監査を請求するなど、今後行政、焼却炉メーカーの責任が追及されていくことでしょう。

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■低公害タクシーの導入進む/長野

 長野県内のタクシー各社がハイブリッド車「プリウス」の導入を積極的に進めています。長野市の宇都宮タクシーは26日、県内で初めてハイブリッド車1台の営業を開始し、11月には松本市の信州名鉄交通が2台、アルピコタクシー中央が2台、岡谷市のアルピコタクシー岡谷が1台、導入します。来年2月にはアルピコタクシー松本(松本市)が1台導入することにしています。
 長野トヨタ自動車によると、現在「プリウス」がタクシーなどの営業車で使われているのは全国で約10台で、5月に京都市のタクシー会社が試験導入してから全国的に広がってきました。観光県である長野のタクシー業界が環境保護のPRを始めたようですが、運輸省の低公害車普及の補助金交付制度を利用すると一般のタクシー車より幾分高くなる程度で導入できることがメリットとなっているのは確かです。
 各社とも今後台数を増やすことをすでに決めており、営業車としての経済性などのテストデータによってはさらに増えそうです。
 空気と水のおいしいイメージの長野県には、環境に優しい「プリウス」が似合っているようです。

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■自動販売機の紙コップで10円払い戻し/アペックス

 自動販売機運営会社のアペックス(愛知県大府市、森一社長)は同社の自販機で販売した飲料の紙コップを10円払い戻すことで回収する機械を開発しました。同社が運営する自販機に年内500台、来年末までに2,000台を設置し、紙コップのポイ捨て防止とリサイクルに役立てることにしています。
 小さなことのようですが、まとまれば大変な量になる使い捨て紙コップです。もう一つ大事なことは、消費者に紙コップでもリサイクルの必要性があることを訴えることにあると思います。この種の機械は業界でも初めてのようですが、業界の積極的な後押しで普及させてもらいたいものです。ただコスト的な問題ありそうなので、税制上何らかの配慮が欲しいものです。

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■スタイニー瓶の回収で協力/アサヒとセブンイレブン

 アサヒビールとセブンイレブン・ジャパンは、アサヒが販売する小瓶ビール「スタイニー」の空き瓶の回収キャンペーンを始めました。このキャンペーンは空き瓶をセブンイレブンの店舗に返却した人に抽選で景品が当たるもので、セブンイレブンが企画しアサヒが協力する形で実現しました。期間は11月15日までで、空き瓶4本を持ち込んだ人にくじ引きのカードを配布、当選者には空き瓶を入れるバッグや酒のつまみが当たります。
 スタイニーは現在、「スーパードライ」「黒生」など3種類あり、発売当初から空き瓶が回収できるかに注目が集まっていましたが、アサヒによると現在「8割を上回る順調なペース」のようです。セブンイレブンは環境に配慮する企業のイメージアップを狙い、アサヒは空き瓶の回収をさらに進めることで販売量のアップを期待しているようです。
 若い人を中心に環境に配慮した製品を好意的に見る人も増えて来たようですが、環境負荷の少ない「格好いい」消費行動を促す企業の努力は評価できると思います。

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■「有機」の認証基準を厳しく/JAS法改正案

 農水省はこれまで基準があいまいだった野菜などの有機食品に厳しい認証基準を導入することを決め、認証制度を盛り込んだJAS法改正案を99年の通常国会に提出することにしました。
 新認証基準で有機と表示できるのは、農薬や化学肥料を3年以上使わない土地で栽培するなどの条件の他、原料に有機農産物を95%以上使った加工食品に限る方針です。これは国連で進めている国際基準とほぼ同じ厳密な基準を適用したもので、認証事務は政府が認定した機関の検査員が担当することになります。
 また、遺伝子組み替え技術を使った大豆などは有機栽培しても、消費者の抵抗が強いため有機とは認めない方針です。
 現在「有機」表示のある食品の市場規模は1,000億〜2,000億円程度といわれていますが、農水省の新基準を満たす有機食品は市場全体の80億〜100億円にとどまると見られています。
 有機表示の野菜や加工品を多く見かけるようになりましたが、本当に有機なのかは生産者しか知らない状態が続いていました。当たり前のことなのですが、まがい物ではなく本当の「有機」食品が誰にでも購入できるのは喜ばしいことです。それでもブランド米に見られるように、偽物が横行する我が国では、今後どうなるか安心はできませんが…。

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終わりに

 住宅の品質については購入者には分からないことが多く、欠陥住宅のニュースがテレビなどでよく紹介されます。第三者による住宅性能評価が未整備な状態ですが、三菱総合研究所と東京電力の社内ベンチャーは共同で、99年秋をめどに戸建て住宅の性能評価事業に乗り出すことを発表しました。現在、築年数と床面積以外に住宅を比較・評価する基準がありませんが、今後は米国・カナダ並に中古住宅の評価方法が確立され、消費者の利益につながることが期待できます。

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