|
[ ASP トップ ] [ ASPニュース2008 ]
ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。.
3月のニュースから
■ベッド柵に首挟まり死亡/広島の病院で男性患者
広島赤十字・原爆病院は10日、入院していた60代後半の男性患者が2月に、転落防止のためベッドに取り付けられた柵の6センチのすき間に首が挟まり死亡する事故があったと発表しました。
病院によると、2月17日午後10時40分ごろ、柵(幅約90センチ、高さ約42センチ)のすき間に男性が首を挟まれているのを巡回中の看護師が発見、低酸素脳症による呼吸不全で28日に死亡したものです。男性はパーキンソン病で、寝たきりの状態からようやく座れるようになっていたといい、約2時間前の巡回時 には眠っており、異常はなかったといいます。病院は、男性が座った姿勢のまま横に倒れたとみています。
会見した土肥博雄病院長は「思わぬ事故でたいへん遺憾。6センチのすき間に挟まる想定をしておらず認識が甘かった。第三者を入れて事故の検証をする」と述べました。
ベッドと柵はパラマウントベッド製で、経済産業省によると昨年5月以降、介護ベッドの転落防止柵に首を挟まれるなどした事故は全国で計6件発生、4件で死亡、出雲市でも今年1月、同様の死亡事故がありました。
同社広報室によると、柵のすき間を埋めるカバーを無料配布していて、同病院でも患者の動作に応じて看護師の判断で使用していましたが、男性には必要ないと判断していたといいます。病院側は今後カバーの使用基準を示したマニュアルを作成、看護師や医師への注意を徹底して再発防止に努めるとしています。
一方、岐阜県飛騨市の市立飛騨市民病院では昨年5月、入院中の女性患者(84)がベッドの柵のすき間に体を挟まれ、胸部圧迫による呼吸困難で死亡していたことがわかっています。
柵は高さ約35センチのアルミ製で、はしごを横にしたような形で幅24センチのすき間が5か所あり、女性は寝ているうちに足からすき間に入り込んでしまったようです。
事故はいずれも要介護者が一人のときに起きているというものですが、今回報道された死亡事故のうち「40代の男性が、衣服が手すりにひっかかり首を圧迫されて死亡」というケースでは直接首が手すりに挟まったのではなく、衣服が手すりにひっかかったことにより、衣服が引っ張られて首周りの衣服自体が利用者の首を絞める結果となった、と考えられています。医療・介護の現場では各事故の原因を精査して、自らの環境での安全管理にいっそうの注意をしてもらいたいものです。
[目次へ]
■レーザー利用商品回収、安全基準満たさない恐れ
国民生活センターは、縁日の福引の景品で玩具銃にレーザー光線式の照準器らしき装置を付けた商品があったとの相談が寄せられたことから、当該玩具銃などを入手して安全上の問題を調査し、消費者に注意喚起するとともに、経済産業省などへの要望、情報提供を行いました。
レーザー光線を玩具などに用いることは危険性を伴うことであり、2001年1月に制定された消費生活用製品安全法(消安法)での規制対象となりました。製造・輸入事業者に対し、販売などのためにレーザーポインターを取り扱う場合は、技術基準に適合させ、第三者検査機関の検査を受けて商品にPSCマークを表示することなどが規定され、PSCマークが表示されていない商品の販売・陳列は禁止されました。
今回、当センターで入手した商品はPSCマークの表示がない、技術基準に適合していないものでした。
経済産業省は空気銃に付けられたレーザー照準装置や会議などで使われるレーザーポインターで、中国製の5製品のレーザー光が強すぎて失明する恐れがあるとして、28日、輸入・販売した大国屋(埼玉県三郷市)とジェーン(大阪市)に製品の回収を指導、消費者に使用を中止するよう注意喚起しました。今のところ事故の報告はないといいます。また輸入業者が不明のものもあり、回収対象は9000個以上に上るといいます。
経産省によると、5製品は照準装置として空気銃に取り付けられたり、キーホルダー型のレーザーポインターの形などで販売され、消安法で定めるレーザー光の強さ基準を大きく上回っていたもので、消安法で課された安全基準を満たしたことを証明するPSCマークの表示も5製品にはありませんでした。
消費者の安全を確保するための消安法ですが、中国など法律を無視する製造事業者は必ずいるため、PSCマークが表示されていない商品の販売・陳列の禁止を徹底したもらいたいものです。違反事業者に対する「100万円以下の罰金」を厳格に運用するなど、事故が起きてからの対処では無い環境づくりが求められます。[目次へ]
■折りたたみ式ベビーカーの安全性
国民生活センターでは2007年4月、2006年11月に折りたたみ式ベビーカーの開閉時に乳幼児が手指を挟み、あわや切断という事故が2件相次いで寄せられたため、注意情報を公表しています。
センターはまた、現在販売されているベビーカーの多くは携帯等の利便性を図るため折りたたみ式のものがほとんどで、フレームが交差する構造などを有する折りたたみ可動部分は、手指挟み等の可能性の高い部分であることを指摘しています。
しかしメーカー側の対策はもっぱら使用者に対する注意・警告表示に主眼が置かれ、製品自体のハードの対策は積極的に講じられてこなかったことに懸念を伝えています。
確かに、折りたたみ可動部分での危害事例によると、注意情報を読むことのできない、つまり危険を回避できない乳幼児が手指を切断しかけるなどの重大な事故が発生しているため、製品自体の安全対策が急務だと考えられます。
センターでは、ベビー用品店や大型スーパーなどでみかける折りたたみ式ベビーカーの中から、フレームの構造や組み立てや折りたたみ方法の違いなどにより、8社9銘柄をテスト対象にし、危険を回避できない乳幼児にとってどのような構造が手指挟みを防止できるのか、また挟まれたときの傷害の程度を軽減させることができるのか、模擬指を使って調べるとともに操作方法や注意表示などについても調べました。
一方、折りたたみ式ベビーカーの開閉時における乳幼児の手指挟み事故の実情を知るため、使用実態や開閉時に乳幼児の手指を挟んだ経験などについて、幼稚園児のいる家庭などを対象にアンケートも行っています(回答数:248名)。
センターでは調査結果をまとめ、折りたたみ式ベビーカーでは、次のような構造が必要だと報告しています。
- 手指が入らないようにカバーを付ける。
- 閉じたときのすき間を手指より大きくあける。
- 局所的に大きな力が集中しないようにする。
- 交差するフレームの断面を丸い形状にする。
- 交差するフレーム同士が密着しないようにスペースを設ける。
- 操作する人が危険を察知したとき折りたたみを停止できるよう、手順にしたがって操作する構造にする。
- 使用中にロック機能が外れて折りたたまれないようなロック構造にする。
- 操作する人が手指を挟む可能性のある部分を認知できるよう、一目でわかる注意表示をする。
一方購入者には、
- 部分的に手指挟み防止のための安全対策を施したものを購入の際の参考にする。
- 開閉中は乳幼児に絶対にベビーカーを触れさせない。
- 不意に折りたたまれる事故防止のため、組み立て後はロックがかかっていることを確認する。
- 使用中も折りたたみのロックボタン等に触れないように注意する。
との注意を促しています。[目次へ]
■中国製原料使用の血液抗凝固剤から偽成分
米食品医薬品局(FDA)は5日、死亡例を含む多くの副作用が報告された米製薬バクスター社の血液抗凝固剤から、主成分のヘパリンに酷似した偽の成分が検出されたことを明らかにしました。
同社は中国の工場で製造された原材料を使用した薬から検出されたとしていますが、FDAは米国内の製造過程での混入も否定していないとの立場です。FDAは事態を重視、近く各国の規制当局や製薬会社に偽の成分の見分け方などについて通知する方針です。
バクスター社の日本法人によると、製品は米国とプエルトリコだけで販売され、日本には原材料を含め輸入されていないとのことです。
FDAによると、副作用の報告がありバクスター社がリコールした製品の一部から、5−20%に及ぶ偽成分が検出されたといい、通常であればメーカーの検査で除かれるものが、化学組成が本物と似ているため見分けられなかったといいます。意図的に入れられたか誤って混入したかは不明としています。
FDAでは、投与後に吐き気や呼吸困難などの副作用を起こした報告例は数百に及び、リコールした製品に関係する死亡例は19人としています。
ニュースは4月に入っても続き、中国製原料について、FDA高官は15日、上院歳出委員会小委員会の公聴会で「(問題の製剤への不純物の混入は)経済的な目的で意図的に行われたと考えられる」と証言しました。
FDAによると、昨年1月以降、問題の製剤が関係した可能性がある死者数は62人に上り、これまでに血液抗凝固剤の主成分のヘパリンに似た特殊な型の「コンドロイチン硫酸」が混入していたのを突き止めたといいます。コンドロイチン硫酸は豚の腸からつくられるヘパリンに比べて安いといいます。
高官はまた、米国に輸出される薬剤の製造施設を検査するため、10月までに中国の3カ所にFDAの事務所を設置したいとの考えを表明しました。
中国では安全に関する法整備が遅れ、違法でも金もうけに走る個人・業者が後を断たないようなニュースが相次いでいますが、いつになったら消費者の被害が軽視されている現状が改善されるのでしょうか。
中国発の事件のために、被害は世界中に拡大する現状ですが、消費者が安全の確認ができない製品・商品・原材料では、どうすることもできません。各国が中国に政治的圧力を加えても、共産党支配の国と私達の自由主義社会とは微妙な食い違いもあり、この先まだまだ不安は続きそうです。[目次へ]
■前途懸念、日本の実験棟「きぼう」/1兆円の価値は?
日本初の有人宇宙施設「きぼう」船内保管室が無事国際宇宙ステーションに設置され、「20年以上の努力が実った」(立川敬二・宇宙航空研究開発機構理事長)と関係者の感慨は深いようですが、その長い歳月に宇宙実験をめぐる状況は大きく変化していることを再認識したいものです。
5月に取り付けられるきぼう船内実験室では、「微小重力、真空」という宇宙ならではの環境が、動植物や物質の性質にどんな影響を与えるのかを研究するもので、来年打ち上げの船外実験装置では、宇宙放射線や地球大気の成分観測にも対象を広げるようになります。
こうした基礎科学のほかにも、立川理事長は「製薬や半導体に生かす高純度の結晶作りがうまくいくよう期待する」と、きぼうが産業に直結する研究ができる場であることをアピールしています。
しかし、船内実験室利用事業の公募で選ばれたのはガムや花の種などを宇宙に送る3件だけで、宇宙機構が期待した最先端分野の研究応募はゼロだったといい、このままでは国民の生活に生かせる研究ではなく、単なる先進国日本のメンツを保つためでしかないような状況です。
宇宙実験の歴史は既に30年以上になりますが、1970年代の米宇宙ステーション「スカイラブ」では、微小重力が人体に与える影響の研究のほか、宇宙でクモの巣の張り方などの教育向け実験も行われました。それに先立つ旧ソ連の「サリュート」、続く「ミール」でも医学実験などを実施、80年代以降は米スペースシャトルも多様な実験をこなしてきました。
微小重力環境では、比重が異なる物質も均一に混ざるため、超電導物質や新合金などが生成されましたが、産業に大きなインパクトを与えるレベルには達していないといい、生命科学分野で宇宙での作成が期待されていたタンパク質の結晶も、地上での技術が格段に進歩したため、多額の費用をかけて宇宙実験をする魅力が薄れてきているといいます。
そうした変化に加え、きぼうの実験施設としての使い勝手の悪さを指摘するのは、宇宙開発に詳しいノンフィクション作家松浦晋也氏で、「膨大な審査を受けないと実験できない。そこまで魅力のある施設とは言えない」、「宇宙ステーションの有人活動はしょせん80年代の技術」と、厳しい見方をしています。
ある生命科学の研究者は昨年、宇宙機構の担当者から「どんな実験をすれば成果が見込めるか」と相談されたといい、打ち上げが決まってから実験を考えるざるを得ない、当事者の不安を感じさせるものです。
一方、当初はステーション計画を主導したNASAは、2020年までに宇宙飛行士を再び月に送り込む新型宇宙船の開発を推進し、毎年2000億円以上を投入、彼等の関心は月や火星に大きくシフトしているといいます。
米国内では90年代から「役立たずの金食い虫」(ニューヨーク・タイムズ紙)などとステーションの意義を問う声が噴出していて、ブッシュ大統領は老朽化したシャトルの退役とステーションの完成をともに2010年9月末と区切っています。またステーションの運用は15年までは決まっていますが、その後は全くの白紙となっています。
日本はこれまでの費やした6800億円と運用費などで、総額1兆円以上を投入する計画ですが、米国の方針に従わざるを得ない立場であり、特に成果が出ない一兆円の使われ方について、今後も議論の的になりそうです。[目次へ]
[ ASP トップ ] [ ASPニュース2008 ]