Web版

2006.12 No.156  発行 2006年12月22日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

[ ASP トップ ] [ ASPニュース2006 ]

ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

.



11月のニュースから

■松下の食器洗い機で発火事故、15万台の部品交換

 松下電器産業は31日、同社製の家庭用食器洗い乾燥機で4件の発火事故が発生したと発表しました。けが人はありませんでしたが乾燥用モーター部分に洗浄水(泡)が入り込んだのが原因で、対象となる計15万7206台について部品を無償交換します。

 対象は2001年5月から02年5月に製造した「NP―40SX1」と02年4月から5月に製造した「NP―40SX2」の2機種で、乾燥モーターの内部に、本来入らないはずの泡が浸入しコイルに付着して通電、長期間使用するとまれにショートするといいます。

 食器洗い機という水を使用する機械において、洗浄水が入り込んだという初歩的ミスが引き起こした事故であり、同社の安全設計に不安を感じさせるものです。

 発火事故は05年10月から今年7月に和歌山県や福井県などで発生、製品の一部や製品の周囲を焼いたものです。同社は製品を購入した販売店などで、泡の付着を防ぐコイルを覆ったモーターなどの部品交換をするとしています。問い合わせは専用フリーダイヤル電話0120・871・227まで。

 また同社は東京ガスと大阪ガスにも同タイプの食器洗い乾燥機を供給しているため、東ガスと大ガスの製品購入者も部品交換が必要になります。

目次へ


韓国の鶏大量死、強毒性の鳥インフルエンザと判明

 韓国農林省は25日夜、南西部・全羅北道益山の養鶏場で発生した約6000羽の鶏大量死は強毒性の鳥インフルエンザ(H5N1型)によるものだったとする検査結果を明らかにしました。

 韓国でH5N1型の感染が確認されたのは2003年12月から2004年3月にかけて以来で、韓国政府は養鶏場から半径500メートル以内の農家が飼っている鶏など約24万羽を処分、人への感染防止を含めて、防疫態勢を強化する方針です。

 聯合ニュースによると、今回、感染がわかった養鶏場では、今月19日に初めて変死した鶏が見つかり、22日までに約6000羽が相次いで死んだとしています。

 農林水産省はこのニュースを受けて11月24日、都道府県知事あてに「韓国における高病原性鳥インフルエンザの発生に伴う国内防疫の徹底について」とする文書を出し、国内防疫の強化のため、飼養衛生管理の徹底、野鳥の鶏舎等への侵入防止、農場出入口での消毒の徹底など、飼養衛生管理基準の遵守と異常発見時の早期通報について徹底することなどを通知しました。

 常に何処かで発生している鳥インフルエンザですが、国内養鶏場では対岸の火事として海外のニュースを見ずに、日常的な安全意識と管理の大事さを認識、実践して欲しいと思います。

目次へ


東京女子医大、カルテ書かず診療報酬/厚労省、返還指示へ

 2001年のカルテ改ざん事件を受けて東京女子医大病院(東京都新宿区)を監査していた厚生労働省は9日、改ざん事件とは別の多くの治療で「カルテに書いていない医療行為の診療報酬を請求していたケースが目立つ」としてカルテの記載不備を指摘、該当部分の診療報酬の返還を求める方針を固めました。

 カルテ改ざん事件の監督責任と併せ近く同病院を戒告処分としますが、最終的な返還額は昨年3月までの5年間で数億円に上る可能性があります。

 実際には、ほとんどはカルテに記載していないだけで実施した医療行為だったとみられるようですが、厚労省は「記載の仕方も請求も不適切」と認定したものととみられます。カルテの記載不備で診療報酬の返還を指示するのは異例で、他の病院でも医師が医療をしながらカルテに詳細に記載せず医療費を請求するケースは多いといわれています。医師が時間がないことを理由にカルテに詳細な情報を書かないことは、今後より大きく問題視されることになりそうです。

 また医療事故でカルテを開示しても詳細な記載がなく、真相究明ができないこともあることから、意図的にカルテの記載を制限していないか、という視点での追求も出てきそうです。

目次へ



米国で規制広がるトランス脂肪酸/マーガリンやケーキに含有、外食産業の対応

 マーガリンやケーキなどに含まれる「トランス脂肪酸」を摂りすぎることで、心臓疾患につながる恐れが指摘され、欧米では表示の義務化や含有量の制限など規制が広がっています。

 米国のファストフード大手、ケンタッキー・フライド・チキンは先月30日、米国内の全店舗でトランス脂肪酸を含む調理油の使用を中止すると発表しました。最大手のマクドナルドも、欧州での含有量を削減した調理油の導入を表明しました。

 これに先駆けニューヨーク市は、レストランで同脂肪酸の入った油の使用禁止を検討するなど、同脂肪酸使用の問題がクローズアップされています。

 トランス脂肪酸は、脂肪の構成成分である脂肪酸の一種で、液体である植物油を固形化するため水素を加える過程でできるものです。このようにしてできた油は劣化しにくいため、加工食品に多用され、同脂肪酸を含む食品には、マーガリンのほか、パンやケーキを作るときに使うショートニング、フライドポテトなどがあります。

 問題化している理由は、同脂肪酸が血液中の善玉コレステロールを減らす一方、悪玉コレステロールを上昇させ、動脈硬化、心筋梗塞につながる恐れがあるためです。

 米国で約8万人を対象に行われた調査では、1日の食事で摂取した総エネルギー量(総カロリー)に占めるトランス脂肪酸の割合が2.8%の人は、同1.3%の人より心筋梗塞の発症リスクが1.3倍ほど高かったといいます。1日の総カロリーとして一般的な2000キロカロリーの食事をする場合、同割合が1%になる量はフライドポテトだと44グラム(一人分の約半分)、マーガリンだと36グラム(数枚の食パンに塗る量)程度となるようです。

 世界保健機関(WHO)でも同脂肪酸の摂取量を総エネルギーの1%以下にするよう勧告しています。米国人の摂取量は同2.6%ですが、日本人は同0.7%ということで、食品安全委員会は2年前、「海外と比べ日本人の摂取量は少ない。健康への影響は小さいだろう」との見解をまとめています。

 しかし、日本でもファストフードやスナック菓子を日常的に食べる人は増えており、国立健康・栄養研究所の江崎治プログラム・リーダーは「総エネルギー量の1%より多く摂取している人もたくさんいる。同脂肪酸は体にいいことは何もない」と指摘しています。

 すでに対策を講じている国もあり、デンマークは2004年1月からすべての食品について同脂肪酸の含有率を2%までとする制限を設け、米国では今年1月から加工食品の同脂肪酸含有量の表示が義務付けられました。

 国内では、日本ケンタッキー・フライド・チキンが先月、全店で含有量を半減させた調理油に切り替え、食品宅配サービスの「らでぃっしゅぼーや」は今年7月、同脂肪酸の含有量1.5%以下(一般的には10%前後)に抑えたマーガリンを発売しました。同社食品課の上原篤志課長は「海外で規制されるようになり、食生活が欧米化している日本でもいずれ問題になると感じた」と話しています。

 表示義務のない我が国の対策は企業任せとなっていますが、「ケーキやドーナツなどは含有量の表示が難しいので、食用油脂の生産段階から減らすようにしてほしい」との指摘も出ています。

目次へ


医療ミス、すぐ謝罪を/ハーバード大の手引に注目

 医療事故が起きたとき、医師らが患者や家族にどう対応するかをまとめた米国のマニュアルを日本の医師や患者支援団体メンバーらが25日までに翻訳、ホームページで公開しました。

 事実をすぐに患者側に伝え、ミスは謝罪するという“当たり前の対応”ですが、訴訟を恐れてなかなかできないことです。マニュアルでは「逆に訴訟を減らせる」と紹介、日本でも参考になるようです。

 マニュアルはハーバード大学関連16病院が使っているもので、同大公衆衛生大学院のルシアン・リープ教授が中心となり、医師や弁護士、患者らの声を加えて今年3月、正式に発刊されたものです。埴岡健一東京大学特任助教授の呼びかけで、大学病院などの医師や医療安全管理者、患者支援団体のメンバーらが翻訳に協力しました。

 マニュアルは「これまで、損害賠償への恐れと悪い知らせを伝達する難しさ、因果関係と責任の混同があった」と指摘、医療事故が起きたときは「通常は24時間以内に患者に伝えなければならないが、早く知らせることが信頼維持のために最も重要」としています。

 また各段階においての具体的な対応を次のように示しています。

1. 何が起こったか患者と家族に話し、どのように」とか「なぜ」といった詳細は、後で良い。患者と家族はすぐに返答を求めがちなので、事故後の話し合いは既知の事実に限り、憶測は避けなければならない。

2. 事故の原因に関わらず、患者が自分たちへの診療行為を委任している主治医は、自分が過ちを犯さなかったときでさえ自分が責任を負っていることを明言すること。

3. 過誤があったときに、医療従事者が、その患者を癒すためにできる最も有効なことのひとつは、謝罪であり、和解の姿勢を示すことが傷害や心の傷、そして怒りを和らげることに役立つ。

4. 調査が完了し、改善策が計画されたら、患者と家族にこれらを伝えること。傷害を受けた患者は、同じ過ちが他人に起こらないような配慮に強い関心を持っている。

 訴訟大国米国における「謝罪が有効」との考え方は意外ですが、これらの説明から見ると過去のデータに基づくリスクマネージメントで冷静に検証したものだと感じます。

目次へ


■長野県、経費削減から環境ISO更新せず/エコアクション取得方針

 長野県は10日、2001年2月に県庁本庁舎(長野市)について取得した環境管理の国際規格ISO14001(環境ISO)を今後更新せず、代わりに環境省が策定した「簡易版」の認証・登録制度「エコアクション21」の認証を年度内に取得する方針を明らかにしました。

 エコアクション21は主に中小企業を想定して設けられ、取得の動きが広がっていますが、長野県が認証を受ければ、都道府県としては初めてだといいます。

 県は経費節減のほか、エコアクション21には環境ISOにない二酸化炭素排出量の把握や環境活動レポートの公表が盛り込まれている点などを挙げ、環境活動の取り組みの向上につながるとしています。

 今後、合同庁舎などの現地機関や県立高校、警察署を含むすべての県機関でエコアクション21を導入し、知事部局、県教委、県警の3グループごとに環境管理システムを構築、各職場で節電や環境に配慮した商品の利用などを徹底することになります。

 環境ISOは外部機関による審査や更新に多額の費用がかかったり、必要書類がかさむことから認証返上の動きが増加しており、兵庫、京都に続き9日には福井県が経費削減でISO返上を発表、長野県は4県目となっています。

 一方市町村などでの返上はさらに多く、ISO審査機関を認定している財団法人「日本適合性認定協会」によると、2004年7月に527あった認証自治体は、今年6月現在で441に減少したといいます。

 企業のように宣伝や取り引き上のメリットがない自治体では、一般に200万円ほどの経費が毎年必要になることや、外部監査に10万枚を越えるような資料が必要であったり、また担当者が時間的に拘束されるための負担が大きすぎるようです。

目次へ


歩きたばこ芦屋市全域ダメ/過料含む条例案提案へ

 芦屋市は21日までに、市内全域で、歩きたばこや吸い殻のポイ捨てなどの迷惑行為を条例で禁止する方針を明らかにしました。JR芦屋駅付近や商店街など人通りの多い場所では、区域を指定した上で過料などの罰則規定も設ける予定です。来年3月市会に条例案を提案、同6月1日の施行を目指すとしています。兵庫県内では、神戸市が区域限定の歩行喫煙禁止の条例を設けていますが、それよりも厳しい内容となります。

 条例に盛り込む予定の迷惑行為は、歩きたばことポイ捨てのほか、夜間(午後10時-午前6時)の花火、夜間(同)騒音、公共の場所への落書き、空き缶などの投げ捨て、飼い犬のふんの放置、の計六種類です。いずれも市内全域が対象で、違反すれば過料か罰金を科す方向で検討しています。

 芦屋市は1997年、たばこやごみの投げ捨てを防ぐため「空き缶等の散乱防止に関する条例」を制定しましたが、その後もごみの量は一向に減らずに、側溝や植え込みに捨てられた吸い殻の処理に自治会などが手を焼いてきたといいます。

 歩きたばこについては、「火が子どもの顔などに当たる可能性もあり危険」として、以前から市会などでも厳しい対応を求める声が繰り返し上がっていて、市が迷惑行為防止の観点で規制を検討していたものです。
歩きたばこなど迷惑行為を禁止する自治体は、それだけ市民の意識が高いものですが、このような行政品質を冷静に評価したいものです。

目次へ


農産物の安全性保証、日本でも導入進む/欧州で普及のGAP

 徹底したリスク管理で農産物の安全性を保証する仕組みづくりとしてヨーロッパで普及しているGAP(適正農業規範)が日本でも農家の有志や流通業者で導入が進んできました。

 現行のトレーサビリティーは生産や流通の各段階のルートを明らかにすることで、食の安全性を間接的に保証するものですが、GAPは生産現場で具体的なリスクを最大限排除し、農産物そのものの安全性を証明するものです。したがってGAPで各種のデータ管理を徹底すれば、食中毒などの事件が起きた場合も生産現場のどこに原因があるかがいち早くつかめることから、消費者の信頼度は高いものです。

 GAPはすでに欧州を中心にチリ、中国、韓国などでも取り入れられていて、第三者組織が現地で審査、一定の基準を満たした農家には認定証を与える仕組みです。欧州では、民間非営利団体が運営するユーレップギャップ(EGAP)認証を農産物取引の条件とする小売店が多く、実質的な国際基準になっているといいます。
1999年から商社を介せずに直接、英国にリンゴを輸出している片山りんご株式会社(青森県弘前市)は、2004年に日本で初めてEGAPの認証を取得しました。検査項目は、農薬の管理からトイレの手洗いの状態まで約260ですが、執行役の片山寿伸さんは「日本の一般の農家なら、日々の農作業の中で当たり前に行っていること。決してハードルは高くない」と話しています。

 またEGAPとの相互認証を進めている中国などでは、世界各国でGAP確立に向けての動きが出ていることから、片山さんは「海外からGAP農産物がなだれ込んで来たとき、日本の生産者は今のままで対抗できるでしょうか。もし、他国がGAP農産物は欧州向けに回し、基準に外れたものは日本に輸出するということになったら、日本の消費者はどうなるのでしょうか」と心配しています。

 国産、輸入品を問わずに適用されるGAPは、価格競争力が強いだけの一部の農産物が無制限に輸入される事態に歯止めをかける役割もあることから、日本でも全国統一基準のGAPが求められています。

 農林水産省は2004年に「生鮮農産物安全性確保対策事業」を打ち出し、全国的にGAPの手法を推奨し、鹿児島県はGAPの理念を取り入れた独自の農林水産物認証制度を始めています。また大手スーパーのイオンや生協なども小売り・流通業の立場から、仕入れ先の生産者に対しGAP的手法の導入を促しています。

 農業生産者らでつくる日本GAP協会(本部東京)は、農薬の使用状況や廃棄物の管理、従業員の安全環境整備など約160項目を審査する日本版GAPを作成し、4月にインターネットのホームページで内容を公開、9月にはEGAPとの相互認証を申請し、今後我が国でも同制度の感心が高まることでしょう。

目次へ

 


[ ASP トップ ] [ ASPニュース2006 ]